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番外編:冬
冬のヨガとスープ
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寒くなってきて思うのが、身体硬いな、だ。
決して元々、柔らかくはないのだけど、冬は、更に実感する。
だからといって、部屋でストレッチをしようものなら、ワザとらしく足の間をすり抜ける、手を噛む、背中に飛び乗る、などなど、白黒合体攻撃を受ける。
仰向けで、腹筋を伸ばそう、と腰を反らして伸びていたら、お腹に居座られてしまって温かいから、そのまま昼寝に突入したのは、内緒だ。
開店時間寸前まで寝てしまって、仕込みが済んでいたから良かったけど、危なかった。
そこで、ジムでやっている初心者向けヨガのレッスンに、参加してみることにした。
もちろん、九十九さんの格闘技系エクササイズを避けているわけではない。
「レッスンを担当するサエキです。よろしくお願いします」
三十代半ばだろう女性コーチの挨拶に、パチパチ、と盛大な拍手が起きる。
初ヨガなので、ノリがわからないのだけど、他のレッスンに比べたら、大きな拍手だ。
見まわしたら、男性が多い。
初ヨガなので、ノリがわからないのだけど、他のレッスンに比べたら、男女比率が男性寄りだ。
「ヨガ、初めての方、いらっしゃいますか?」
僕は、手を挙げた。
ここで、正直に申請していた方が、手加減してもらえるのは、経験で知っている。
いや、そうでもない場合もあったか。
「ありがとうございます。ポーズは、いくつか段階をおって、行います。できる方は、と言った先は、無理なさらないように、お願いします。ここまでできた、とご自分の身体を知ることもヨガの本質の一つです」
僕は、頷いた。
身体のために来ているのに、怪我をしては意味がない。
「それでは、胡坐、安座、長座、座りやすい座り方で、眼を閉じます」
マットの上で、背筋を伸ばして座っての呼吸から始まり、首や肩、背中のストレッチ。
始まってすぐに気がついたが、初参加は僕だけだったが、他もそんなにベテランではないようだ。
四つん這いで、背中を丸めたり、反らしたり。
手の脇に片足を出して、背中を丸めずに伸ばすのが、難しい。
「できる方は、後ろの足、膝を上げて伸ばして、骨盤から起こす。両足に均等に力を入れて、息を吸いながら、腕を頭の上。吐きながら腰ではなく、アバラを上に向けて広げて」
僕は、どこが初心者向けなんだー、と荒くなってしまう息の中、思った。
慣れない動きなので結構、疲れた。
「いかがでしたか?」
「身体硬いのが、実感できました」
サエキコーチに話かけられ、笑って答えたら、
「硬い方の方が、伸びしろがあるんですよ。急には変わらないですけど、続ければ変わります。よろしかったら、また来てくださいね」
礼を言ってスタジオを出る、と彼女は、男性陣に取り囲まれて、質問責めにあっていた。
ちょうど通りかかった百田さんに挨拶。
サエキコーチは、今月から来るようになったトレーナーで、男性客に大人気らしい。
ヨガは、男性の参加数が少なかったので、店長としては、嬉しいのだろう。
「サエキさんには感謝してます」
うん、それは、虎の尾を踏む発言だね。
額に、「朴念仁」と彫り込んだ方がいいかもしれない。
シャワーを浴びて帰る途中、談笑するサエキさんと百田さん。
そして、その脇を無表情に通る九十九さんに遭遇した。
僕は、肝が冷えたので、温かいものが欲しいな、とスーパーで商品を眺めていた。
実は、寒くなってきて、「看板猫がいるビア・バー」としては、ビールの売り上げと気温低下の関係に悩まずにはいられないのだ。
いくら僕だって、暖かい店内であっても、寒い外から来た直後に、「冷たい」ビールに躊躇する気持ちはわかる。
まして、どんどん寒くなっていくのだ。
そこで、何かいい方法はないかな、と思っていた。
甘い匂いがする。
焼き芋だ。
九十九さんは、ハイペースで呑んでいた。
