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揺れ動く心(2)
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夕食のメニューは揚げ鳥肉と焼いた肉の塊を薄く切ったものを野菜にのせてタレをかけたもの、干し肉のスープとパンだ。
肉の塊は既にパン窯で焼いておいた。鳥肉は焼き縮みを防ぎ、味馴染みが良くするためにフォークで穴をあけておいた。
スープはカブーラという白い野菜と干し肉を入れる。カブーラはとろけるような触感と肉の旨味をよく吸うのでスープに入れると美味い。
そろそろ鳥肉の調理に取り掛かろうとしていた時、ライナーが双子の獣人を連れて帰ってきた。
「ライナー先生、おかえりなさい。そしていらっしゃい、ふたりとも。俺はエメっていいます。お名前を聞いてもいいかな」
「はい。俺はギー、そして弟のルネです」
「今日はお会いできて嬉しいです」
ふたりは礼儀正しく頭を下げて挨拶をすると手を差し出した。保護施設では成人の儀を終えて大人の仲間入りをした獣人が一人でやっていけるように礼儀作法や勉強を教えていると聞いたことがある。
「よろしくね」
その手を握りしめると、改めて部屋へと上がるように促した。
「いいにおいがするな」
そうライナーが口にし、ギーとルネもクンクンと匂いを嗅いでいた。
「ご飯の用意をしているから食べて行ってね」
ギーとルネを誘いテーブル席へと向かう。出来上がった料理は既に並べてあるのでそれを見たふたりの耳と尻尾が立ち上がる。
「うわぁ、美味しそう」
「いいんですか?」
「もちろん。ね、ライナー先生」
「あぁ。エメの作る料理は美味いぞ」
座ってと並びの椅子を引くが、ギーとルネは立ったままだ。
「どうしたの」
「あの、お食事の前によいでしょうか」
そう断りを入れる。
「ライナー先生から保護施設で食べている美味しいパンを作っているのはエメさんだってことを聞きました」
「皆、パンを食べるのが楽しみで、いつか俺も皆を笑顔にするような美味しいパンを焼きたいって思うようになって」
キラキラとした目を向けて交互に話をし、
「お願いします。俺たちを弟子にしてください」
ギーとルネの声が重なり、深く頭を下げた。
祖父がパンを作る姿を見た時、エメも彼らのような目をしていたと親から言われたことがある。
どうしてあんなに美味しいパンが焼けるのだろう。自分も焼いてみたい。憧れから今の自分がいる。
切っ掛けは同じ。しかも真剣にな彼らを無下になどできようものか。
ライナーは確信していたに違いない。エメが気に入ることを。
「ふたりとも、朝早いけれど大丈夫かな」
その言葉を聞いた瞬間、ギーとルネの耳と尻尾がシンクロし立ち上がる。
「はい!」
「がんばります」
「よし。それじゃ、明日からよろしくね」
「はい。ありがとうございます」
改めてふたりと握手をかわし、席に座るように促した。
味のしみた鳥肉を小麦にまぶして熱した種油へと入れ、あつあつの揚げ鶏肉の完成だ。
香ばしいにおいは若い獣人の鼻を刺激したようで、早く食べたいと顔に書いてある。素直な反応を見せる双子は可愛い。
「さ、熱いうちに召し上がれ」
大皿に揚げ鳥肉を盛りスープをよそう。
良い食べっぷりを見せるギーとルネに頬が緩む。自分には年上の兄弟しかおらず、弟がいたらこんなかんじなのだろうとほほえましい気持ちとなった。
「美味しいです」
「ライナー先生が自慢するのわかります」
それは寝耳に水だ。
「ライナー先生、自慢って」
「あ……ほら、エメのパンが美味しいから。他の料理も美味しいんじゃないかという話しになって。な」
「え、えぇ、そうです」
何か含みのあるような言い方だが自分の知らぬところで褒めて貰えたのは嬉しいので追及はしなかった。
肉の塊は既にパン窯で焼いておいた。鳥肉は焼き縮みを防ぎ、味馴染みが良くするためにフォークで穴をあけておいた。
スープはカブーラという白い野菜と干し肉を入れる。カブーラはとろけるような触感と肉の旨味をよく吸うのでスープに入れると美味い。
そろそろ鳥肉の調理に取り掛かろうとしていた時、ライナーが双子の獣人を連れて帰ってきた。
「ライナー先生、おかえりなさい。そしていらっしゃい、ふたりとも。俺はエメっていいます。お名前を聞いてもいいかな」
「はい。俺はギー、そして弟のルネです」
「今日はお会いできて嬉しいです」
ふたりは礼儀正しく頭を下げて挨拶をすると手を差し出した。保護施設では成人の儀を終えて大人の仲間入りをした獣人が一人でやっていけるように礼儀作法や勉強を教えていると聞いたことがある。
「よろしくね」
その手を握りしめると、改めて部屋へと上がるように促した。
「いいにおいがするな」
そうライナーが口にし、ギーとルネもクンクンと匂いを嗅いでいた。
「ご飯の用意をしているから食べて行ってね」
ギーとルネを誘いテーブル席へと向かう。出来上がった料理は既に並べてあるのでそれを見たふたりの耳と尻尾が立ち上がる。
「うわぁ、美味しそう」
「いいんですか?」
「もちろん。ね、ライナー先生」
「あぁ。エメの作る料理は美味いぞ」
座ってと並びの椅子を引くが、ギーとルネは立ったままだ。
「どうしたの」
「あの、お食事の前によいでしょうか」
そう断りを入れる。
「ライナー先生から保護施設で食べている美味しいパンを作っているのはエメさんだってことを聞きました」
「皆、パンを食べるのが楽しみで、いつか俺も皆を笑顔にするような美味しいパンを焼きたいって思うようになって」
キラキラとした目を向けて交互に話をし、
「お願いします。俺たちを弟子にしてください」
ギーとルネの声が重なり、深く頭を下げた。
祖父がパンを作る姿を見た時、エメも彼らのような目をしていたと親から言われたことがある。
どうしてあんなに美味しいパンが焼けるのだろう。自分も焼いてみたい。憧れから今の自分がいる。
切っ掛けは同じ。しかも真剣にな彼らを無下になどできようものか。
ライナーは確信していたに違いない。エメが気に入ることを。
「ふたりとも、朝早いけれど大丈夫かな」
その言葉を聞いた瞬間、ギーとルネの耳と尻尾がシンクロし立ち上がる。
「はい!」
「がんばります」
「よし。それじゃ、明日からよろしくね」
「はい。ありがとうございます」
改めてふたりと握手をかわし、席に座るように促した。
味のしみた鳥肉を小麦にまぶして熱した種油へと入れ、あつあつの揚げ鶏肉の完成だ。
香ばしいにおいは若い獣人の鼻を刺激したようで、早く食べたいと顔に書いてある。素直な反応を見せる双子は可愛い。
「さ、熱いうちに召し上がれ」
大皿に揚げ鳥肉を盛りスープをよそう。
良い食べっぷりを見せるギーとルネに頬が緩む。自分には年上の兄弟しかおらず、弟がいたらこんなかんじなのだろうとほほえましい気持ちとなった。
「美味しいです」
「ライナー先生が自慢するのわかります」
それは寝耳に水だ。
「ライナー先生、自慢って」
「あ……ほら、エメのパンが美味しいから。他の料理も美味しいんじゃないかという話しになって。な」
「え、えぇ、そうです」
何か含みのあるような言い方だが自分の知らぬところで褒めて貰えたのは嬉しいので追及はしなかった。
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