25 / 25
旅立ち 2
しおりを挟む
「ありがとうございますセルジュ様」
「ふ、明日には君はここから旅立つのだな。半年後に俺も向かうが、寂しいものだ」
まさかそのように言ってもらえるなんて思わなかった。
「私も寂しいです。皆と一緒に食事をする楽しさを知りました。お話をするのが楽しかったです。庭園も見事で毎日見ても飽きません」
「俺の屋敷にもここには劣るが庭園がある。庭師には伝えておくから好きな花を植えるといい」
ヴェルネルを不憫だと思って、優しくしてくれるのだ。
じわじわとこみあげるのは、今まで母親にしか感じたことのない思いだ。
「なんか、心が温かいです」
「そうか」
頭に手をポンとおいたと思うと、ぐりぐりと撫で始めた。
「わー、セルジュ様」
「お前は本当に可愛い。一番上の兄の子供のようだ」
「えっと、王太子殿下の王子殿下……あぁっ、私はそんなに子供じゃありませんよ」
確か八歳のハズだ。
「ふ、あははは」
可愛がってくれるのは嬉しいけれど、子ども扱いか。
まぁ、それでもこうして仲良くしてくれるのだからヨシとすべきか。
「ヴェルネル、半年後に会おう。それまで元気に暮らすのだぞ」
「はい」
セルジュに言われたことは守りたい。ヴェルネルがすべきことは次に会うまで元気でいることだ。
出発の日。領地まではフレットが同行してくれることになっていて、なんとも心強い。
荷物が沢山あるので馬車は二台となった。
「こんな贅沢な馬車を使っていいのですか?」
どう見ても自分が使っていいような馬車ではない。
「気にするな。長旅なんし、はじめてだろう? 乗り心地の良い馬車でないと体が辛い」
フレットが言うと、
「そういうことだ」
とセルジュが言う。
経験がないのでその言葉に従うことにする。
「体調が悪くなったらすぐにフレットにいうのだぞ」
「はい」
「お腹がすいたらおやつを用意してあるから食べるとよい。飴玉も入っているからな」
「はい」
「それから……」
「おまえさ、母親みたいになっているぞ」
「む、そうか?」
確かに母親は子供を心配してあれこれと言ってくる。兄弟でもこんな感じなのだろうか。
血のつながりが半分あっても虐げる兄弟もいるのだから。
「心配してくれてありがとうございます。それでは行ってまいります」
「あぁ。半年後にまた会おう」
「はい。また会いましょう」
しばしの別れ。あた会えると解っているから笑顔を向けて。
セルジュも笑みを浮かべている。本当に素敵でカッコいい人。寂しくなっても心の中にセルジュを思い浮かべればやっていけそうだ。
一緒にいられる日々を楽しみに。新しい生活をはじめる第一歩を踏み出した。
<了>
「ふ、明日には君はここから旅立つのだな。半年後に俺も向かうが、寂しいものだ」
まさかそのように言ってもらえるなんて思わなかった。
「私も寂しいです。皆と一緒に食事をする楽しさを知りました。お話をするのが楽しかったです。庭園も見事で毎日見ても飽きません」
「俺の屋敷にもここには劣るが庭園がある。庭師には伝えておくから好きな花を植えるといい」
ヴェルネルを不憫だと思って、優しくしてくれるのだ。
じわじわとこみあげるのは、今まで母親にしか感じたことのない思いだ。
「なんか、心が温かいです」
「そうか」
頭に手をポンとおいたと思うと、ぐりぐりと撫で始めた。
「わー、セルジュ様」
「お前は本当に可愛い。一番上の兄の子供のようだ」
「えっと、王太子殿下の王子殿下……あぁっ、私はそんなに子供じゃありませんよ」
確か八歳のハズだ。
「ふ、あははは」
可愛がってくれるのは嬉しいけれど、子ども扱いか。
まぁ、それでもこうして仲良くしてくれるのだからヨシとすべきか。
「ヴェルネル、半年後に会おう。それまで元気に暮らすのだぞ」
「はい」
セルジュに言われたことは守りたい。ヴェルネルがすべきことは次に会うまで元気でいることだ。
出発の日。領地まではフレットが同行してくれることになっていて、なんとも心強い。
荷物が沢山あるので馬車は二台となった。
「こんな贅沢な馬車を使っていいのですか?」
どう見ても自分が使っていいような馬車ではない。
「気にするな。長旅なんし、はじめてだろう? 乗り心地の良い馬車でないと体が辛い」
