レベルアップがない異世界で転生特典のレベルアップしたら魔王として追われケモ耳娘たちとひっそりスローライフ。けど国を興すか悩み中

まみ夜

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神と魔王編

ラスボスです

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「・・・あんまり、乙女の秘密を覗くものじゃないわ」
 豪華な椅子に座り、金鎧ではなくフードを被らないローブ姿だが、ダンジョンに居たのと同じ少女が言った。
 俺は、あまりに急な場面転換に戸惑いつつも、中身はどうであろうと外見は、乙女なので、頷いた。
 その俺の反応の素直さに驚き、ローブの袖から覗く自分の手が若々しいことに気がつき、ぺたぺたと顔を触り、肌艶を感触で確かめたらしい。
「あら、本当に乙女だ。便利だわ」
 俺は、教会で金鎧の少女が座っていたのに似た粗末な椅子があったので、座った。
 周りは他、真っ白だったが、気にしないことにする。
 『白い部屋の管理者』の干渉で見せられた映像と同じ豪華な椅子、ローブだったので、改めて聞く。
「あなたは、教皇ですか?」
「・・・元、だけどね」
 「元」という言い方に、ナギコにも似た自嘲が混じった。
 だが、亡くなりはしたが、誰も教皇を継いでいないのだから元なのか?って知らないのか。
 それに、乙女の秘密というのだから、さっきのは、転生者・元教皇の過去だったのだろう。
「君は、『もう一人の魔王』『魔物を従える』者?」
 どうして、ここにナギコの転生特典が出てくるんだ?
「魔王ですが、転生特典は『レベルアップ』です」
「・・・それだと、理屈に合わないわ」
 なにが?
「『ワンダリング・ウイング・キャッツ』を『魔物を従える』で従えたでしょ?」
 違うのだが、やはりその件は知っているのか。
「まさか、災害級にまで効くなんて、驚いたわ」
「いや、それ、俺がやりました」
「うん、だから『魔物を従える』者でしょ?」
 そういう理屈か。
「いえ、」
「ああ!」
 急に、納得いった声を上げて、
「『魔物を従える』を喰ったから使えるけど、転生特典はあくまで『レベルアップ』な訳ね」
 それも知ってるのか。
「てっきり、『魔物を従える』者が、もう一人の魔王を喰ったんだと思ってたわ」
「どうして、それを知っているんですか?」
「『白い部屋の管理者』が、急に現れて言ったの。『魔王同士が喰い合わない異常事態が発生。「魔物を従える者」に干渉。結果、魔王一人が喰われて脱落』だった、かな」
 やはり、ナギコへの干渉は、他魔王へも通達が行って、俺たちの存在を知ったのか。
 でも一応あれで、ナギコは喰われたことにはなったんだな。
「だから、『魔物を従える』者が勝ったんだと思ってた」
 そういう事でしょ?とキラキラした目で見られるが、事実は違う。
「『魔物を従える』者は喰いましたけど、使えないです。『魔物を従える』」
「・・・それだと、理屈に合わないわ」
 確かにそうなので、俺の「レベルアップ」が感染する「名づけ」、ナギコを喰うことになった経緯など、全てを話した。
「・・・わけがわからないわ」
 元教皇は、額を押さえて、
「これは、推測に過ぎないけど」
「かまわないです。聞かせてください」
 少女は、開きかけた口を閉じると、
「今更だけど、なんで敬語?」
 死に際の姿を観ているからだ。
「目上の方なので、」
「お・と・め。敬語禁止、教皇命令」
 食い気味に命令されるが、異存はない。
 都合よく「元」を使いわけているな。
「わかった、聞かせてくれ」
「魔王は、転生特典で、結果的に魔素を集めている。ここまではいい?」
 俺は頷く。
「私は信者から、『魔物を従える』者ナギコは魔物から。対象を増やせば魔素の量は増える、しかも半永続的に。対して、『レベルアップ』は、殺した魔物から一度きり。だから、大量に魔素を集めるための救済的処置が、『名づけ』なんじゃない?」
 理屈は合っていそうだが、ナギコも「名づけ」られた説明にならないし、そもそも、
「それだと、転生者は、大量に魔素を集めるのが、」
 元教皇は、唇に人差し指を当てる、と俺を止めた。
 そして、ゆっくりと首を振る。