廃ペース、と言ってもいいのかもしれない。
「よなよなエールをパイントですね。食べていないようですけど、おつまみは、いかがですか?」
「朴念仁につける薬があれば」
といった具合だ。
彼女が面白くない気持ちはわかる。
だけど、百田さんの店長としての気持ちもわかるのだ。
ヨガのレッスンを目当ての男性陣は、そのまま来客数の増加になる。
朴念仁なのは、確かだけど。
やってきた菊池さんにも絡んでいる。
まあ、「独身」女性の二人が仲いいのは、いつも通りだ。
『でも、好きな人に振り向いてもらえない気持ちは、よくわかるから!』
近くのテーブル席で、ちょっと深刻そそうに話していたお客様からの声に、九十九さんはクワっ、と振り向き、その女性客の肩をガッチリ抱いた。
「わかる、わかるよ、その気持ち!あの朴念仁が!」
慌てた菊池さんと二人で、
「すみません、すみません。お邪魔しました」
九十九さんを連れて行こうとしたら、
絡んだお客様のお連れの方が、呟いた。
「男って、鈍いよね?」
お店がシーン、と静まり返った。
「どうして、男って、あんなに鈍感になれるんだろう?それとも、気づいていて無視?」
そのお客様の目が座っていた。
「綺麗になろうって、辛いダイエットしているのは、誰のためにだと思ってるのよ!」
「か、カレンさん?」
「それは、男が悪い!」
九十九さんが、隣に座り、その手を握りしめた。
「そう思いますよね?」
握り返すお客様。
寒くなる、といろいろあるなあ、と思った。
でも、そこまで。
ビールは、楽しく呑んでこそ、だ。
僕は、手を強く二つ叩いた。
注目が集まったので、
「サービスで、温かいスープをお持ちしますね。お席でお待ちください」
我に返った九十九さんが、大人しく戻ってくれたのは助かった。
菊池さんが、呟いていた。
「片想いでも、出会えたんだから、良かったんじゃない?」
別アングルから、落ち込むの止めて。
サツマイモは、ゆっくり加熱する、とデンプンを糖に分解する酵素が長持ちするので、より甘くなる。
低温のオーブンで、じっくり時間をかけて焼いたサツマイモは、ねっとりほっこりの甘々だ。
皮を丁寧に取り除いて、鍋に牛乳と入れる。
皮は、今度パウンドケーキに使おう、と焦げを取り除いて冷凍しておく。
焼き芋は、柔らかくなっているので、簡単にほぐれて、溶けていく。
一回、濾して、塩で味を調えてできあがり。
そんな風に試作していたサツマイモのポタージュを温め直して、マグカップに注ぎ、黒胡椒とクルトンをパラパラと。
「お待たせしました。焼き芋のポタージュです。熱いので、お気をつけてくださいね」
二つのテーブルに、四つのマグカップを置いた。
「・・・甘い」
「・・・美味しい」
といった声が、お客様から漏れた。
落ち着いてくれたようだ。
「甘いものが食べたくなるね」
と聞こえたので、「本日のパウンドケーキは、プレーンと餡子生地のマーブルで抹茶チョコチップ入り。コーヒーは、エクアドル産ベースのブレンドです」と宣伝しておく。
本当は、このケーキは明日以降用なのだけど、まだリキュールを染みさせていない方が良さそうなので、こちらを出すことにする。
九十九さんが、ポタージュを啜りながら、
「取り乱して、ごめん」
と謝ってきたので、
「悪いのは、朴念仁ですから」
「好きな人を悪く言われるのは、ムカつく」
と酔いの残った表情で言われたので、僕は肩を竦めた。
「恋煩いに効く薬です」
一枚の紙を渡す。
「これ、来年の?」
昼間、百田さんに挨拶したときに、来年のレッスンをどう組むかで、軽く希望を聞かれたのだ。
平日昼間組の僕に、ご常連の高齢の方々寄りなレッスンにしてしまっていいか、聞くぐらいには、悩んでいるようだ。
「ダンス系のレッスンを増やしてみたいらしいんですが、できるコーチがいなくて、困っているらしいですよ?」
「そうなの?」
やはり、彼女には話していなかったか。
まあ、まだ日が浅い九十九さんに、相談するような性格じゃないよね、彼は。
でも、僕経由で話を伝えようとしたとしたら、意外と策士なのか?
