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神と魔王編
神さまです
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教皇が暗殺され、まず注目されたのは、当然ながら誰が犯人かだ。
下馬評では破門された元枢機卿のマヌエルだったが、発表は「何者からか差し向けられた暗殺者」であり、しかも教皇と相打ちで死亡し、実行犯の身元を探ろうにも死体の損傷が激しく、真相究明は叶わないとのことだった。
まあ、誰も信じないな。
「ハンズ分派」によるとマヌエルが消息不明で捜索中らしいので、実行犯がそのまま主犯だと噂されている。
次は、教団の行く末だ。
新に教皇を選出して、と思われたが、枢機卿らによる合議制となった。
しかし、これは各枢機卿が、自らの派閥を主体で活動していくという、ある意味での分裂だろう。
前世で、フランチャイズのとりまとめ会社が倒産したので、実店舗は独立採算でやっていく、みたいな感じだ。
「ハンズ分派」英雄王国・王都襲撃事件で、教皇に発言力を弱体化された枢機卿らが、担当地域の権力者と癒着した結果とも言える。
ヤヌス教団はこれから、世界規模の一宗派から、地域密着型の分派へと姿を変えていくのだろう。
ただ、このせいで、教皇は本当に死んだのか?
枢機卿らから隠れ、権力奪回を狙っているのでは、と噂された。
しかし俺たちは、暗殺の一報が町へ届く前から、教皇暗殺の真相を知っていた。
俺は、夜中に、ふと目が覚めた。
俺にくっついて寝る三姉妹の身体をやけに重たく感じた。
そろそろ夏も近いが、ヨウコとシウンは体温が低いせいか、暑くは感じない。
ただ、体温の高いヤトがしがみついた背中から、熱が伝わってこないことを不思議に感じた。
気配を感じて、目をやる、と暗闇に白い長Tシャツ姿のナギコが立っていた。
ギョっとした俺は、身体を起こそうとして、動けなかった。
金縛り?
『魔王には、喰い合ってもらわないと、予定外です。困りました』
ナギコの口から、ナギコのではない声が漏れた。
聞きたくもなかった『白い部屋の管理者』の声だ。
今更、ナギコとの再戦か?
ナギコのことは、喰ったことになったんじゃないのか?
まさか、覚悟を決めて「人型の魔物」の子供の教育を始めたことが、意に沿ぐわず出てきたのか?
『転生者「信者を集める」者が死亡、』
声に、ざざっと雑音が混ざる。
転生者?
信者?
『「命」が消費されずに死亡したため暴走、世界を蝕んで、』
ざざざっと雑音が混ざり、声が途切れる。
どうやら、俺とナギコの以外にも転生者がいて、死んだようだ。
死因はわからないが、転生のときに説明された転生理由「命の消費」。
きっと寿命が終わらずに死んだため、「命・エネルギー」が、世界を蝕んでいるようだ。
誰が?
「信者を集める」者?
もしかして、「ヤヌス教団」は「神」ありきではなく、転生者が転生特典「信者を集める」で集めた魔素で「神」をつくったのか?
教皇が転生者「魔王」?
だとすると、俺とナギコが喰い合わなかった件で、「もう一人の魔王」教皇へも『白い部屋の管理者』の干渉がこんな風に行き、俺たち他の魔王の存在を知ったのかもしれない。
つまり、「神」はこの世界の異物である「魔王」を潰すための免疫のようなものではなく、「もう一人の魔王」の転生特典の産物だった、と。
ざざ、ざざ雑音を漏らしていたナギコが、急にチューニングが合ったように、
『エラー・コード零参壱を承認。干渉します』
無理矢理、脳裏に映像が灯る。
豪華な椅子に座るローブ姿の小柄な人物。
フードで顔は見えないが、その袖から覗く手から、老人だろう。
そこへ歩み寄る、魔王戦争で顔を見、同じ金色の鎧姿の破門された元枢機卿マヌエル。
二人は、言葉を交わしている様子だが、音は聞こえてこない。
そして、マヌエルが剣を抜き、素早くローブの老人を椅子ごと切り捨てた。
背もたれが斜めにズレて床に落ち、老人は仰向けに背を反らし、動かなくなった。
マヌエルは、血塗られた剣を振るが、こびりついた血糊は剥がれない。
それどころか死体から、俺が身に纏う魔素に似た灰色に、嫌悪を感じる赤を混ぜた色の靄が立ち昇り、剣の血を標的に纏わりつく。
靄は、腕を伝わって暴れるマヌエルを包んだ。
大きく開いた彼の口からは、悲鳴か怒号が溢れているのだろうが、音は全く聞こえない。
彼の肉体は、干からびて倒れた。
床に転がった剣と鎧が靄ごと、宙へ飛ぶ。
映像が終わった。
どうやら、「もう一人の魔王」教皇をマヌエルが殺したが、そのせいで消費されきらなかった「命・エネルギー」の暴走?に巻き込まれて相打ち。
飛んでいった「命・エネルギー」靄は、どこへ?
どーん!と地響きと共に、町から少し離れた地点から、爆発音のような音が響いた。
それと同時に俺の金縛りは解け、ナギコも床へ崩れた。
あ、おい!
転生特典のマニュアル置いていけ『白い部屋の管理者』!
「命・エネルギー」靄が、町の近くへ落ちたことが、『白い部屋の管理者』の干渉なのだろう。
マヌエルが干からびたのが、世界を蝕んでいる表れなのだと思われる。
そんなとんでもないモノを、町の側に落とすなんて迷惑、極まりない。
まず、パス通信で、ほぼ爆発音の原因はわかっていることを緊急連絡、夜中だが住民を集会場へ避難させるように依頼。
次に、イエローとブルー経由で、街の領主と裏組織の頭領へ、この件は魔王が責任をもって街へ被害を出さないことを約束。
羽猫を偵察に出したところ、音からして、すり鉢状の陥没でもできているかと想像していたのだが、こじんまりとした祠のような物が見つかっただけだ。
祠の中では、マヌエルの剣や鎧は見つからず、階段で地下へつながっているようだが、そこから魔物が溢れ出てくる様子もなかったため、翌朝に調査をすることにし、緊急な危険性はないと判断して住民は家へ帰した。
もちろん、俺たちは、そのまま緊急会議だ。
ナギコが、また『白い部屋の管理者』から干渉を受けたこと。
「夜這いかと思った」
「服を着ていたから、ヨウコは信じてました」
「暑いから中は、着てないぞ」
「え?」
教皇が「もう一人の魔王」だったこと。
「魔王が何人もいて、大安売りだな」
「元が量産されてますね」
「え?」
「神」はその転生特典で生まれた存在で、教皇の死で消えたであろうこと。
「結局、神はいなかったと」
「神も仏もないな」
「え?」
教皇は、破門された元枢機卿マヌエルに殺害され、相打ちになったこと。
「どっちもどっちですな」
「相打ちというより、巻き込まれ事故?」
「名のあるキャラなのに不憫なヤツ」
「え?」
その死によって、世界を蝕む「命・エネルギー」靄というわけわからないモノが、町の近くへ『白い部屋の管理者』が落としたこと。
「その『白い部屋の管理者』が我々に臨んでいるのは」
「『命・エネルギー』とやらを、なんとかしろってことだろうな」
わけのわからないモノの対処に、祠ができているというわからん状況に、どうしろと?
