甘える君は可愛い

希紫瑠音

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上司と部下の「恋」模様

6・三木本

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 八潮は甘えられるのが好きだということは知っている。だからすぐにいつもの自分に戻れた。

「課長、こんなところでやめてください」

 そう彼の胸を押して離れる。

「えぇ、昨日は繋がりあったというのに? 君だって僕を離してはくれなかったじゃない」

 にやにやと口元に笑みを浮かべ、頬を手の甲で撫でる。

「そうでしたね。俺、気持ちいいことが好きなんで。さ、早く席に戻って飯を食ってください」

 余裕ぶったふりをして、なんでもないような顔をする。

「僕も、気持ちいいことは好きだよ?」

 と、攫うように口づけをして席へと戻っていく。

「はぁ、なんなんだよ、あの人……」

 以前、告白してフラれてしまったが八潮に対する想いはかわらない。求められたら拒めるわけがないのだ。

 身体だけでもいいから、また自分を欲しがってもらえたら嬉しい。





 だが、あれ以来、八潮から誘われることはなかった。

 忙しいというのも理由の一つだが、やはり男とするより女がいいと思ったのだろう。

 あの時は気の迷いだったんだ。きっと……。

 既に一度、フラれているのだ。自分は八潮の好みではないことは解っている筈だ。

 自分の馬鹿さ加減に呆れつつ、それでも心の奥底では自分と気持ちいいことをすることを望んでくれているのではと期待してしまう。

 後から肩を叩かれ、ドキッとする。

 もしかしてと期待をこめて振り向くが、目の前にいる相手は会いたくない相手だった。

 すっと目を細めて冷たい表情を浮かべて彼を見る。

「何の用です?」
「おいおい、そんな怖い顔するなよ」

 八潮に見られて逃げたことを謝られて、彼のお蔭もあって良い思いができたので許してやった。

 それで関係も元通りになったと勘違いしているのか。

「逃げてしまったことは謝ったし、君だって許してくれたじゃない」

 もう一度やり直そう。そう言われて、断ろうとしたが死角に連れ込まれてキスをされる。

「んっ」

 いくら死角とはいえ、こんなところでキスをするなんて。拒もうとも力は相手の方が強く、両手を抑え込まれ身動きが取れない。

「はぁ、やめろ」

 足に力が入らなくなって、崩れ落ちそうになるところを腰に腕を回して抱きしめられる。

 もう、抵抗する気も起きずにキスを受け入れてしまう。

「たってる」

 と、足を差し込みたちあがった箇所を弄られて芯が震える。

「トイレで抜いてやるよ」

 そういうと気分が悪くなったふりをさせるように肩を抱きしめて、大丈夫かと背中を摩り始める。

「いい。一人で、する」
「駄目だ。気分が悪い時ぐらい甘えろ」

 口元をニヤつかせながら下心丸出しの顔を向けてくる。抵抗した所で思い通りにされてしまうのだろう。

「……やるならベッドの上が良い」
「はじめから素直になればいいんだよ」

 そう言われて、すぐさま目的地をホテルへ変更する。

 会社を出ようとした所で、

「おい、三木本」

 声を掛けられて、振り向くと波多と久世が近寄ってくる。

「飲みに行こうと誘おうと思って、お前の事を探してたんだ」

 と腕を掴まれた。

「俺、三木本さんと一緒に飲んでみたかったんですよー」

 ね、と、彼にも笑顔を見せる。

「他の部署の先輩からも、色々と聞いてみたいし。後で八潮課長も来るんですよ」

 その名を聞いた途端、彼は気まずそうな表情を浮かべ、

「あ……、俺は遠慮するよ。三木本、また今度な」

 そういうと帰ってしまい、正直、声を掛けられて助かった。このままではホテルで彼に抱かれていただろう。

「実はさ、物陰に連れて行かれるところを久世が見つけてさ、声を掛けた」

 もしも邪魔をしてしまったのなら申し訳ないと波多が謝り、正直に助かったとこたえる。

「なら良かった。前にさ、お前、彼に呼び出し食らったろう? その話をしたときの八潮課長が慌てて喫煙室から出て行ったから、気になってて」

 確かに、あの時、自分を心配して探しに来てくれた。そして、口づけをされたのだ。

「課長、まだフロアにいたから行ってみたら?」
「あぁ」

 ありがとうと礼を言い、三木本は八潮の元へと急いだ。
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