フレットが言うと、
「そういうことだ」
とセルジュが言う。
経験がないのでその言葉に従うことにする。
「体調が悪くなったらすぐにフレットにいうのだぞ」
「はい」
「お腹がすいたらおやつを用意してあるから食べるとよい。飴玉も入っているからな」
「はい」
「それから……」
「おまえさ、母親みたいになっているぞ」
「む、そうか?」
確かに母親は子供を心配してあれこれと言ってくる。兄弟でもこんな感じなのだろうか。
血のつながりが半分あっても虐げる兄弟もいるのだから。
「心配してくれてありがとうございます。それでは行ってまいります」
「あぁ。半年後にまた会おう」
「はい。また会いましょう」
しばしの別れ。あた会えると解っているから笑顔を向けて。
セルジュも笑みを浮かべている。本当に素敵でカッコいい人。寂しくなっても心の中にセルジュを思い浮かべればやっていけそうだ。
一緒にいられる日々を楽しみに。新しい生活をはじめる第一歩を踏み出した。
<了>
1
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
氷の薔薇は砕け散る
柊
ファンタジー
『氷の薔薇』と呼ばれる公爵令嬢シルビア・メイソン。
彼女の人生は順風満帆といえた。
しかしルキシュ王立学園最終年最終学期に王宮に呼び出され……。
※小説になろう、カクヨム、pixivにも同じものを投稿しております。
“いつまでも一緒”の鎖、貴方にお返しいたします
柊
ファンタジー
男爵令嬢エリナ・ブランシュは、幼馴染であるマルグリット・シャンテリィの引き立て役だった。
マルグリットに婚約が決まり開放されると思ったのも束の間、彼女は婚約者であるティオ・ソルベに、家へ迎え入れてくれないかというお願いをする。
それをティオに承諾されたエリナは、冷酷な手段をとることを決意し……。
※複数のサイトに投稿しております。
【完結】ロザリンダ嬢の憂鬱~手紙も来ない 婚約者 vs シスコン 熾烈な争い
buchi
恋愛
後ろ盾となる両親の死後、婚約者が冷たい……ロザリンダは婚約者の王太子殿下フィリップの変容に悩んでいた。手紙もプレゼントも来ない上、夜会に出れば、他の令嬢たちに取り囲まれている。弟からはもう、婚約など止めてはどうかと助言され……
視点が話ごとに変わります。タイトルに誰の視点なのか入っています(入ってない場合もある)。話ごとの文字数が違うのは、場面が変わるから(言い訳)
本当に、貴女は彼と王妃の座が欲しいのですか?
もにゃむ
ファンタジー
侯爵令嬢のオリビアは、生まれた瞬間から第一王子である王太子の婚約者だった。
政略ではあったが、二人の間には信頼と親愛があり、お互いを大切にしている、とオリビアは信じていた。
王子妃教育を終えたオリビアは、王城に移り住んで王妃教育を受け始めた。
王妃教育で用意された大量の教材の中のある一冊の教本を読んだオリビアは、婚約者である第一王子との関係に疑問を抱き始める。
オリビアの心が揺れ始めたとき、異世界から聖女が召喚された。
今、私は幸せなの。ほっといて
青葉めいこ
ファンタジー
王族特有の色彩を持たない無能な王子をサポートするために婚約した公爵令嬢の私。初対面から王子に悪態を吐かれていたので、いつか必ず婚約を破談にすると決意していた。
卒業式のパーティーで、ある告白(告発?)をし、望み通り婚約は破談となり修道女になった。
そんな私の元に、元婚約者やら弟やらが訪ねてくる。
「今、私は幸せなの。ほっといて」
小説家になろうにも投稿しています。
将来の嫁ぎ先は確保済みです……が?!
翠月 瑠々奈
恋愛
ある日階段から落ちて、とある物語を思い出した。
侯爵令息と男爵令嬢の秘密の恋…みたいな。
そしてここが、その話を基にした世界に酷似していることに気づく。
私は主人公の婚約者。話の流れからすれば破棄されることになる。
この歳で婚約破棄なんてされたら、名に傷が付く。
それでは次の結婚は望めない。
その前に、同じ前世の記憶がある男性との婚姻話を水面下で進めましょうか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる