レベルアップがない異世界で転生特典のレベルアップしたら魔王として追われケモ耳娘たちとひっそりスローライフ。けど国を興すか悩み中

まみ夜

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神と魔王編

大使館です

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「え?」
「え?」
シランの言葉に、俺とナギコは顔を見合わせた。
「え?」

 俺は、ナギコの家で、打ち合わせを兼ねた昼食の最中だった。
 三姉妹は、レイやサクラの子供たちと食事をすることが増えていた。
「シウンお姉ちゃん、ご飯食べよー」
「はーい。じゃあ、いっしょに手を洗おう?」
「スープはテーブルで注ぎますから、ちょっと待ってくださいね」
「ヨウコお姉さん、お皿持っていきます」
「ありがとう、カエデさん」
 ちなみに、レイはヤトに一番懐いていて、羊の世話を手伝うようになっていた。
 多面性のある羽猫には、ヤトの裏表のなさに好意を持ったのかもしれない。
(「なぜ、お父様はヨウコを見たのですか?」)
「羊は、驚かないように、ちゃんと声をかけてあげると良いんだよ」
「・・・ことば、わかるの?」
「うん!おはよう!」
「めえええ」
「・・・ぁ、ぉはよぅ」
 正直、羽猫は「災害級」と呼ばれるほどの特殊な魔物なので、レイに成長があるのかわからないが、良い傾向だとは思う。
 ワー・ウルフ兄妹は、街へ向かっていた。
 面が割れている二人が、街へ現れたら、密約を交わした魔王配下へどのような反応があるかを調べるための威力偵察だ。
「もし、領主に館へ招かれたら、馬小屋のことは皮肉を言っても良いですか?」
 それは、許す。
 奥方との関係改善ため、服屋の女将さんを通じてドレスなど贈る予定なので、礼に招かれることはありそうだ。
 ぜひとも二足歩行の狼で彼女とダンスをして、美女と野獣を再現してほしい。
 荷馬車は、災害級の騒ぎで、町の位置を特定しようとする裏組織の尾行を警戒して、乗り捨ててしまっていたので、キラが騎乗し、ハイロウは狼の姿で向かっていた。
 てっきり、荷馬車ごと盗まれるか、荒らされているものと覚悟していたのだが、荷物そのままに残っていた。
 しかも、誰かが見張っていたような形跡もあり、街を守った魔王の不興を買わないよう、盗まれないように手配したのだろう。
「そんな気を使うなら、利子も欲しかったかな。おとなしく撃退しないでおいてあげたんだし」
 だが、利息分のプレゼントが置かれていたら、触るの怖くないか?
 まあ、損して得取れとはちょっと違うが、今後に期待しよう。
 ナギコには、街へ駐在させる住人は誰が向いているか、為人について聞いていた。
 拡充を狙っている商売、情報収集、領主や裏組織への窓口など、仕事は多岐に渡るため、人選を相談していたのだ。
 荷馬車も増やし、定期便的な運用には、計画性も必要だ。
 町への商売の可能性を探ってくる傭兵兼商人も出てくるだろうが、男性恐怖用の住人も多いので、うまく誤魔化して牽制しなければならない。
 誰が良いか、誰と組ませるかを検討していると、シランが質問してきたのだ。
「ところで魔王『様』、いつ魔王国建国を宣言なさるのですか?」
「え?」
「え?」
 シランの言葉に、俺とナギコは顔を見合わせた。
「え?」
 シランは、俺たちの反応が意外すぎたようで、驚いていた。
「魔王国、再建するのか?」
 ナギコに聞くと、
「一度、潰した元魔王に聞くな」
 と顔をしかめられた。
 そもそも、ナギコが魔王国を建国したのは、「魔王は魔物を従えられるので『人』に危害を加えさせない」を強調するためだ。
 曲りなりにも魔王「国」だと、魔物への統率力と信ぴょう性がありそうだからだ。
 きっと、一部には「それもアリだな」と思ってもらえたのだろうが、ヤヌス教団の「魔物、滅ぼすべし!」の声の大きさに「人」は安易に飛びついてしまった結果が、先の戦争だ。
 現在、街に対して、それと同じ状況を災害級によって、成立させることができている。
 ハイロウの活躍で、誓約書を交わしているので、他へ魔王の存在を漏らせば、自分が通じていることもバラされるので一蓮托生だ。
 だからわざわざ、こちらから、世界へ「魔王ここにあり!」と宣言して、再び世界の敵をやってやる義理はない。
 それでも、シランは納得いかない顔なので、住人にアンケートをとってみた。
 結果は、建国に賛成反対、ちょうど半々だった。
 そして、その理由は、まったく同じ「安全のためなら」。
 俺は魔王として、「住人の安全を第一優先」にすることを彼女らに宣言した。
 安全第一って、魔王って何なんだろう?

「大使、よろしく頼む」
「はい、がんばります!」
「がんばり過ぎなくて良いんだぞ。ほら、肩の力を抜け」
「あ、はい。ナギコ様」
 お前は、もっと肩肘張って働けナギコ。
 街に駐在する大使館員、総勢十名の出発式だった。
 領主との折衝もあるから、と建国派を慮って長を大使、住居兼事務所を大使館と呼ぶことにした。
 みな、久しぶりに「人」の世界へ行くので、緊張した面持ちだ。
 大使は、太めで四十代にみえる熊の獣人だ。
 ワー・ベアではないので、耳と尻尾は隠せない。
 ので、猫耳・尻尾・羽根を変形で隠して「人」に擬態できるレイの秘書官、イエローとブルーも同行する。
 イエローは、温和な顔立ちとふくよかな体型でゆるふわ天然パーマ、ブルーは細目でクールな表情でスリム体型ストレートボブ。
 外見で人型の魔物だとバレるリスクのある住人たちに代わって、彼女らが基本的に「人」と対面することとなる。
 更にブルーには、透明化した羽猫を街中に撒き、盗聴盗視による情報収集をしてもらう予定だ。
 なので、イエローが商売などの表、ブルーが裏方面を相手にすることが多くなりそうだ。
 協議の末、彼女らがついていくことによって、猫電話の重要性は下がったが、複数通信手段があるのは良い事だし、大使館員が、秘書官の面談中その内容を聞き、密談できるメリットは大きい。
 大使館は先日の威力偵察中に、ワー・ウルフ兄妹が借りてきた。
 ただ、少し大きめな建物だったので、保証金だけでなく街の有力者の紹介状が必要となり、厚顔無恥にも領主の秘書官に頼んだ。
 なので、既に魔王配下が住むことはバレバレなのだが、街に間借りする以上、近所の住人を怯えさせないように表向き「人」が住んでますよ的な配慮も必要なので、イエローとブルーだ。
 もちろん、大使館員は、帽子を被ったりすれば、一見「人」なエルフなどを選出しているので、買い物などの外出は問題ないはずだ。
 まあ、常に監視はつくだろうから、事前に説明して、精神的に耐えられそうな方を選んではいる。
 新しく購入する荷馬車が、定期便で行き来するから、街で疲れたら、いつでも休暇で戻って、町で寛いでもらうつもりだ。

『・・・じ、・・・るじ、主、主』
『・・・レッドか、どうした?』
 夜、眠っているところをパス通信で起こされた。
『魔王国跡地に近づく者がいる』
 それは想定済みなので、予め対応を決めてあるのだが。
『・・・決めていたように、透明化したまま見張ってくれ』
 寝起きなので、つい「起こすな」が伝わってしまったのだろう。
 少し早口で、
『想定していた見張りではないと予測する』
『なに?』
『避難民だと推測される』
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