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上司と部下の「恋」模様
11・八潮
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リビングで三木本が入れてくれた珈琲を飲む。
ソファーに座る彼は黙ったまま、こちらから話しかけるのを待っている。
あの日以来、少し距離をおいていた。三木本自身も気が付いていて辛そうに八潮を見ていた。
だが、それでも距離をおいていたというのに、好きでいることを諦めてくれようとはしない。
自分にはそんな価値はない。
結婚に二度失敗したし自己管理もろくにできない、どうしようもない男なのだから。
「ねぇ、君はどれだけ僕に尽くそうとするんだろうね」
その言葉の意味が解らない様でキョトンとした顔をする彼だが、頬を撫でれば見る見るうちに顔を赤く染め、するりと指を動かして唇に触れれば、ビクッと肩が揺れて身を硬くする。
「僕はね、酷い男だ。だから君に愛されるのは勿体ないよ」
「それは八潮課長の気持ちであって、俺はそれでもあなたが好きです。なので、勿体ないとか言わないでください」
切ない声で言われ、ぎゅっと胸がしめつけられる。
「三木本君」
「俺は、貴方とつながりあえたこともキスしたこともすごく嬉しかったんです。手料理だって、課長に食べて貰えることが純粋に嬉しくて、なのに」
そんな風に思う自分が可愛そうだと、三木本が胸へ縋りつく。
「ごめん、その通りだよ」
腕を回し抱こうとしたが、腕を摩るだけで留める。
「好きなんです。だから、抱きしめて欲しい、です」
泣きそうな目をして、想いを言葉に乗せてくる。
その眼には非常に弱い。
「外れくじを引いちゃったね」
強く抱きしめれば、目を見開いてすっと涙が零れ落ちた。
「かちょう」
その涙を指ですくい、
「それでも、僕のことを貰ってくれる?」
「俺にとっての課長は当たりくじですから!」
誰にも渡しませんからね、と、顔を胸へと埋めた。
「君くらいだよ、そう言ってくれるのは」
嬉しいよと言って口元に笑みを浮かべ、三木本の耳朶を意味ありげに撫でる。
「このまま泊まっても良いかな?」
すると、埋めていた顔を上げ、潤んだ目を向けて頬を赤く染める。
「気持ちいいこと、してくれるのですか?」
「うん。良いかな」
「はい」
その前にお風呂ですねと、腕の中から出ようとする三木本を逃がさないとばかりに強く抱きしめる。
「良いよ。この前もそのままだったじゃない」
「で、ですが」
「あ、もしかして僕から加齢臭でも……」
「しません! 課長はいつもいい匂いですから」
そういう三木本の方がいい匂いがする。清潔感のある爽やかな香り。
「なら良かった」
頬を撫で額に頬にと口づけをおとし、唇へと触れる。
「ふっ」
嬉しいと、その眼は八潮を見る。
そんな風に見られたら、気持ちが高ぶって抑えきれない。
今まで色々な人と夜を共にしてきたが、こんなになるのは初めてかもしれない。
「あぁ、もう、キスだけじゃ足りないみたい。三木本君、ベッドに行こうか」
「よかった。八潮課長にそう言って貰えて」
やっぱりやめようと言われたらと思ってましたと、そんな風に思わせてしまっていることに八潮は自分を責める。
「やめないよ、僕は。あ、そうか、三木本君、八潮課長なんて呼び合っているから悪いんだ。よし、今から僕は君を蓮と呼ぶから、君も僕を名前で呼んでよ」
どうかな、と、その提案に戸惑いを見せる。
「え、俺、課長のことを名前で呼んでも良いのですか……?」
「もちろん」
そうこたえれば、嬉しそうにはにかむ三木本が可愛くてぎゅっと抱き寄せる。
「呼んでみて、蓮」
「……雄一郎さん」
「やばいね、これってもえるねぇ」
はやく君が欲しいよと、手を引いて寝室へと向かう。
服を適当に脱ぎ去れば、三木本がしわになると片付けようとする。
「そんなモンはどうでもいいよ。蓮、はやく邪魔なモンを脱いでしまいなさいな」
「貴方は考えなさすぎです」
そう小言を言う三木本だが、スーツを床に脱ぎ捨ててベッドへとのる。
