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のらぱーてぃー
ジャイアント・アント
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あれからしばらくして、俺はパーティーから抜けた。
必殺技のことは、黙っているつもりだったが、何かを隠していることはすぐにバレ、問い詰められた。
それでも惚けていたが、自分たちを信用していないのか、と言われ、ついに白状してしまった。
黙っていたことを責められもしたが、理解もしてくれた。
そして、龍鱗の剣は、装備しないように勧められた。
俺も、それが最善だ、と頭ではわかっていた。
ただ、ユウゾウの頭が飛ぶシーンが目に浮かぶ度、それがパーティーの誰かだったら、と思うと、手にせざるを得なかった。
呪いは解けているはずなのに、まるで呪いのアイテムだ。
装備から外せないし、捨てられもしない。
魔法を使った直後のミチルを守るために、必殺技を使って倒れ、彼女に殴られた翌日、俺はパーティーから抜けた。
それからは、別の街へ移り、ソロか野良パーティーでやっている。
「レベル拾弐ファイターのケイ。装備は初期装備のまま」
野良パーティーで龍鱗の剣を使う気はない。
この街では、固定のパーティーは少なく、ギルドがクエストごとに応募者でパーティーを組ませることが多かった。
「ムラヤマでレベル参メイジ。装備は初期装備」
茶髪でメガネの少年。。
「マキタ、レベル参ガンナーで、ボクも初期装備」
ショートカットの少女。
「なんや、初期装備、初期装備って、素人ばっかかいな」
小太りのメガネ青年。
胸元を覆う金属鎧をアンダーの上に着けている。
「ワイの名はシラヌイ。レベル拾参の盾持ちファイターや」
ぐるりと見渡し、
「しゃあないから、レベルが一番上のワイがリーダーするで。素人ども、ついてきいや」
ステータスカードに[YES][NO]の文字が浮かぶ。
パーティーを組まない、といったらどんな顔するかな、と意地悪なことを考えつつ、[YES]を選んだ。
両手に装備の重さが加わる。
「ガイドカーソルやで」
矢印の方向に、シラヌイが走り出す。
彼の盾は、ランドウのものより、かなり小さかった。
比べるな。
盾持ちのファイター、ガンナー、メイジという構成に動揺しているのだろうか。
「壁になるから、ついてきいや!」
作戦の指示にもなっていない。
仕方なく、走りだしながら、
「あー、メイジは後から来い。壁がヘイト集めたの見て魔法。ガンナーはメイジの前で攻撃。どっちもヘイトの集めすぎに気をつけろ」
二人より先行して問題ないので、スピードを上げて、シラヌイの後を追う。
ガイドカーソルが赤くなり、ジャイアント・アントの名前とバーが出た。
こいつは!
心臓が、ドクン!と跳ね上がったのは、走っているのが原因でないだろう。
真正面から肉薄するシラヌイが、口から吐いた蟻酸を吹きかけられ、転がった。
「あっつい、あっついでー!」
バーが残り四割程度に削れ、そこからもジリジリ、と下がる。
酸の効果で、追加ダメージを受けているようだ。
戦闘中は回復アイテムが使えないので、そのまま彼の脇を走り抜け、アントの脇に付き、足の関節を狙った。
太い針金を断ち切るような音がして、足が一本、中ほどから切れる。
咆哮を上げ、顎で襲ってくるが、スモール・シールドで、受け流し、逆に複眼に一撃入れた。
二人が追い付いたので、頼む。
「二人とも、逆サイドに移動しながら攻撃!」
酸で溶けた装備にまみれて転がるシラヌイを見て、動きが止まったが、向こう側に動きながら、
「ファイアー・ボール!」
ムラヤマの声が響く。
アントの腹を焦がす。
銃声がして、マキタがメイジの前で撃っている。
そちらをアントが狙おう、とこっちがお留守になったので、もう一本の足を狙う。
同じ側の足二本を失って、アントは胸をついた。
「動きが鈍くなるはずだ。尻の方から、攻撃!」
三人で時計回りに回って、二人が尻、こちらは頭を過ぎて、顎が届かない首から胸、足を攻撃する。
魔法と銃弾が、容赦なく降り注ぎ、アントは向きを変えようと足掻くが、脚が足りなくて動けない。
蟻酸を吐ける範囲も限られているので、ダメージも受けない。
あの三人とだったら、どう戦っただろう?