俺は、ため息をついて、つい愚痴ってしまった。
「世界を敵に戦争した方が、楽じゃないか?」
それで国が滅びたナギコに、思いっきり足を蹴られた。
わけのわからないものには、仮称をつけ仮説をたてるしかない。
教皇は、転生特典「信者を集める」で、魔素を集め、「神」をつくった。
そのため、その死に際して、発生した「命・エネルギー」を「神」と混同して、教皇は縋ろう、もしくは守ろうとした。
集めた魔素だか「命・エネルギー」だか「神」だか教皇の残留思念的なモノだか、役割がわからないが、『白い部屋の管理者』に町の側に落とされたとき、ナニかを守るためにナニかが祠と地下をつくった。
なので、祠の地下には、ナニかがナニかを守っている。
すべて、「だろう」や「かもしれない」が語尾につく曖昧さだ。
よって、仮称「ダンジョン攻略作戦」と命名(俺)した。
だんじょん?と皆はキョトンとしたが、ナギコはうんうん頷いた。
地下だし、ナニか守っているなら、ダンジョンだろう、という安直な発想だ。
まあ、仮説・仮称なのだから、とりあえずは適当で、臨機応変に対応していけば良い。
サクラ母子、レイ、ドワーフ母子二組は、レッドとヴァイオレットが馬車で連れ、旧ワー・ウルフ兄妹宅へ向かっている。
そんなことはないと願っているが、万が一ダンジョンが大爆発したときの用心だ。
この心配を説明し、祠から少しでも遠くなるよう街の大使館への避難を頼んだが、町の住民は従わなかった。
「人」に偽装して隠れて暮らすのは、もう嫌なようだ。
妻子を送り出した旧カムリも町へ残ると言い張った。
「うまいメシがあれば、こんなときだからこそ、みんなが落ち着く」
それでもドワーフ商隊は、全ての荷馬車で、いつでも逃げ出せるように町で待機。
ナギコが、臨時町長を襲名。
最悪、シランが元魔王国跡地へ跳んで避難させる。
「それまでは、寝てて良いですか?」
「今回は許す。いざというときは、頼むシラン」
「・・・そこは、蹴ってくれないと調子が狂います、ナゴコ様」
ちなみに、跡地は、教団崩壊で監視の目が緩んでいるようだった。
そんな風に、準備を進めている、と教皇暗殺の一報が、ようやく届いた。
ダンジョン攻略組は、八名。
まずサポートとして地上待機班が、コンミョウとインディゴ。
コンミョウは、魔素の特性で地図づくりを行い、「共有」する。
インディゴは、パス通信と猫電話を使って、戦闘班、各地への情報伝達。
ちなみにインディゴは、スレンダーな体型に、かなり短い髪形で、顔つきも一見すると少年のようにボーイッシュだ。
戦闘班の前衛は俺、ハイロウ、ヤト。
後衛はキラ、ヨウコ、シウンの懐かしき昆虫の森探索と同じメンバーだ。
あれは、もう一年くらい前の話か。
「狩りではない、戦闘というのも久しぶりですな」
ハイロウは、「爆裂」を「付与」した手甲をつけていた。
ワザと弱く付与して、敵を爆発させずにダメージを与える工夫だ。
「お腹、へっちゃわないかな」
ヤトはデス・サイズを装備。
見た目だけなく、「切断」は自前なので、振り回した柄でも切れるという禍々しさだ。
「ちゃんとサクラさん最新作の袋に、たくさん持ってきてますよ、ヤト姉様」
ヨウコは、槍の柄を三節棍に改造。
ドワーフ商隊が師匠から教えてもらったという武器で、槍の間合いから懐へ入り込まれても対処できるようになった。
「ほんと、サクラの袋はたくさん入るから安心」
キラの矢筒もサクラ製の布が内側に貼ってあるので、大量の矢が持ち込まれている。