「ダンスいいなあ。やってみたいかも」
菊池さんは、運動会の暗黒舞踏の二の舞になるから、やめておこうね。
「ダンスか」
空になったマグカップの底を見つめながら、
「攻めるよ」
格闘技系エクササイズを教えるときの戦士の目になって言った。
「集客も、ハートも掴んでみせる」
恋する乙女の顔は、これが本質なのかな、と思った。
早速、研修を受けて、ダンスのレッスンを行えるようになった九十九さんは、祝日プログラムでデヴューした。
そのキレッキレのダンスは、カッコイイと絶賛で、女性客の人気を呼んだ。
一番、得をしたのは、新な集客の柱を得た、百田さんかもしれない。
ただ、九十九さんの話を菊池さん経由で聞いた、百田さんの妹、千秋さんから、後日。
額に「朴念仁」とマジックで太々、と書かれた百田さんの寝顔写真が送られてきた。
妹の企みで、アラームが止められたため、遅刻寸前で起こされた彼は気づかず、そのまま出勤したらしい。
「最初の一杯に、温かい日替わりスープのサービス始めました」
--------------------------------------------------------------------
番外編の解説(作者の気まぐれ自己満足と忘備録的な)
「冬の」とあったら(以下略)
はい、冬です。
(開き直った?)
(修飾語すらないの?)
(スポーツのとか、食欲のとか、飽きたでしょ?)
(そう思ったら、それ以外書こうよ?)
元々は、ビールのお店が、冬場の敷居を下げるための暖かいスープのサービス開始のお話でした。
が、食物ネタが続いているの、とちょっと短くなりそうだな、と書くのを躊躇していました。
ところ、「恋愛で痩せますか?いいえ痩せるなら××運動です」の「09:リバウンド、どうする?」で、このお店でのシーンを書いたところ、共感した九十九さんが乱入してきまして、それに連動させよう、となったお話です。
(人気ない作品同士でコラボとか意味あるの?)
(別作品で、ちょっとクロスオーバーするの好きなんだもん)
(まあ、魔境遊撃隊の豹頭像で、感動してたものな)
そうなる、と九十九さんが乱入したくなる原因。
まあ、ライバル(と彼女が思い込む)女性の出現かな。
どんな人だろうか?
あ、いいキャラがいる、とできたお話です。
(でも、結局、食物とジムばっかりだな)
(減量期のストレスぶつけてるだけだろ?)
(いいキャラがいるとか、思わせぶりだな?)
(まあ、そういう仕掛けも楽しんでもらいたいじゃない?)
落ち着かせるための飲み物が、「恋愛で~」では当初、コーヒーだったのですが、ここにスープが割り込んできて、なんとなくまとまった感じです。
(まとまったか?)
(スープネタ、欠片だな?)
(小ネタだから、書くの躊躇してたって言ったでしょ?)
というか、番外編で、また新キャラ出して大丈夫か、って気もしますが。
まあ、そもそも続くかどうかがわからないのが、番外編の醍醐味ですよね?
また、機会がありましたら、このお店にお付き合いくださいませ。
(食物とジムばっかりだな?)
(番外編だからねえ)
(番外編って言えば、許されると思ってるだろ?)
(うん)
(そこは、否定しようよ?)
(じゃあ、次はそれ以外で)
(そんな縛りしたら、書けなくなるだろ?)
(え?)
(え?)