メイジが魔法を使いすぎて、ヒット・ポイントの減りを嗜めることはあったが、被害なく倒すことができた。
バーが真っ黒になった。
「おい、助けんかい!」
転送石に向かおう、として怒鳴られた。
シラヌイのバーは、まだ二割以上残っている。
追加ダメージを心配して、戦闘を急いだのに、怒られるとは。
まあ、その間、痛かっただろうけど、と肩をすくめてると、また怒鳴られた。
「動けんのじゃ、助けんかい!」
ムラヤマとマキタがヒソヒソと、彼を罵っているのが聞こえてくる。
「聞こえてんやろ!」
「助けてください、じゃないかな?」
回復アイテムを使ってやったのに、シマムラは、唾を吐き、転送石に向かっていった。
「なんだろーなー、あの態度?」
「感じ悪いわよねー」
前のパーティーは、本当に恵まれていたな、とまた比べてしまう。
「ゴールド、どうしたらいいと思いますか?」
「あたしあたしも」
ステータスカードを見ながら、二人が聞いてきたので、
「メイジは、魔法使うのにヒット・ポイントが必要だから、まずはレベル上げ」
頷くシマムラ。
「ガンナーもまずはレベルだけど、どの銃を使うか、早めに決めるのがいいみたいだ。連射のマシンガン系か、高威力のライフルか」
「確かに、ライフル持って、そんなにレベル高くない人が野良で組んだわ、そういえば」
カムイもライフル買うゴールド貯めるために、レベルアップを抑えていたな。
「名前覚えてる?」
「えーとカムイ?」
ああ、彼女元気だったのか、でもこの街の野良パーティーに参加って、どうしたんだ?
「でも、あの人、すっごい嫌われてたわ」
嫌われている?
無口ではあったけど、変わった性格でもなかったように思う。
「どうしてか、わかんないけど?」
まあ、死んでいないだけ、よかったが。
急に黙り込んでしまって、不審な顔で見られたので、取り繕って、
「また組めたら、そのときは、よろしく」
「「こちらこそ!」」
アドバイスに礼を言って帰っていく二人。
俺は、ジャイアント・アントを倒した地で、龍鱗の剣を装備せずに、マキタもよくわからなかったカムイが嫌われている理由を考えていた。
必殺技のことは、黙っているつもりだったが、何かを隠していることはすぐにバレ、問い詰められた。
それでも惚けていたが、自分たちを信用していないのか、と言われ、ついに白状してしまった。
黙っていたことを責められもしたが、理解もしてくれた。
そして、龍鱗の剣は、装備しないように勧められた。
俺も、それが最善だ、と頭ではわかっていた。
ただ、ユウゾウの頭が飛ぶシーンが目に浮かぶ度、それがパーティーの誰かだったら、と思うと、手にせざるを得なかった。
呪いは解けているはずなのに、まるで呪いのアイテムだ。
装備から外せないし、捨てられもしない。
魔法を使った直後のミチルを守るために、必殺技を使って倒れ、彼女に殴られた翌日、俺はパーティーから抜けた。
それからは、別の街へ移り、ソロか野良パーティーでやっている。
「レベル拾弐ファイターのケイ。装備は初期装備のまま」
野良パーティーで龍鱗の剣を使う気はない。
この街では、固定のパーティーは少なく、ギルドがクエストごとに応募者でパーティーを組ませることが多かった。
「ムラヤマでレベル参メイジ。装備は初期装備」
茶髪でメガネの少年。。
「マキタ、レベル参ガンナーで、ボクも初期装備」
ショートカットの少女。
「なんや、初期装備、初期装備って、素人ばっかかいな」
小太りのメガネ青年。
胸元を覆う金属鎧をアンダーの上に着けている。
「ワイの名はシラヌイ。レベル拾参の盾持ちファイターや」
ぐるりと見渡し、
「しゃあないから、レベルが一番上のワイがリーダーするで。素人ども、ついてきいや」
ステータスカードに[YES][NO]の文字が浮かぶ。
パーティーを組まない、といったらどんな顔するかな、と意地悪なことを考えつつ、[YES]を選んだ。
両手に装備の重さが加わる。
「ガイドカーソルやで」
矢印の方向に、シラヌイが走り出す。
彼の盾は、ランドウのものより、かなり小さかった。
比べるな。
盾持ちのファイター、ガンナー、メイジという構成に動揺しているのだろうか。
「壁になるから、ついてきいや!」
作戦の指示にもなっていない。
仕方なく、走りだしながら、
「あー、メイジは後から来い。壁がヘイト集めたの見て魔法。ガンナーはメイジの前で攻撃。どっちもヘイトの集めすぎに気をつけろ」
二人より先行して問題ないので、スピードを上げて、シラヌイの後を追う。
ガイドカーソルが赤くなり、ジャイアント・アントの名前とバーが出た。
こいつは!