「・・・今度は、ちゃんと戦う」
俺は、三姉妹を参戦させたくなかったのだが、強引に押し切られていた。
その中でも、最も聞く耳を持たなかったのが、シウンだ。
「名づけ」前のサクラたちをスピア・ビーから守る戦いで、ほとんど役にたてなかったことを未だに後悔している。
その手の銃も魔弾も、そのときの反省からつくったものだ。
俺は愛用の剣とは別に、木製の盾を持っていた。
「強靭」化しただけだが、屋内なダンジョンでは、役に立つだろう。
ちなみに、魔王専用黒騎士鎧弐式改(弐式は羽猫渦で爆破)は、動きづらいので、装備していない。
「怪我をしない、無理をしない、帰るまでが攻略だ」
聞いた全員が頷き、地上班に見送られて、六名で祠に入っていった。
下馬評では破門された元枢機卿のマヌエルだったが、発表は「何者からか差し向けられた暗殺者」であり、しかも教皇と相打ちで死亡し、実行犯の身元を探ろうにも死体の損傷が激しく、真相究明は叶わないとのことだった。
まあ、誰も信じないな。
「ハンズ分派」によるとマヌエルが消息不明で捜索中らしいので、実行犯がそのまま主犯だと噂されている。
次は、教団の行く末だ。
新に教皇を選出して、と思われたが、枢機卿らによる合議制となった。
しかし、これは各枢機卿が、自らの派閥を主体で活動していくという、ある意味での分裂だろう。
前世で、フランチャイズのとりまとめ会社が倒産したので、実店舗は独立採算でやっていく、みたいな感じだ。
「ハンズ分派」英雄王国・王都襲撃事件で、教皇に発言力を弱体化された枢機卿らが、担当地域の権力者と癒着した結果とも言える。
ヤヌス教団はこれから、世界規模の一宗派から、地域密着型の分派へと姿を変えていくのだろう。
ただ、このせいで、教皇は本当に死んだのか?
枢機卿らから隠れ、権力奪回を狙っているのでは、と噂された。
しかし俺たちは、暗殺の一報が町へ届く前から、教皇暗殺の真相を知っていた。
俺は、夜中に、ふと目が覚めた。
俺にくっついて寝る三姉妹の身体をやけに重たく感じた。
そろそろ夏も近いが、ヨウコとシウンは体温が低いせいか、暑くは感じない。
ただ、体温の高いヤトがしがみついた背中から、熱が伝わってこないことを不思議に感じた。
気配を感じて、目をやる、と暗闇に白い長Tシャツ姿のナギコが立っていた。
ギョっとした俺は、身体を起こそうとして、動けなかった。
金縛り?
『魔王には、喰い合ってもらわないと、予定外です。困りました』
ナギコの口から、ナギコのではない声が漏れた。
聞きたくもなかった『白い部屋の管理者』の声だ。
今更、ナギコとの再戦か?
ナギコのことは、喰ったことになったんじゃないのか?
まさか、覚悟を決めて「人型の魔物」の子供の教育を始めたことが、意に沿ぐわず出てきたのか?
『転生者「信者を集める」者が死亡、』
声に、ざざっと雑音が混ざる。
転生者?
信者?
『「命」が消費されずに死亡したため暴走、世界を蝕んで、』
ざざざっと雑音が混ざり、声が途切れる。
どうやら、俺とナギコの以外にも転生者がいて、死んだようだ。
死因はわからないが、転生のときに説明された転生理由「命の消費」。
きっと寿命が終わらずに死んだため、「命・エネルギー」が、世界を蝕んでいるようだ。
誰が?
「信者を集める」者?
もしかして、「ヤヌス教団」は「神」ありきではなく、転生者が転生特典「信者を集める」で集めた魔素で「神」をつくったのか?
教皇が転生者「魔王」?
