甘える君は可愛い

希紫瑠音

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年下ワンコはご主人様が好き

8・波多

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 キッチンを借りることにしたのは、久世に料理を教えがてら三木本の恋の手伝いができそうだと思ったからだ。

 まだ久世が波多の所に居候をしていた頃、二度目の失恋を味わったと言い、恋人として傍に居られなくても、仕事の面では傍に居てサポートし続けたいという。

 しかも八潮の体調を心配するあまり、料理をしやすいキッチンへとリフォームし、料理を必死で覚えた。

 それなのに相手にその腕を振るったことはなく、今回の料理教室は胃袋を掴むチャンスだというと三木本は話にのってきた。





 波多は用事があり昼は外に出てしまうので、三木本には昼休みに八潮をと久世を誘い、そこで料理教室のことを話すように言い、羨ましそうな素振りをみせたら誘うんだぞと話しておいた。

 そして波多は久しぶりに喫茶店へと来ていた。癒されたいのとお願いがあってだ。

「いらしゃい」

 笑顔の彼に肩の力が抜ける。

 ほっこりとした気持ちになりながらカウンターの席へと座った。

「やっぱりここは落ち着きます」
「そう言っていただけて嬉しいです」

 江藤に珈琲を頼み、作業する姿を眺めていると、暫くしてよい香りと共に目の前に珈琲が置かれる。

「頂きます」

 珈琲を一口飲むと、ホッと落ち着いた気持ちになる。

「そういえば、八潮さんって常連なんだそうですね」
「はい。お知り合いなんですか?」
「同じ課の上司なんですよ」
「そうだったんですね。俺の祖父が店主だったころから通ってくださっているんですよ」
「で、八潮さんに聞いたのですが、江藤さんの手作りのクッキーが美味しかったって。あの、俺に教えて貰えないでしょうか?」

 自分が甘い物が苦手なので菓子を作ることなど考えたこともなかった。

 頑張ったらご褒美をあげる。そうすれば上達が早くなるのではと思ったのだ。

 江藤は一瞬、何か考えるようなしぐさを見せ、

「八潮さんに作ってあげるのですか?」

 と尋ねられる。

「いえ。八潮さんではなく、この前、俺と一緒にいた犬みたいな奴、覚えていますか?」
「甘党の方ですよね」
「そうです。アイツ用です」

 料理を教えることになった事と、お菓子は褒美としてあげるつもりだと話せば、成程と江藤が頷く。

「わかりました。俺で良ければお教えしますよ」
「ありがとうございます。早速で申し訳ないのですが、今日って大丈夫でしょうか?」
「はい。俺の方は何時でも大丈夫なので」
「ありがとうございます。では、連絡先を教えて頂いてもよろしいでしょうか?」
「わかりました」

 それから互いの連絡先を交換し、宜しくお願いしますと頭を下げた。

「実はですね、どうしようかって、一瞬迷ったんですよ」

 と、波多が自分とお仲間だという事に気が付き、自分とどうこうなりたいのではないかと思っていたという。

「はい。以前の俺は、そういう下心がありました」

 素直にそう告白し、

「でも、ずっと前に江藤さんには好きな人が居るって気がついちゃって、あきらめました」

 この前見た彼の特徴を言えば、見られていたんですねと、江藤は両手で顔を隠した。

「江藤さんと友達として仲良くできたらいいなって思ってます。だって貴方は俺の癒しですから」

 そういってニッと笑えば、

「そう言って頂けて嬉しいです。俺も波多さんと仲良く出来たら嬉しいです」

 と、江藤はカウンター越しから手を伸ばし、波多の手に触れた。

「じゃぁ、敬語で話すことをやめるところからはじめようか」
「そうだね」

 と互いに顔を見合わせて、一緒に笑いあった。




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