心臓が、ドクン!と跳ね上がったのは、走っているのが原因でないだろう。
真正面から肉薄するシラヌイが、口から吐いた蟻酸を吹きかけられ、転がった。
「あっつい、あっついでー!」
バーが残り四割程度に削れ、そこからもジリジリ、と下がる。
酸の効果で、追加ダメージを受けているようだ。
戦闘中は回復アイテムが使えないので、そのまま彼の脇を走り抜け、アントの脇に付き、足の関節を狙った。
太い針金を断ち切るような音がして、足が一本、中ほどから切れる。
咆哮を上げ、顎で襲ってくるが、スモール・シールドで、受け流し、逆に複眼に一撃入れた。
二人が追い付いたので、頼む。
「二人とも、逆サイドに移動しながら攻撃!」
酸で溶けた装備にまみれて転がるシラヌイを見て、動きが止まったが、向こう側に動きながら、
「ファイアー・ボール!」
ムラヤマの声が響く。
アントの腹を焦がす。
銃声がして、マキタがメイジの前で撃っている。
そちらをアントが狙おう、とこっちがお留守になったので、もう一本の足を狙う。
同じ側の足二本を失って、アントは胸をついた。
「動きが鈍くなるはずだ。尻の方から、攻撃!」
三人で時計回りに回って、二人が尻、こちらは頭を過ぎて、顎が届かない首から胸、足を攻撃する。
魔法と銃弾が、容赦なく降り注ぎ、アントは向きを変えようと足掻くが、脚が足りなくて動けない。
蟻酸を吐ける範囲も限られているので、ダメージも受けない。
あの三人とだったら、どう戦っただろう?
メイジが魔法を使いすぎて、ヒット・ポイントの減りを嗜めることはあったが、被害なく倒すことができた。
バーが真っ黒になった。
「おい、助けんかい!」
転送石に向かおう、として怒鳴られた。
シラヌイのバーは、まだ二割以上残っている。
追加ダメージを心配して、戦闘を急いだのに、怒られるとは。
まあ、その間、痛かっただろうけど、と肩をすくめてると、また怒鳴られた。
「動けんのじゃ、助けんかい!」
ムラヤマとマキタがヒソヒソと、彼を罵っているのが聞こえてくる。
「聞こえてんやろ!」
「助けてください、じゃないかな?」
回復アイテムを使ってやったのに、シマムラは、唾を吐き、転送石に向かっていった。
「なんだろーなー、あの態度?」
「感じ悪いわよねー」
前のパーティーは、本当に恵まれていたな、とまた比べてしまう。
「ゴールド、どうしたらいいと思いますか?」
「あたしあたしも」
ステータスカードを見ながら、二人が聞いてきたので、
「メイジは、魔法使うのにヒット・ポイントが必要だから、まずはレベル上げ」
頷くシマムラ。
「ガンナーもまずはレベルだけど、どの銃を使うか、早めに決めるのがいいみたいだ。連射のマシンガン系か、高威力のライフルか」
「確かに、ライフル持って、そんなにレベル高くない人が野良で組んだわ、そういえば」
カムイもライフル買うゴールド貯めるために、レベルアップを抑えていたな。
「名前覚えてる?」
「えーとカムイ?」
ああ、彼女元気だったのか、でもこの街の野良パーティーに参加って、どうしたんだ?
「でも、あの人、すっごい嫌われてたわ」
嫌われている?
無口ではあったけど、変わった性格でもなかったように思う。
「どうしてか、わかんないけど?」
まあ、死んでいないだけ、よかったが。
急に黙り込んでしまって、不審な顔で見られたので、取り繕って、
「また組めたら、そのときは、よろしく」
「「こちらこそ!」」
アドバイスに礼を言って帰っていく二人。
俺は、ジャイアント・アントを倒した地で、龍鱗の剣を装備せずに、マキタもよくわからなかったカムイが嫌われている理由を考えていた。
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