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魔弾できました

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 今まで、シウンは、自分の特性が「付与」で、戦闘向きではないことからも、狩りに消極的だった。
「シウン、付与しているから、狩りにいかなくていい?」
 今まで、家族の戦闘能力が高いため、シウンがたまに石を投げるくらいで、問題なかった。
「爆裂の石、なげるよー」
 今まで、家族も、シウン自身も身体能力が高いため、守る必要がなかった。
「強靭化した服で、もう誰も怪我しないね」

 しかし、アラクネーたちを守るためのスピアー・ビーとの戦闘は違った。
 子供たちを守るためには、戦闘力が圧倒的に足りていなかったのだ。
「石を投げても当たらないし、手が届くところになんて、来てくれないよ。シウン、役に立ってない。お父さんも、アラクネーたちも、あんなに苦しそうなのに」

 シウンは、自分専用の武器を考え、ヤトにつくってもらった。
「これで、どう?お姉ちゃん」
 「強靭」化したい、ともってきたのは、筒だった。
 この中に石を入れ、付与した「風」で、飛ばすという。
 いいアイディアだが、石では大きさがまちまちで、まっすぐに飛ばないだろう。
 俺は前世の知識で、流線形の弾もつくること、筒にライフリングを刻むこと、筒の下に握りをつけることを提案した。

 弾込めは、筒の根本の上に穴をあけておいて、撃つときはシウンが手で押さえるという、『人』では無理な機構だから、連射には時間がかかる。
「ここから毎回、弾を一つ入れて、穴は手で塞ぐの?」

 できあがった空気銃の、「風」を付与した部分に魔素をシウンが注ぐと装填された「強靭」化弾が飛び、木に深々とめり込んだ。
「やった、中った!」

 実戦では、弾への付与を「切断」「火炎」「冷気」「爆裂」で使い分けるという。
「スピアー・ビー相手だったら、火炎、爆裂?昆虫系だから、冷気の方がいいのかな?」
 魔弾の使い手が、誕生してしまった。

 シウンは、暇ができると、黙々と「切断」を付与したナイフで、木を削って弾をつくり、「拡張」された袋に詰める作業をするようになった。
 ヨウコが、その姿を見て、ものすごく姉を見直したようだったが、
「お父さん、弾を『強靭』化したいから、くっついていい?いっぱい弾をつくったから、きっと時間かかっちゃうなあ」
「・・・さすがは、シウン姉様。そうでなくては」
 更に変な方向でも、姉を見直していた。
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