 これは、『白い部屋の管理者』の禁忌に触れる話題なのだろうか。
 パキン、とどこかで何かが割れるような音がした。
 俺は、さっきの台詞がバレての干渉か?と思い身構えたが、元教皇はノンビリしたものだった。
「そろそろ、浪費が終わるのかな」
「浪費?」
「うん、『命・エネルギー』の」
 浪費?
 消費じゃなくて、浪費?
「君は、ここを何だと思ってる?」
 ここ?
 言われて見回すと、
「違う違う、君たちが通ってきた地下のことだよ。なんとなくだけど、見えてたんだ」
 そっちか。
 俺たちがダンジョンへ潜ったのは、
「あなたの残留思念か何かが、『神』と混同した『命・エネルギー』を奪われないように守っているのでは、と仮定した」
「そう考えたか」
 元教皇は、うんうん頷く。
「じゃあ、どうやって、ここはできたと思ってる?」
「あなたの守ろうという遺志を反映して、集めた魔素か『命・エネルギー』をエネルギー源として、ダンジョンやモンスターをつくった可能性は、考えた」
「そっか、ダンジョンにモンスター、まるでゲームだね」
「だからこそ、転生者が色濃く影響していると確信した」
 それには、うーんと首を傾げ、
「でも、そうだとしても私、何も守ってないよ?」
 やっぱり?
 教会の金鎧の少女にしても、この元教皇にしても、守る物のために俺を倒す、という殺気や意思を感じなかった。
 ひょい、と虚空を見、
「『神』も霧散したみたいだから、関係ないと思う」
 やはり予想通り、魔素を束ねて「神」にしていた転生特典が、教皇の死によって失われ、魔素に戻り消えてしまったようだ。
「水素を集めてつくった風船が割れたから、水素は空気に紛れて消えた感じ」
 では、それこそダンジョンは何のためだ?
「これは、推測に過ぎないけど」
「かまわない、聞かせてくれ」
「ダンジョンもモンスターも、『命・エネルギー』を安全に消費させるためのシステムだと思うわ」
 え?
 それって、俺たちは前提を間違えていたのか。
「『命・エネルギー』をこのダンジョン・ゲーム世界を創造することで消費し、余った分を動かすためのエネルギー源にして、更に余った分が、」
 パキパキ、とどこかで何かが割れるような音がした。
「ここなんかで、浪費されてるんだと思うわ」
 今度の「ここ」は、この白い空間だろう。
 つまり、俺たちが、
「・・・何もしなくても、『命・エネルギー』は、安定した?」
 うーんと首を傾げ、
「君たちが浪費を手伝ったから、安定した、のかも?」
 そう考えた方が良いよ、と気遣う表情。
 俺たちは、「命・エネルギー」靄というわけわからないモノが世界を蝕まないように、何とかしようと、決死の覚悟でダンジョンへ赴いた。
 だが、ダンジョンそのものが、「命・エネルギー」を消費し、世界を蝕むことがないよう安全にするためのシステムの可能性。
 俺たちがモンスターと闘ったのは、過充電されたバッテリーの電気を放電・浪費させたようなこと?
 『白い部屋の管理者』が、町の近くへ落としたと思っていたが、単に俺たちの魔素に引かれてだったのかもしれない。
 仮称「ダンジョン攻略作戦」(命名俺)の仮説は、全て的外れだったのだ。
 今の俺は、死者である元教皇よりも死にそうな顔をしているに違いない。
「うん、君は世界のために、よく頑張ったよ」
 元教皇は、気安く俺の肩を叩くが、「誰が死んだせいだと思ってるんだ?」を必死に飲み込んだ。
 パキパキパキッ、とどこかで何かが割れるような音がした。
 そして、バキンと音がして、白い空間がひび割れた。
「どうやら、浪費が終わったようだわ。楽しいおしゃべりも、ここまでね」
「待て、まだ聞きたいことが、」
「待て、と言われても。ここ維持してるの私じゃないわ」
 そりゃ、そうだろうけど。
 バキバギバキバキ、と音を立て、「命・エネルギー」を浪費するための交流の場?が、壊れていく。
「あ、私を喰うの、忘れないでね」

 俺は、金鎧の少女の剣を受け止めていた。
 もう怯えがなくなった目が、俺を見る。
 その目を見返し、俺は言った。
「お前は、セレナだ」
 その名で俺は、彼女を「名づけ」た。
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