甘える君は可愛い

希紫瑠音

文字の大きさ
39 / 59
上司と部下の「恋」模様

8・三木本

しおりを挟む
 別に興味本位でも良かった。心は貰えないのなら体だけでもつながることが出来れば、と。

 そんな気持ちを見透かされた。八潮はから気持ち良くなれればそれでいいのかと、言われているような気がした。





 手先が震える。

 上手く操作できず、やっとの思いで連絡を入れる。

 何度かのコールの後に「蓮さん」と耳元に低くそして優しい声音が自分の名を呼ぶ。

「今から会えないか?」
「大丈夫です。いつもの所で待ち合わせしましょう」
「あぁ」

 男が男との出会いを求め、ホテルの近くにあるバーへとやってくる。彼とは一年前に知り合った。

 名は利成(としなり)。洒落た服を着た爽やか系のイケメンだ。

 もてそうな彼に、相手には不自由していないのではと聞けば、女性は好きだがヤるのは男が良いのだとこたえた。

 それも三木本の様な目つきの悪い男が、自分の手でどうなるのかを見たいとかそんな事も言っていた。

 互いに下の名前で呼び合い、それ以外の事は聞かないというルール。

 なので知っているはその二つと連絡先、そしてどんな風に男を抱くかという事だけだ。

「蓮さん」

 まだ相手の決まらぬ男達が一斉に彼を見て、待ち合わせと知るとため息を漏らす。そして羨ましそうに自分を見るのだ。

「行こう」

 利成の腕を掴み出入り口のドアへと向かい外へと出る。





 いつも利用しているホテルは、このバーから近い事もあり、自分たちの様な同性カップルが多い。

 部屋に入るなり上着とネクタイを床に脱ぎ捨てて唇を重ね合う。

「ん、連さん、待って」

 スーツをハンガーに掛ける彼の手を掴み、

「いいから、はやく」
「わかりました」

 背の高さは八潮と同じくらい。少し見上げる位の身長差。

 キスをしながら身体を煽られ、気持ちが高ぶりはじめる。

「利成、お前の事だけを感じたいんだ」

 でないと八潮に中を乱された時の事ばかり考えてしまうから。

「ふぅん。誰か忘れられない男がいるみたいですね」

 妬けますね、と、後を解すために指がはいりこむ。

「んっ、当たり前だろ。男は、お前、一人だけじゃない、からっ」

 今までも、そしてこれからも、心から想う相手はただ一人だが。

「じゃぁ、その中でも一番に想ってもらえるように、貴方の中へ俺を刻み込ませて頂きます」

 その言葉にくつくつと笑いだす。

 彼では無理だ。一番は八潮以外にいない。

「俺の中へお前の全てを注ぎ込め」

 心までは無理だが、上辺だけの快楽に身を預ける。

 彼のモノが中へとはいりこみ、激しく揺さぶられる。

 そして、何度目かイったあと、三木本は意識を手放した。



※※※



 三木本は出社時刻より三十分前には会社に着くように家を出る。

 その時間帯には八潮は既に出社しており、少しだけでも二人で過ごす時間が出来れば良いと思っての事だ。

 いつもなら泊まらない、もしくは家に戻り着替えるだけの余裕をもってホテルを出ていたというのに、昨日と同じ身なりで八潮の前に立ちたくはかったが、そんな事を言っている余裕すらなかった。

「三木本君、もしかして、この前の彼に何かされたのかい?」

 昨日と恰好が一緒だし、と、自分を本気で心配してくれている。

「あ……、昨日、友達の家で飲むことになってしまって。着替えとか持って行かなかったものですから」

 自分の事を思ってくれているのだと胸が熱くなるが、昨日、利成とした行為を思うと素直に喜べない。

「いいんだ。君が酷い事をされていないのなら」
「課長、俺」

 縋りつきたくて腕を伸ばすが、その手を避けるように、

「何もなければよいんだ。さ、席に戻ろうか」

 とドアの方へと歩いていく。

 一切、触れさせてくれないし、触れてくれない。

 優しくされて浮上した気持ちを落とされる。

「ふっ」

 力なく椅子に座り込み動けない。

 暫くそのままでいたら、心配した波多が中へ様子を見に来る。

「三木本」
「悪い、今戻るから」

 何事もなかったかのように席を立ち、デスクへと戻り仕事をはじめる。八潮の視線を感じたが見ないようにし、気持ちを切り替えていつもの自分へと戻る。ただ、痛む胸だけはどうしようもなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

有能課長のあり得ない秘密

みなみ ゆうき
BL
地方の支社から本社の有能課長のプロジェクトチームに配属された男は、ある日ミーティングルームで課長のとんでもない姿を目撃してしまう。 しかもそれを見てしまったことが課長にバレて、何故か男のほうが弱味を握られたかのようにいいなりになるはめに……。

同居人の距離感がなんかおかしい

さくら優
BL
ひょんなことから会社の同期の家に居候することになった昂輝。でも待って!こいつなんか、距離感がおかしい!

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

死ぬほど嫌いな上司と付き合いました【完結】

三宅スズ
BL
社会人3年目の皆川涼介(みながわりょうすけ)25歳。 皆川涼介の上司、瀧本樹(たきもといつき)28歳。 涼介はとにかく樹のことが苦手だし、嫌いだし、話すのも嫌だし、絶対に自分とは釣り合わないと思っていたが‥‥ 上司×部下BL

処理中です...