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弁当男子
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※※※
教室で話しかけて来る奴など誰もいない。
だが、弁当の一件以来、朝と帰りに神野が俺に挨拶をするようになった。
はじめの頃は教室がざわついたが、いつしかクラスメイトを無視できない優しいよねと女子が言い始めて、男子までもが流石とだなと感心しだす。
俺に言わせれば迷惑なだけだ。なのであいさつをし返したことは無い。
だが、それが気に入らないようで、女子のグループの一人が、
「ちょっと、挨拶してんだから返したら?」
と言いだした。
神野に良い所を見せたいのだろうか。俺はその女子の言葉も無視をして席へ座る。すると、男が一人俺の机の傍までやってきた。
「おい、何無視してくれてんの?」
体格が良い男だ。殴り合いになれば自分の方が強いと思っていて、しかも仲間もいるから強気に出るのだだろう。
だが、そんなことでビビる俺じゃない。その男のことも無視をする。
「てめぇ」
胸倉をつかまれた所で、
「田中、俺が勝手に挨拶しているだけなんだから、ね」
神野が間にはいりこんで場を鎮める。
「お前がそれでいいなら良いけど……、葉月、あんま調子に乗んなよ」
と言い捨てて席へと戻って行った。
別に調子に乗っている訳じゃない。お前のせいだと神野を見れば微笑まれてムカついた。
あんなやり取りがあったというのに、当たり間のように隣に座り、弁当のおかずをさらっていく。
「いい加減にしろよ。てめぇのせいで迷惑したっていうのに」
「あぁ、あの女子も、君に絡んできた男子も、良い所を見せようとか思っちゃって迷惑だよね」
俺はお前のせいだと言いたいのに、当の本人はどこ吹く風だ。
「はぁ!? てめぇが、俺に挨拶なんかするからだろ」
「俺はしたくてしてるだけなのに」
「二度と俺に話しかけんな。ついでに昼も教室で食え」
突っぱねるようにいうが、
「じゃぁ、葉月も一緒に」
それすら気にしない様子で誘ってくる。
「人の話を聞けよ」
イラつきながらそう口にするが、神野の口元には笑みが浮かんでいる。
馬鹿にしているのかと胸倉をつかむと、その手の上に手が重なった。
「聞いているよ。でも、俺は葉月と一緒にお弁当を食べたいし話もしたい」
「それが迷惑だって言ってんだよ」
「じゃぁ、皆には友達だって言うから」
全然わかってねぇ。
「友達じゃねぇしッ」
「えぇ、俺はそう思ってるんだけどなぁ」
と最後のおかずを口の中へと詰め込んだ。
「あぁっ、また食いやがって」
また白米のみの弁当となってしまった。
「ゴチソウサマ。葉月の作るの美味しくってさ」
「どうせ食うなら白米も食えっ」
そう弁当箱を突き出した。
「えぇ、オカズないじゃん」
「食っちまうからだろうが」
「ご飯は遠慮したんだよ?」
遠慮するなら、はじめから食うな。
「煩い」
タッパーを取り出して白魚と大根の葉で作ったふりかけをかける。
「美味そう」
「美味そうじゃなくて美味いんだよ」
と菓子パンを取り上げた。
「んんっ、ほんとだ、美味しい。これ、何? ほうれんそうじゃないし、青菜?」
「大根の葉」
「え、食べれるんだ、あれって」
葉っぱのついた大根はたまにしか手に入らず、冷凍庫で保存してある。
美味そうにそれを食べる姿を見ていると、弁当を取られてしまったこともどうでも良くなった。
教室で話しかけて来る奴など誰もいない。
だが、弁当の一件以来、朝と帰りに神野が俺に挨拶をするようになった。
はじめの頃は教室がざわついたが、いつしかクラスメイトを無視できない優しいよねと女子が言い始めて、男子までもが流石とだなと感心しだす。
俺に言わせれば迷惑なだけだ。なのであいさつをし返したことは無い。
だが、それが気に入らないようで、女子のグループの一人が、
「ちょっと、挨拶してんだから返したら?」
と言いだした。
神野に良い所を見せたいのだろうか。俺はその女子の言葉も無視をして席へ座る。すると、男が一人俺の机の傍までやってきた。
「おい、何無視してくれてんの?」
体格が良い男だ。殴り合いになれば自分の方が強いと思っていて、しかも仲間もいるから強気に出るのだだろう。
だが、そんなことでビビる俺じゃない。その男のことも無視をする。
「てめぇ」
胸倉をつかまれた所で、
「田中、俺が勝手に挨拶しているだけなんだから、ね」
神野が間にはいりこんで場を鎮める。
「お前がそれでいいなら良いけど……、葉月、あんま調子に乗んなよ」
と言い捨てて席へと戻って行った。
別に調子に乗っている訳じゃない。お前のせいだと神野を見れば微笑まれてムカついた。
あんなやり取りがあったというのに、当たり間のように隣に座り、弁当のおかずをさらっていく。
「いい加減にしろよ。てめぇのせいで迷惑したっていうのに」
「あぁ、あの女子も、君に絡んできた男子も、良い所を見せようとか思っちゃって迷惑だよね」
俺はお前のせいだと言いたいのに、当の本人はどこ吹く風だ。
「はぁ!? てめぇが、俺に挨拶なんかするからだろ」
「俺はしたくてしてるだけなのに」
「二度と俺に話しかけんな。ついでに昼も教室で食え」
突っぱねるようにいうが、
「じゃぁ、葉月も一緒に」
それすら気にしない様子で誘ってくる。
「人の話を聞けよ」
イラつきながらそう口にするが、神野の口元には笑みが浮かんでいる。
馬鹿にしているのかと胸倉をつかむと、その手の上に手が重なった。
「聞いているよ。でも、俺は葉月と一緒にお弁当を食べたいし話もしたい」
「それが迷惑だって言ってんだよ」
「じゃぁ、皆には友達だって言うから」
全然わかってねぇ。
「友達じゃねぇしッ」
「えぇ、俺はそう思ってるんだけどなぁ」
と最後のおかずを口の中へと詰め込んだ。
「あぁっ、また食いやがって」
また白米のみの弁当となってしまった。
「ゴチソウサマ。葉月の作るの美味しくってさ」
「どうせ食うなら白米も食えっ」
そう弁当箱を突き出した。
「えぇ、オカズないじゃん」
「食っちまうからだろうが」
「ご飯は遠慮したんだよ?」
遠慮するなら、はじめから食うな。
「煩い」
タッパーを取り出して白魚と大根の葉で作ったふりかけをかける。
「美味そう」
「美味そうじゃなくて美味いんだよ」
と菓子パンを取り上げた。
「んんっ、ほんとだ、美味しい。これ、何? ほうれんそうじゃないし、青菜?」
「大根の葉」
「え、食べれるんだ、あれって」
葉っぱのついた大根はたまにしか手に入らず、冷凍庫で保存してある。
美味そうにそれを食べる姿を見ていると、弁当を取られてしまったこともどうでも良くなった。
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