だとすると、俺とナギコが喰い合わなかった件で、「もう一人の魔王」教皇へも『白い部屋の管理者』の干渉がこんな風に行き、俺たち他の魔王の存在を知ったのかもしれない。
つまり、「神」はこの世界の異物である「魔王」を潰すための免疫のようなものではなく、「もう一人の魔王」の転生特典の産物だった、と。
ざざ、ざざ雑音を漏らしていたナギコが、急にチューニングが合ったように、
『エラー・コード零参壱を承認。干渉します』
無理矢理、脳裏に映像が灯る。
豪華な椅子に座るローブ姿の小柄な人物。
フードで顔は見えないが、その袖から覗く手から、老人だろう。
そこへ歩み寄る、魔王戦争で顔を見、同じ金色の鎧姿の破門された元枢機卿マヌエル。
二人は、言葉を交わしている様子だが、音は聞こえてこない。
そして、マヌエルが剣を抜き、素早くローブの老人を椅子ごと切り捨てた。
背もたれが斜めにズレて床に落ち、老人は仰向けに背を反らし、動かなくなった。
マヌエルは、血塗られた剣を振るが、こびりついた血糊は剥がれない。
それどころか死体から、俺が身に纏う魔素に似た灰色に、嫌悪を感じる赤を混ぜた色の靄が立ち昇り、剣の血を標的に纏わりつく。
靄は、腕を伝わって暴れるマヌエルを包んだ。
大きく開いた彼の口からは、悲鳴か怒号が溢れているのだろうが、音は全く聞こえない。
彼の肉体は、干からびて倒れた。
床に転がった剣と鎧が靄ごと、宙へ飛ぶ。
映像が終わった。
どうやら、「もう一人の魔王」教皇をマヌエルが殺したが、そのせいで消費されきらなかった「命・エネルギー」の暴走?に巻き込まれて相打ち。
飛んでいった「命・エネルギー」靄は、どこへ?
どーん!と地響きと共に、町から少し離れた地点から、爆発音のような音が響いた。
それと同時に俺の金縛りは解け、ナギコも床へ崩れた。
あ、おい!
転生特典のマニュアル置いていけ『白い部屋の管理者』!
「命・エネルギー」靄が、町の近くへ落ちたことが、『白い部屋の管理者』の干渉なのだろう。
マヌエルが干からびたのが、世界を蝕んでいる表れなのだと思われる。
そんなとんでもないモノを、町の側に落とすなんて迷惑、極まりない。
まず、パス通信で、ほぼ爆発音の原因はわかっていることを緊急連絡、夜中だが住民を集会場へ避難させるように依頼。
次に、イエローとブルー経由で、街の領主と裏組織の頭領へ、この件は魔王が責任をもって街へ被害を出さないことを約束。
羽猫を偵察に出したところ、音からして、すり鉢状の陥没でもできているかと想像していたのだが、こじんまりとした祠のような物が見つかっただけだ。
祠の中では、マヌエルの剣や鎧は見つからず、階段で地下へつながっているようだが、そこから魔物が溢れ出てくる様子もなかったため、翌朝に調査をすることにし、緊急な危険性はないと判断して住民は家へ帰した。
もちろん、俺たちは、そのまま緊急会議だ。
ナギコが、また『白い部屋の管理者』から干渉を受けたこと。
「夜這いかと思った」
「服を着ていたから、ヨウコは信じてました」
「暑いから中は、着てないぞ」
「え?」
教皇が「もう一人の魔王」だったこと。
「魔王が何人もいて、大安売りだな」
「元が量産されてますね」
「え?」
「神」はその転生特典で生まれた存在で、教皇の死で消えたであろうこと。
「結局、神はいなかったと」
「神も仏もないな」
「え?」
教皇は、破門された元枢機卿マヌエルに殺害され、相打ちになったこと。
「どっちもどっちですな」
「相打ちというより、巻き込まれ事故?」
「名のあるキャラなのに不憫なヤツ」
「え?」
その死によって、世界を蝕む「命・エネルギー」靄というわけわからないモノが、町の近くへ『白い部屋の管理者』が落としたこと。
「その『白い部屋の管理者』が我々に臨んでいるのは」
「『命・エネルギー』とやらを、なんとかしろってことだろうな」
わけのわからないモノの対処に、祠ができているというわからん状況に、どうしろと?
