異世界チートはお手の物

スライド

文字の大きさ
29 / 37

第27話 宝くじ

しおりを挟む
 その後も様々な場所で情報収集をした俺だったが、結局ベイルに関する情報は何も得られないまま夕方になってしまった。
 仕方がないので今日のところは諦めて、集合場所である噴水へと向かうことにした。

 噴水へ着くとすでにエミリアとミーシャが到着していた。
どうやらたくさん買い物をしたらしく、2人とも買った服やら食べ物やらで両手が完全に塞がっていた。

「お待たせ。随分とたくさん買ったんだな」

「まあね。でも、これでもセーブしたのよ? 本当はもっと欲しいものいっぱいあったし。ねえミーシャ」

「はい。まだまだたくさん買いたいものあるので、明日も買いものに行きたいです」

「そ、そうなのか……」

 これだけ買ってまだまだ買い足りないのか……。そんなに物欲がない俺としては全く信じられん。

「ユウトは何か買ったりしなかったの?」

「俺か? 買わなかったよ。あんまり金に余裕もないしな。それに俺はベイルの情報を探してたしさ。買いものは二の次だったわ」

「そう。で、ベイルさんについて何か分かったの?」

「いや、収穫なしだ。ただ、ちょっと面白いもんをゲットしたわ」

「面白いもの?」

「これだ」

 俺はしまっていた宝くじを出し、2人に見せた。

「これは何なんですかユウトさん?」

「宝くじらしい。なんか宝くじ売り場で働いてるっていう女の子を助けたらお礼に貰ったんだ」

「へえー、これって1等は5000万レードが貰えるっていうやつじゃなかった? 確か明日の新聞で当選番号が分かるのよね」

「おお、よく知ってるなエミリア。そうなんだよ。結構な大金だから当たったらウハウハだろ? まあどうせ当たんないだろうけど、万が一当たったら俺が2000万レード、2人は1500万レードずつの分け前にしようぜ」

「えっ!? いいの!?」

「ああ。独り占めも悪いからな」

「あんた太っ腹ねえ。ありがたいけど」

「ユウトさんありがとうございます! 凄くありがたいです!」

 目を輝かせて喜ぶ2人。まあ当たるわけないし、どうせそんなに持ってても俺だけじゃ持て余しそうだしな。これでいいのだ。

 その後は3人で夕食を食べ、そのまま宿へと向かった。エミリアとミーシャは同じ部屋で、当然俺は別の部屋だ。
 部屋に入るとすぐにベッドに倒れ込んだ。
 ふう……。今日はたくさん歩きまわって疲れたなあ。とにかく明日こそはベイルを見つけたいもんだ。そして今度こそ新聞社で事件についていろいろ聞きたいなあ。
 そんなこんな考えていると睡魔が襲ってきたので、俺は大人しく就寝した。



 翌日朝、俺はエミリア達の部屋へ向かっていた。そして到着する。

「おーい、入るぞー?」

 念のために入る前に声をかける。いきなり入って着替え中とかだったらエミリアに半殺しにされかねんからなあ。

「どうぞー」

 許可が出たので中に入る。

「おはよう2人とも! さっそくだけど宝くじの結果を見よう!!」

「め、めっちゃ元気ね。どんだけ結果楽しみにしてるのよ。ていうか新聞は持ってるわけ?」

「安心しろ。そこはぬかりはない。もちろん持ってるぜ」

 俺は右手に持った新聞をひらひらと見せる。
 実はこの宿の受付のところでガルロ新聞が売っていることを昨日の夜に確認してた俺は、朝一でそれを購入しに行き、そのあとでこの部屋に来たのだった。当たらないとは分かっていても、どうしても結果は気になっちゃうんだよなあ。

「準備万端ね。じゃあ見ましょう」

「うわあー、楽しみですねー」

「えーど、どれどれ……」

 新聞をめくり、抽選結果のページを探す。ちなみに俺の貰った宝くじの番号は80492である。

「お、あった。このページだ。結果は……」

 まず初めに1位の当選番号に目をやる。

「ん?」

「どうしたの?」

「い、いや……。ちょっと待ってくれ」

 俺は目をゴシゴシとこする。まさかな。

「ユウトさん? 何か汗かいてますけど、大丈夫ですか?」

「あ、ああ。大丈夫だ。多分……」

 やばい、これは……。

「何? もしかして当たった? そんなわけないか」

「当たった……」

「「へ?」」

 エミリアとミーシャが同時にまぬけな声を上げた。その気持ちは分かる。なんということだ。1位の当選番号は『80492』、俺の持ってる宝くじの番号そのものだった。

「当たってるんだよ、5000万が……!!」

「嘘でしょ!!?」

 エミリアが思わず叫び声を上げる。そして、くじの番号と新聞を見比べる。

「本当だわ……。当たってる……。 夢みたい……」

 ……夢? そうか! これは夢に違いない! そうに決まってる。
 俺は自分の頬を思い切りつねった。めっちゃ痛かった。夢じゃない!!

「うおおお!! 5000万ゲットおおおおお!!」

「やばいわね。どうしよう……」

「凄いです!! これでたくさん買い物できます!! 美味しいものもたくさん食べれます!!」

 俺達は3人で抱き合い喜びを爆発させた。

「やべー、これは流石の俺も買い物したくなるわ。実は昨日行った武器屋でいい剣を見つけたんだよなあ。それ買おうかな」

「私もこの機会にいろいろ装備整えようかしら」

「私も新しい杖とか買いたいです!!」

 みんな思い思いのことを口にして大喜びする。

「よし! さっそく支度してまずは換金しに行こうぜ。そんで派手に買い物といこう!」

「「はーい!!」」

 ベイルや事件のことなどすっかり頭から吹き飛んでしまった俺達は、ウキウキで換金に向かうのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる

名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~

サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。 ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。 木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。 そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。 もう一度言う。 手違いだったのだ。もしくは事故。 出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた! そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて―― ※本作は他サイトでも掲載しています

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

処理中です...