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1805年/秋

予習

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 この学園の初等部では、自分のプロセッサいくつ分を、常時どんな魔法でプレキャストし、残りを如何に短時間でコンパイルし、臨機応変に魔法をキャストできるようにするかを学ぶ。
 高等部になると、より専門的な魔法の使い方を学ぶことになる。

 なんてことの遥か以前の問題で、まずは読み書きだ。
 ところが、勉強を初めてみると、表音文字のため、意外と簡単だった。
 言葉自体は喋られるので、音の組み合わせさえ覚えてしまえば楽勝、ではなかった。
 こちらの知識は六歳分。
 語彙が少ない。
 ≪花≫は知っていても、≪華≫はわからない。
 結局、まずの愛読書は、辞書と辞典を行き来することとなった。

 なぜ、そんなに勉強したか。
 もちろん、暇すぎだからだ。
 スマホもない、ネットもない、ゲームもない、テレビもない、ラジオすらないのだ。
 音楽が聞きたくても、蓄音機もないので、生歌か生演奏しかない。
 本を読むくらいしか、やることがない。
 同級生とサロンでお茶は、俺には、キツかった。
 なぜ、あんなにも話し続けることができるのか、俺には意味不明だ。
 菓子も常温保存できるようなモノを常温で食べるので、頭痛がするほど甘い。
 砂糖を舐めた方が、甘くないんじゃないだろうか。
 寒冷地でも栽培できる根菜からつくられるようになったとはいえ、砂糖は高級品なのに、贅沢なことだ。
 俺は、プロセッサが一つ壊れている、という同情分を差し引いても、変わり者としてクラスで浮きつつあった。

 そもそも、この学園は、全国から魔法の才能を持つ子供が集められている学校の一つだ。
 全国で、五歳になる子供すべてが試験され、選抜された。
 魔法の才能は、子に伝わる傾向がある。
 魔法の才能があれば、出世する傾向がある。
 つまり、この学園の入学生はほとんど、上流階級出だ。
 だからこそ、砂糖を贅沢に使った菓子が、溢れている。
 俺のような一般庶民に毛が生えた程度は少数派だ。
 クラスで席が隣のハンナも同じく庶民出身で、仲良くしてもらっている。
 初めてできた友達?
 いやいや、そんなことはない。
 エイミーは、明るく活発な子で、友達は多かった。
 俺?
 俺がエイミーだ。
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