俺は、ため息をついて、つい愚痴ってしまった。
「世界を敵に戦争した方が、楽じゃないか?」
それで国が滅びたナギコに、思いっきり足を蹴られた。
わけのわからないものには、仮称をつけ仮説をたてるしかない。
教皇は、転生特典「信者を集める」で、魔素を集め、「神」をつくった。
そのため、その死に際して、発生した「命・エネルギー」を「神」と混同して、教皇は縋ろう、もしくは守ろうとした。
集めた魔素だか「命・エネルギー」だか「神」だか教皇の残留思念的なモノだか、役割がわからないが、『白い部屋の管理者』に町の側に落とされたとき、ナニかを守るためにナニかが祠と地下をつくった。
なので、祠の地下には、ナニかがナニかを守っている。
すべて、「だろう」や「かもしれない」が語尾につく曖昧さだ。
よって、仮称「ダンジョン攻略作戦」と命名(俺)した。
だんじょん?と皆はキョトンとしたが、ナギコはうんうん頷いた。
地下だし、ナニか守っているなら、ダンジョンだろう、という安直な発想だ。
まあ、仮説・仮称なのだから、とりあえずは適当で、臨機応変に対応していけば良い。
サクラ母子、レイ、ドワーフ母子二組は、レッドとヴァイオレットが馬車で連れ、旧ワー・ウルフ兄妹宅へ向かっている。
そんなことはないと願っているが、万が一ダンジョンが大爆発したときの用心だ。
この心配を説明し、祠から少しでも遠くなるよう街の大使館への避難を頼んだが、町の住民は従わなかった。
「人」に偽装して隠れて暮らすのは、もう嫌なようだ。
妻子を送り出した旧カムリも町へ残ると言い張った。
「うまいメシがあれば、こんなときだからこそ、みんなが落ち着く」
それでもドワーフ商隊は、全ての荷馬車で、いつでも逃げ出せるように町で待機。
ナギコが、臨時町長を襲名。
最悪、シランが元魔王国跡地へ跳んで避難させる。
「それまでは、寝てて良いですか?」
「今回は許す。いざというときは、頼むシラン」
「・・・そこは、蹴ってくれないと調子が狂います、ナゴコ様」
ちなみに、跡地は、教団崩壊で監視の目が緩んでいるようだった。
そんな風に、準備を進めている、と教皇暗殺の一報が、ようやく届いた。
ダンジョン攻略組は、八名。
まずサポートとして地上待機班が、コンミョウとインディゴ。
コンミョウは、魔素の特性で地図づくりを行い、「共有」する。
インディゴは、パス通信と猫電話を使って、戦闘班、各地への情報伝達。
ちなみにインディゴは、スレンダーな体型に、かなり短い髪形で、顔つきも一見すると少年のようにボーイッシュだ。
戦闘班の前衛は俺、ハイロウ、ヤト。
後衛はキラ、ヨウコ、シウンの懐かしき昆虫の森探索と同じメンバーだ。
あれは、もう一年くらい前の話か。
「狩りではない、戦闘というのも久しぶりですな」
ハイロウは、「爆裂」を「付与」した手甲をつけていた。
ワザと弱く付与して、敵を爆発させずにダメージを与える工夫だ。
「お腹、へっちゃわないかな」
ヤトはデス・サイズを装備。
見た目だけなく、「切断」は自前なので、振り回した柄でも切れるという禍々しさだ。
「ちゃんとサクラさん最新作の袋に、たくさん持ってきてますよ、ヤト姉様」
ヨウコは、槍の柄を三節棍に改造。
ドワーフ商隊が師匠から教えてもらったという武器で、槍の間合いから懐へ入り込まれても対処できるようになった。
「ほんと、サクラの袋はたくさん入るから安心」
キラの矢筒もサクラ製の布が内側に貼ってあるので、大量の矢が持ち込まれている。
「・・・今度は、ちゃんと戦う」
俺は、三姉妹を参戦させたくなかったのだが、強引に押し切られていた。
その中でも、最も聞く耳を持たなかったのが、シウンだ。
「名づけ」前のサクラたちをスピア・ビーから守る戦いで、ほとんど役にたてなかったことを未だに後悔している。
その手の銃も魔弾も、そのときの反省からつくったものだ。
俺は愛用の剣とは別に、木製の盾を持っていた。
「強靭」化しただけだが、屋内なダンジョンでは、役に立つだろう。
ちなみに、魔王専用黒騎士鎧弐式改(弐式は羽猫渦で爆破)は、動きづらいので、装備していない。
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