レベルアップがない異世界で転生特典のレベルアップしたら魔王として追われケモ耳娘たちとひっそりスローライフ。けど国を興すか悩み中

まみ夜

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神と魔王編

地下しんでんです

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 地下何階ともわからないその場所は、前世の教会の礼拝堂のようだった。
 神殿、なのだろうか。
 コンミョウが、律儀に何階かはチェックしているのだろうが、敢えて聞きたくない。
 なぜかここでは、今まで通りの読めない文字に、この世界の文字で、読み方が書いてあった。
「これは、なんですか?」
 抑えてはいるが、つい声で聞いてくるハイロウ。
「文字は読めますが。意味がわかりますか、お父様?」
 言われる、と張り紙やポスターの読み方は、「禁煙」「スマホの電源オフ」「携帯ゲーム禁止」など、音はわかっても、この世界では意味不明だろう。
 こういえば、タバコがないな、この世界。
「意味はわかる。ここは、別の世界を模した建物だ」
「別の世界だから、文字が読めても意味がわからないの?」
 その通りなので、頷くが、読める文字が添えてあるのが、逆に意味不明だ。
 とりあえず、灯りは不要なので、松明は消す。
 礼拝堂だと思うのだが、その正面の壁には、偶像が何もなかった。
 ただ、ぽつんと一人、黒髪の少女が椅子に座っていた。
 遠目にも金鎧をつけているのが分かるので、ラスボスだろう。
 彼女を倒せば、世界を蝕む「命・エネルギー」をなんとかできるのか?
 その間を隔てるベンチ状の椅子に、いつの間にか、デーモンらしき影が座っているのが見えた。
 先手必勝で、キラに射らせるが、矢は貫通し、前のベンチの背に突き立った。
 そのデーモンが、立ち上がる。
 それで気がついた。
 今までとは違い、黒いローブのような衣装を羽織っている。
 上位デーモン?
 こちらへ両手を広げて近づいてくるのを、俺も前へ進んで間合いを詰めると、魔素を注いだ剣で切りつけた。
 が、手応えもなく、すり抜けた。
 魔素ナシだとダメージを与えられないと考えたのだが、違うようだ。
 上位デーモンが、俺に抱き着いた。
 こちらの攻撃は通らないのに、そちらからは触れるのか?
 ブレスのようなダメージに身構える俺の頭に、少女のような『声』が響く。
『やめて!』
『痛い!』
『傷つけないで!』
『いやいやいや!』
『助けて!』
 俺が、必死に振り解こうとする、と紙を破るように、人影は黒いローブごと呆気なく千切れて靄になった。
 どうやら、こちらも武器ではなく生身なら、触れられるようだ。
 しかも、脆い。
 ただ、『声』は、ダメージこそないが、精神的に痛い。
 俺は、振り向く、と俺を救おうとしていた全員を制し、説明した。
 なぜか、実質ダメージはないので、俺の後をついてくるように指示。
 納得しない顔をしながらも頷く中、ハイロウが、一歩進んだ俺の隣に立った。
「『実質』ダメージはないのでしたら、よろしいですな、主殿?」
 俺は、ため息をついて、
「どうせ、何かあると察してるんだろう。少女の悲鳴が頭に響く、キツイぞ」
 ハイロウは、少し眉を寄せるが、
「今更、少女の泣き事に動じるハイロウではありませんな」
「娘たちには、弱いだろうが」
「お嬢たちは、泣き事など言いませんが?」
「そうだな」
 不敵に笑うハイロウに、俺も笑みを返し、立ち上がった大量の上位デーモンへ向けて二人、歩き出した。

