伯爵家の美しきバラと可愛い小鳥

希紫瑠音

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旅立ち 2

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「ありがとうございますセルジュ様」
「ふ、明日には君はここから旅立つのだな。半年後に俺も向かうが、寂しいものだ」

 まさかそのように言ってもらえるなんて思わなかった。

「私も寂しいです。皆と一緒に食事をする楽しさを知りました。お話をするのが楽しかったです。庭園も見事で毎日見ても飽きません」
「俺の屋敷にもここには劣るが庭園がある。庭師には伝えておくから好きな花を植えるといい」

 ヴェルネルを不憫だと思って、優しくしてくれるのだ。

 じわじわとこみあげるのは、今まで母親にしか感じたことのない思いだ。

「なんか、心が温かいです」
「そうか」

 頭に手をポンとおいたと思うと、ぐりぐりと撫で始めた。

「わー、セルジュ様」
「お前は本当に可愛い。一番上の兄の子供のようだ」
「えっと、王太子殿下の王子殿下……あぁっ、私はそんなに子供じゃありませんよ」

 確か八歳のハズだ。

「ふ、あははは」

 可愛がってくれるのは嬉しいけれど、子ども扱いか。

 まぁ、それでもこうして仲良くしてくれるのだからヨシとすべきか。

「ヴェルネル、半年後に会おう。それまで元気に暮らすのだぞ」
「はい」

 セルジュに言われたことは守りたい。ヴェルネルがすべきことは次に会うまで元気でいることだ。







 出発の日。領地まではフレットが同行してくれることになっていて、なんとも心強い。

 荷物が沢山あるので馬車は二台となった。

「こんな贅沢な馬車を使っていいのですか?」

 どう見ても自分が使っていいような馬車ではない。

「気にするな。長旅なんし、はじめてだろう? 乗り心地の良い馬車でないと体が辛い」

 フレットが言うと、

「そういうことだ」

 とセルジュが言う。

 経験がないのでその言葉に従うことにする。

「体調が悪くなったらすぐにフレットにいうのだぞ」
「はい」
「お腹がすいたらおやつを用意してあるから食べるとよい。飴玉も入っているからな」
「はい」
「それから……」
「おまえさ、母親みたいになっているぞ」
「む、そうか?」

 確かに母親は子供を心配してあれこれと言ってくる。兄弟でもこんな感じなのだろうか。

 血のつながりが半分あっても虐げる兄弟もいるのだから。

「心配してくれてありがとうございます。それでは行ってまいります」
「あぁ。半年後にまた会おう」
「はい。また会いましょう」

 しばしの別れ。あた会えると解っているから笑顔を向けて。

 セルジュも笑みを浮かべている。本当に素敵でカッコいい人。寂しくなっても心の中にセルジュを思い浮かべればやっていけそうだ。

 一緒にいられる日々を楽しみに。新しい生活をはじめる第一歩を踏み出した。




<了>
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