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番になろう(2)

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 全身の毛が逆立った。そして熱がこみあげて、まるで頭の上で湯気がでているのではないかと思うくらいにだ。

「はう、これは、その、もっとさきで言うつもりで、番になりたいとか、そういうのは別で」

 順番通りにできなくて焦って余計なことまで口にでてしまう。これでは皆に協力してもらった意味がなくなってしまう。

「あ、番になりたくない訳じゃ……」
「エメ、まずは落ち着いて」

 ライナーが抱きしめて背中をポンとたたく。

「違うの、本当は」
「エメ、俺とどうなりたいの?」

 言ってごらんと顔を覗き込まれて、さらに熱が上がっていく。

「ライナー先生の、番になりたい、です」

 そう口にするとライナーの胸に顔を埋めた。

「やっとだ。エメの口からその言葉を聞けたのは」
「え?」

 どういうことだと顔を上げると、ライナーがはにかみながらエメを見ている。

「エメに意識してほしかった。そして番になるのは自分なのだと解ってほしかった」

 すでに隣はエメのために開けてあったということか。

 それなのにうだうだと悩んで、勇気をだして言うべきだった。

「エメが俺のことを好きなのはわかっていたし、誰かに渡すつもりはないからな。少しずつ攻めていたんだがな、難攻不落だなお前は」

 それでも気が付かないから焦ったと鼻先を指ではじかれた。

「からかわれているのかと思って」
「やっぱりそうとるよな」

 今度は鼻をはじかれるのではなく頭をわしわしと撫でられる。

「そうだよ」
「これからはお前が好きだからキスをする。だから意識しろよ?」

 と顔を覗き込んで口角を上げる。とてつもなくかっこよくてエメの鼓動が跳ね上がった。

「俺、心臓が持たないかも」
「可愛いことを言ってくれるなぁ」 

 とキスをした。

 かるく触れるだけのキスでも、そこには幸せがプラスされている。甘く痺れてとろけてしまいそうだ。

「くぅぅぅん」

 耐えきれずにしゃがみこむエメに、ライナーが手を差し伸べる。

「知っているか。ここには永遠の鐘というのがあってな、番になりたい者が一緒に鐘を鳴らすんだ」
「鐘の丘だよね。本当はそこで告げようと思っていたんだ」
「そうか。それならば今度は俺から求婚してもいいか?」

 それはそれはエメにとっても願ったりだ。

「お願いします」

 と手を差し出すとライナーがその手をつかんで恋人つなぎをした。

「よし、行こう」

 鐘の丘にやたらと獣人と人の子がいる。自分たちのように求婚する人がたくさんいるんだなと思って見ていたら、その中に知った顔がある。

「あれ、ギーとルネ、ジェラールにブレーズたち家族、それに父さんと母さんまで。え、なんでいるの?」
「俺とエメの大切な人たちに見守ってもらおうと」
「え、先生、俺が告白しなかったらとか思わなかったの?」
「言ってくれると思っていた」

 確かに番になってほしいとエメの方から言ったが、全ては思い通りということなのか。

「うわー、先生の掌の上で転がされてた」
「悪い大人になってはだめだぞ、エメ」

 満面な笑みを浮かべて言うものだから、何度も肯定をするように頷いた。

「さて、エメ、俺たちの晴れ舞台だ」
「うう、緊張する」
「俺のために頑張ってくれ」

 一緒だから大丈夫。強く握りしめた手からそう伝わってくるかのように感じた。




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