レベルアップがない異世界で転生特典のレベルアップしたら魔王として追われケモ耳娘たちとひっそりスローライフ。けど国を興すか悩み中

まみ夜

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魔王国滅亡編

国ができました

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『主殿、今よろしいでしょうか?』
 街へ、買い出しに行っているハイロウからのパス通信だった。
『どうしたんだ改まって、なにかトラブルか?』
 俺は、アネ芋畑の草取りの手を休めて、立ち上がった。
『いえ。街で、奇妙な噂を耳にしまして』
『噂?』
『はい。「魔王」が国を興したと』
『「魔王」が、か?』
『はい。「魔王」です』
 やはり、俺たち以外にも「魔王」と呼ばれる「人型の魔物」がいたということか。
 きっと、俺たちがそう呼ばれる原因となったヤツなのだろう。
『わかった。噂を集めてくれ。少し、街での滞在が伸びてもかまわない』
『かしこまりました、主殿』
『お洋服買って、早く帰ります。主様』
『・・・ああ、気をつけてな、ハイロウ、キラ』
 村で布の生産ができるようになって、縫製で服もつくっているのに、買う服の量は増えている気がする。
 まあ、子供たちが増えたからな。

 それよりも、魔王が国を興した?
 魔王国か?
 そしてそこには、魔物の軍があるのだろうか。
 そしてそれは、『人』の国、その軍との戦争になるのだろうか。

 俺は、畑の側の東屋へ向かって、剣を持って歩いていた。
 ハイロウからのパス通信で、魔王建国の話を聞いたので、剣の手入れをするためだ。
 様々に付与して、魔剣のようになってしまっているが、それだからこそ、錆びてはみっともない。
 その点、ヤトの木工細工を強靭化した武器は、木だけあって錆びないのは、便利だ。
 別に、剣の手入れは、小屋でやればいいのだが、娘たちや、アラクネーの子供たちが遊びにくる側で、抜き身の剣を扱うのは、俺がドキドキしてしまう。
 村が落ち着いてきた今、「魔王」や「人型の魔物」、俺の『名づけ』や『緊急用魔素プール』などについて、ひとりゆっくり考えてもみたかった。
 本当なら、「馬」に独り言を聞いてほしかったのだが、街への買い出しに馬車馬として行き、不在なのが残念だ。

「こんにちは」
 声をかけられて顔を上げた俺の目に、青年の姿が入った。
 少し長めの金髪で、穏やかそうな二十代前半くらいの顔つき。
 身長は俺くらいだが、身体は、ほっそりしている。
 どこかの傭兵兼商人が、村へ迷い込んだのかと思った。
 しかし、それは違った。
 その頭には、シウンのような、紫色の角が生えていたからだ。
 『人型の魔物』?
 身構える俺に、
「あなたが、もう一人の『魔王』ですか?」

 もう一人の魔王、そう言うからには、『魔王』本人か、眷族なのだろう。
 だから、眷族ってなんだ?
 いや、その前に、俺も『魔王』なのか?

 聞きたいことは、大量にあるが、まず相手が、どういう目的で、ここにいるかを知るのが、先決だ。
「はじめまして。俺が魔王かはわからないのですが。アナタはなんとお呼びすれば、よいでしょうか?」
「もう一人の魔王様。どうぞ、シランとお呼びください」
 シラン?
 紫の嵐?

 自らを『魔王』と名乗らないのだから、、魔王ではなく使者なのだろう。
「では、シラン殿。本日は、どのようなご用件でしょう?」
「主より、言伝を賜っております」
「なんと?」
「協和か、敵対か?」
 俺にとっては、意外だった。
 『協和』の選択肢があるのか。
「おや、早い」
 質問をしようと、俺が口を開く前に、シランが上空を見た。
 彼に集中していたので、まったく気がつかなかったが、娘三人が猛スピードで、近づいてきているのが、パスでわかった。
 シランから視線を外さないように、チラっとだけ見ると、シウンがヤトとヨウコを小脇に抱えて、飛んできていた。
 勢いそのままに着地したシウンは、妹たちを抱えたまま、叫んだ。
「お兄ちゃん?」

 シウンは、元ドラゴンだ。
 つまり、その兄ということは、シランも元ドラゴンなのだろうか。
 確かに、似た角が頭に生えている。
 それにしては、尻尾がなさそうだが。
 俺の視線を尻に感じたのか、
「もう一人の魔王様。尻尾は切っております。服を着づらいので。また生えてきますから、ご安心ください」
 トカゲか。
 ヤトが、「それ痛そう」という顔をしているが、ヨウコは、「もう一人の魔王様」を聞き、顔をしかめていた。
「お兄ちゃんでしょ?」
 しかし、シウンは、それどころではないらしい。
 どうやら、人型のシランとは初対面らしい。
 あれ?
 卵から産まれて一年で、強制的に親離れさせられるはずが、どうして兄を知ってるんだ?

「もう一人の魔王様。話し合いをする雰囲気ではないようです」
「お兄ちゃん?」
「主の言伝は、お伝えいたしました。とりあえず、役目を終え、シランは戻ります」
「やっぱり、シランお兄ちゃん!」
「もう一人の魔王様。また後日、お会いしましょう」
 シランは、シウンをガン無視で、ドアを開けるような仕草をすると、消えた。
 シランの特性?
 ヤトとヨウコへ振り向くが、二人とも首をふった。
 足音も、臭いもしていないらしい。
 瞬間移動したのか?
「・・・お兄ちゃん。また無視、しないでよ」

 娘三人を連れて、小屋へ戻る途中、街のハイロウにパス通信し、シランの件を簡単に説明した。
『もう一人の魔王。協和か敵対か。人型のドラゴン。シウンお嬢の兄。盛り過ぎて、どこから手をつけたらいいのやら』
 ハイロウの嘆きは、俺の嘆きそのものだ。
『そっちでの情報は、どうだ?』
『噂に尾ヒレばかりで、詳しいことは何も。もうシウンお嬢の兄とやらに聞いた方が早い気もしますな』
『そうだな。用事を済ませながらでいいから、情報収取も頼む。しかし、早めに戻ってきてくれ』
『かしこまりました、主殿』
『あと、念のために、保存のきく食料を多めに買ってきてくれ。服より、優先だぞ』
『・・・かしこまりました、主殿』
 その「・・・」は、争いの予感からか?
 それとも、娘たちの服購入の優先順位が下がったことへの不満からか?
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