 壇上には、長い黒髪の少女が、粗末な椅子に座っていた。
 ただ、その身は黄金の鎧を纏い、巨大な剣を抱きかかえていた。
 両方とも元枢機卿のマヌエルの物だったはずだが、鎧は少女の身体に合うように小さく、剣はより巨大になっていた。
 少女は、怯えた目で俺たちを見ている。
 倒すべきラスボスなのに、どういうことだ?
 この少女が教皇の残留思念?なら、女性だったのか?
「あなたは、教皇ですか?」
 聞いてみるが、返事はない。
「あなたは、転生者ですか?」
 返事はなかったが、俺に耳を澄ますような仕草を見せた。
 俺の口が動くのは見えるが、声が聞こえないのだろう。
「あなたは、教皇ですか?」
 声を大きくしての繰り返しに、彼女も口を開くが、何も聞こえない。
 俺も、耳に手を当て、聞く素振りを見せ、お互いに声が届かないことがわかる。
 そういえば、このダンジョンに入ってから、モンスターも上位デーモン以外、声を出さなかった。
 あれも、音声での声ではなかったか。
 何か、関係があるのか?
 言葉によるコミュニケーションが取れないことがわかる、と少女は一層、怯えを見せた。
 俺は、身振りで伝えられないか試みるが逆に、その動きに驚いたのか、少女は立ち上がり、抜き身の剣を構えた。
 俺には、少女の事情がわかるまで争う気はないが、いきなり斬られたら絶対に死にそうな剣なので、仕方なく俺も構える。
 少女の腕には剣が重く、よろけたのだろうか。
 こちらへ向かってきた剣を、剣で受けた。

 私の名前は、セレナ。
 フィリピン人。
 正確には、クオーターらしい。
 ママのママのパパが、フィリピン人ではなかったようだ。
 ママのママも、詳しいことは言わなかったらしくて、ママも知らない。
 とはいえ、あの世界でのことは、もうかなり、うろ覚えだ。
 この世界に転生したときに、産まれるところからやり直したから、もうこちらでの生の方が、何倍も長いからだ。
 だから、フィリピン名も忘れてしまった。
 覚えているのは、日本へママに連れられて来たこと。
 当時はよくわからなかったが、覚えている単語をつなぎ合わせたりして考えると。
 ママは、日本人の奥さんになるために来た。
 なのに、子供の私まで連れてきてしまった。
 子供がいるのは問題なかったが、フィリピンに置いてくるはずだったのだ。
 よくわからないが結局、私は日本に残ることになった。
 でも、フィリピン語しかわからない私は、当然イジメられた。
 友達は、隣のくらすのミカちゃんだけ。
 ミカちゃんのママもフィリピン人だが、ミカちゃんは日本産まれなので、私と違って日本語もできる。
 私と話す他の日本人にはわからないフィリピン語が、暗号で話すようで楽しかったみたい。
 ミカちゃんには日本のことを、いろいろ教わった。
 ゲームやおまじない。
 ゲームは、ろーぷれを見ているのが楽しかった。
 日本語がわからなくても、戦いに勝った負けたは音楽でわかるし、ミカちゃんが解説してくれるストーリーは、ゆうしゃが世界を幸せにして楽しかった。
 特に、そうりょは、傷を治すまほうが使えて、憧れた。
 ミカちゃんには、「ゆうしゃじゃなくて、そうりょが良いなんて変わってるね」と笑われた。
 おまじないは、お友達ができますように、くらすの人と仲良くできますようにって、たくさんしたけど、効かなかった。
 人をのろうおまじないの方が、犠牲は大きいけど、効くのかも、とは思ったけど怖くてやれなかった。
 そのうち、ミカちゃんは、パパに私と遊ぶなと言われて、会えなくなった。
 それから、入り浸ったのは、ミカちゃんに一回連れて行かれた、きょうかい。
 神様は、おまじないが効かなかったから、信じていなかった。
 ゲームと違って信じても、まほうも使えないし。
 でも、行き場がなかったし、きょうかいの大人は、優しかった。
 日本語が読めないと知る、と辞書で調べて、フィリピン語で読み方を書いてくれたりもした。
 そして、あの日がやってきた。
『あなたは、猫を助けようとして、トラックにひかれて亡くなりました。このままだと、あなたの命が歪みとして、世界を蝕んでしまうので、異世界に転生していただきます。転生特典は、何がよろしいですか?』
 私は、そうりょをお願いした。
 でも、この世界には、しゅうきょうもかみ様もいないって言われたから、じゃあかみ様をつくりたいってお願いした。
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