「蓮、この前以上にエロくて可愛い姿を僕に見せてね」
ぐいと腰を掴んで引き寄せれば、照れた表情を浮かべて頷いた。
ソファーに座る彼は黙ったまま、こちらから話しかけるのを待っている。
あの日以来、少し距離をおいていた。三木本自身も気が付いていて辛そうに八潮を見ていた。
だが、それでも距離をおいていたというのに、好きでいることを諦めてくれようとはしない。
自分にはそんな価値はない。
結婚に二度失敗したし自己管理もろくにできない、どうしようもない男なのだから。
「ねぇ、君はどれだけ僕に尽くそうとするんだろうね」
その言葉の意味が解らない様でキョトンとした顔をする彼だが、頬を撫でれば見る見るうちに顔を赤く染め、するりと指を動かして唇に触れれば、ビクッと肩が揺れて身を硬くする。
「僕はね、酷い男だ。だから君に愛されるのは勿体ないよ」
「それは八潮課長の気持ちであって、俺はそれでもあなたが好きです。なので、勿体ないとか言わないでください」
切ない声で言われ、ぎゅっと胸がしめつけられる。
「三木本君」
「俺は、貴方とつながりあえたこともキスしたこともすごく嬉しかったんです。手料理だって、課長に食べて貰えることが純粋に嬉しくて、なのに」
そんな風に思う自分が可愛そうだと、三木本が胸へ縋りつく。
「ごめん、その通りだよ」
腕を回し抱こうとしたが、腕を摩るだけで留める。
「好きなんです。だから、抱きしめて欲しい、です」
泣きそうな目をして、想いを言葉に乗せてくる。
その眼には非常に弱い。
「外れくじを引いちゃったね」
強く抱きしめれば、目を見開いてすっと涙が零れ落ちた。
「かちょう」
その涙を指ですくい、
「それでも、僕のことを貰ってくれる?」
「俺にとっての課長は当たりくじですから!」
誰にも渡しませんからね、と、顔を胸へと埋めた。
「君くらいだよ、そう言ってくれるのは」
嬉しいよと言って口元に笑みを浮かべ、三木本の耳朶を意味ありげに撫でる。
「このまま泊まっても良いかな?」
すると、埋めていた顔を上げ、潤んだ目を向けて頬を赤く染める。
「気持ちいいこと、してくれるのですか?」
「うん。良いかな」
「はい」
その前にお風呂ですねと、腕の中から出ようとする三木本を逃がさないとばかりに強く抱きしめる。
「良いよ。この前もそのままだったじゃない」
「で、ですが」
「あ、もしかして僕から加齢臭でも……」
「しません! 課長はいつもいい匂いですから」
そういう三木本の方がいい匂いがする。清潔感のある爽やかな香り。
「なら良かった」
頬を撫で額に頬にと口づけをおとし、唇へと触れる。
「ふっ」
嬉しいと、その眼は八潮を見る。
そんな風に見られたら、気持ちが高ぶって抑えきれない。
今まで色々な人と夜を共にしてきたが、こんなになるのは初めてかもしれない。
「あぁ、もう、キスだけじゃ足りないみたい。三木本君、ベッドに行こうか」
「よかった。八潮課長にそう言って貰えて」
やっぱりやめようと言われたらと思ってましたと、そんな風に思わせてしまっていることに八潮は自分を責める。
「やめないよ、僕は。あ、そうか、三木本君、八潮課長なんて呼び合っているから悪いんだ。よし、今から僕は君を蓮と呼ぶから、君も僕を名前で呼んでよ」
どうかな、と、その提案に戸惑いを見せる。
「え、俺、課長のことを名前で呼んでも良いのですか……?」
「もちろん」
そうこたえれば、嬉しそうにはにかむ三木本が可愛くてぎゅっと抱き寄せる。
「呼んでみて、蓮」
「……雄一郎さん」
「やばいね、これってもえるねぇ」
はやく君が欲しいよと、手を引いて寝室へと向かう。
服を適当に脱ぎ去れば、三木本がしわになると片付けようとする。
「そんなモンはどうでもいいよ。蓮、はやく邪魔なモンを脱いでしまいなさいな」
「貴方は考えなさすぎです」
そう小言を言う三木本だが、スーツを床に脱ぎ捨ててベッドへとのる。
「蓮、この前以上にエロくて可愛い姿を僕に見せてね」
ぐいと腰を掴んで引き寄せれば、照れた表情を浮かべて頷いた。
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