異世界チートはお手の物

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第26話 王都リーベ

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 馬車に2日ほど揺られ、俺達は王都リーベへと無事に到着した。
 馬車の中でエミリアからリーベは世界最大の超大都市だという話を聞いてはいたのだが、いざ到着してみるとその大きさに圧倒された。王都ジールも凄まじい広さと人口を誇る都市だったが、リーベは人の数も面積も建物の数やその大きさもすべてがジールよりも数段上の印象を受けた。すごいとしか言いようがないなおい。

 そして、俺達はさっそくガルロ新聞社の本社前へとやって来たわけなのだが……。

「凄い人だな……」

「ええ、参ったわね」

「これじゃあ入れそうにないですね……」

 本社前は俺達と同じように今回の事件について情報を得に来た人たちでごった返しており、とてもじゃないが中へ入って話を聞ける状況ではなかった。まさかこれほどとは……。

「これは一度出直した方がよさそうだな」

「そうね。でも、じゃあこれからどうするの?」

「うーん、とりあえず俺はベイルを探したいかなー。エミリアとミーシャはどうしたい?」

「私はそうねえ。せっかくリーベまで来たんだし、いろいろ見て回ったりもしたいのよね。服とかアクセサリーとかで有名な店もあるし」

「あっ、それいいですね。アクセサリーとか私も見たいです」

「じゃあ一緒に行きましょうミーシャ。ユウトもどうせなら私たちと一緒に買い物しながらベイルさんを探したら?」

「い、いや、俺はいいよ。服とかにも興味ないし。2人で買物を楽しんでくれ。俺は1人で観光しつつ、ベイルを探すよ」

 初めて来る土地だし一緒に行動する方がいい気もするが、女と買い物するととんでもない時間待つ羽目になったりするからなあ。ここは一人行動が一番無難だろう、うん。

「そう。じゃあここからしばらく自由行動で夕方に中央広場にある噴水の前で落ち合うってことにしましょう」

「オーケー。そうしよう」

 そう言って俺はエミリア達と一旦別れた。

 さて、どこに向かおうかな。とりあえず人がたくさんいそうなとこがいいか。となれば商店街がよさそうだな。
 俺は商店街へと歩を進めた。


 商店街には八百屋やら魚屋といった食料屋はもちろん、武器屋や防具屋といった冒険者のための店も多く並んでいた。ベイルなら武器屋とかを訪れてるかもしれないと、俺は諸事情であまり金がないので武器のウインドウショッピングも兼ねて店に入り、店主にベイルが来てないか聞いたが、来てはいないとのだった。

 その後も様々な店で聞き込みをしたが、当たりはなかった。広い都市だしなあ。そう簡単にはいかないか。
 しばらく歩いていたためか、だいぶ街の外れまで来ていたようでかなり店も人通りも少なくなってきた。一旦戻って別の通りに行ってみるか。
 俺が踵を返そうとしたその時。

「いやっ、離して下さいっ!」

「いいじゃんいいじゃん。ちょっとくらい付き合ってくれたってさあ。どうせ暇だろ?」

「暇じゃありません! これから店に戻らないといけないんですから!」

 いかにもガラの悪そうな金髪の男が赤毛の女の子にちょっかいを出していた。

「そんなのいいから俺と遊ぼうぜー」

「いやあ!」

 男が無理矢理女の子の腕をつかみ引っ張る。これは助けた方がいいな。てか、前にもこんなことあったような……?
 俺は若干のデジャブを感じつつ助けに入った。

「おい、嫌がってるだろ。離してやれ」

「あん? なんだてめえは。何か文句あんのか?」

「そりゃあるさ。その子仕事があるとか言ってたろ。じゃあ行かせてやれよ」

「はあ? そんなの関係ねえよ。俺はこの子と遊びたいんだよ!」

 何という自分勝手な奴だろうか。

「何言ってんだお前は。バカなのか?」

「バカ? 俺がバカだと? 言ってくれんじゃん。俺はこれでもA級の冒険者なんだぜ? つまりかなり優秀な人間って事なんだよ。分かるかバカ」

 こいつがA級だって? マジかよ。人はみかけによらんなあ。……つーか、やっぱデジャブを感じる。

「お前がA級だろうがバカなのに変わりはねえよ。いいからもうお前はお家に帰りな。バイバイ」

「は? 帰らねえよ。つーかお前さっきからムカつくなあ。ちょっと懲らしめてやる」

 そう言って金髪男は意地の悪い笑みを浮かべ、

「もう謝っても遅いからな! くらえ! 『ヘルフレア』!!」

 男が放った炎系上級魔法『ヘルフレア』の強烈な炎が俺に襲いかかる。

「はあ……、『ファイアボール』」

 俺は溜め息混じりに炎系初級魔法『ファイアボール』を唱え、ヘルフレアへと放ちレジストした。轟音が辺りに響く。

「まったく……、危ないじゃんか。いきなりそんな強い魔法打つなよなー」

「は? な、何だ今のは……。俺の『ヘルフレア』を初級魔法のファイアボールで打ち消しただと……!! そんなバカな事があるか……」

 金髪男は愕然としていた。どうやらA級なだけあって自分の魔法にはそれなりの自信を持っていたようだ。

「あり得ねえ……! くそがあああ!! 『ブラストヴァルカン』!!」

 男は更に俺に魔法を放ってきた。俺はそれもファイアボールで難なく打ち消し男を睨みつけ、

「もういいだろ? お前じゃ俺に勝てねえよ」

「ば、化物……! ひいいいい!!」

 男は悲鳴を上げて走り去っていった。化物て……。まあいいや。俺は女の子に声をかける。

「とりあえず追い払ったけど、大丈夫?」

「は、はい。ありがとうございます。お強いんですね……。助かりました」

「おう、どういたしまして」

「仕事の休憩中にちょっと散歩してたんですけど、いきなり絡まれてすごい怖かったので本当に助かりました。あの……、私ララって言います。あなたは?」

「俺? 俺はユウトだ。冒険者をやってる」

「冒険者……。それであんなに強かったんですね!」

「いやあ、それほどでも」

「あ、あの! 私実は宝くじ売り場で働いてて、お礼と言ってはなんですけど、これどうぞ!」

 そう言ってララは紙切れを1枚差しだしてきた。とりあえず俺はその紙を受け取った。

「これは?」

「宝くじです!」

「た、宝くじ?」

 この世界にも宝くじがあるのか。これは驚きだ。

「はい! 1枚だけですけど、あげます!」

「いいのか? タダで」

「もちろんです! お礼ですから」

「そっか。じゃあありがたく頂くよ」

「そのくじは数字が5ケタ書いてあって、当選番号とすべて一致すれば、1等で5000万レードの大金が手に入ります。ですので大事にして下さいね♪」

「さ、5000万!? 凄いな……。くじの結果はどうやったら分かるんだ?」

 もし当たれば金欠を脱出できるぞ。これは気になる。

「明日のガルロ新聞の朝刊に当選番号が載りますからそこで分かります。まあ詳しくはくじの後ろに載ってるので見てみて下さい」

「ああ、分かったよ。後で確認するわ。ありがとう」

「じゃ、私は店に戻らないとなのでもう行きますね。本当にありがとうございました!」

 ララはぺこりと頭を下げてお礼を言うと、走っていってしまった。

「なかなかかわいい娘だったな……」

 俺はぽつりと呟くと宝くじをしまい、別の通りへと向かった。
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