まみ夜
決して元々、柔らかくはないのだけど、冬は、更に実感する。
だからといって、部屋でストレッチをしようものなら、ワザとらしく足の間をすり抜ける、手を噛む、背中に飛び乗る、などなど、白黒合体攻撃を受ける。
仰向けで、腹筋を伸ばそう、と腰を反らして伸びていたら、お腹に居座られてしまって温かいから、そのまま昼寝に突入したのは、内緒だ。
開店時間寸前まで寝てしまって、仕込みが済んでいたから良かったけど、危なかった。
そこで、ジムでやっている初心者向けヨガのレッスンに、参加してみることにした。
もちろん、九十九さんの格闘技系エクササイズを避けているわけではない。
「レッスンを担当するサエキです。よろしくお願いします」
三十代半ばだろう女性コーチの挨拶に、パチパチ、と盛大な拍手が起きる。
初ヨガなので、ノリがわからないのだけど、他のレッスンに比べたら、大きな拍手だ。
見まわしたら、男性が多い。
初ヨガなので、ノリがわからないのだけど、他のレッスンに比べたら、男女比率が男性寄りだ。
「ヨガ、初めての方、いらっしゃいますか?」
僕は、手を挙げた。
ここで、正直に申請していた方が、手加減してもらえるのは、経験で知っている。
いや、そうでもない場合もあったか。
「ありがとうございます。ポーズは、いくつか段階をおって、行います。できる方は、と言った先は、無理なさらないように、お願いします。ここまでできた、とご自分の身体を知ることもヨガの本質の一つです」
僕は、頷いた。
身体のために来ているのに、怪我をしては意味がない。
「それでは、胡坐、安座、長座、座りやすい座り方で、眼を閉じます」
マットの上で、背筋を伸ばして座っての呼吸から始まり、首や肩、背中のストレッチ。
始まってすぐに気がついたが、初参加は僕だけだったが、他もそんなにベテランではないようだ。
四つん這いで、背中を丸めたり、反らしたり。
手の脇に片足を出して、背中を丸めずに伸ばすのが、難しい。
「できる方は、後ろの足、膝を上げて伸ばして、骨盤から起こす。両足に均等に力を入れて、息を吸いながら、腕を頭の上。吐きながら腰ではなく、アバラを上に向けて広げて」
僕は、どこが初心者向けなんだー、と荒くなってしまう息の中、思った。
慣れない動きなので結構、疲れた。
「いかがでしたか?」
「身体硬いのが、実感できました」
サエキコーチに話かけられ、笑って答えたら、
「硬い方の方が、伸びしろがあるんですよ。急には変わらないですけど、続ければ変わります。よろしかったら、また来てくださいね」
礼を言ってスタジオを出る、と彼女は、男性陣に取り囲まれて、質問責めにあっていた。
ちょうど通りかかった百田さんに挨拶。
サエキコーチは、今月から来るようになったトレーナーで、男性客に大人気らしい。
ヨガは、男性の参加数が少なかったので、店長としては、嬉しいのだろう。
「サエキさんには感謝してます」
うん、それは、虎の尾を踏む発言だね。
額に、「朴念仁」と彫り込んだ方がいいかもしれない。
シャワーを浴びて帰る途中、談笑するサエキさんと百田さん。
そして、その脇を無表情に通る九十九さんに遭遇した。
僕は、肝が冷えたので、温かいものが欲しいな、とスーパーで商品を眺めていた。
実は、寒くなってきて、「看板猫がいるビア・バー」としては、ビールの売り上げと気温低下の関係に悩まずにはいられないのだ。
いくら僕だって、暖かい店内であっても、寒い外から来た直後に、「冷たい」ビールに躊躇する気持ちはわかる。
まして、どんどん寒くなっていくのだ。
そこで、何かいい方法はないかな、と思っていた。
甘い匂いがする。
焼き芋だ。
九十九さんは、ハイペースで呑んでいた。
廃ペース、と言ってもいいのかもしれない。
「よなよなエールをパイントですね。食べていないようですけど、おつまみは、いかがですか?」
「朴念仁につける薬があれば」
といった具合だ。
彼女が面白くない気持ちはわかる。
だけど、百田さんの店長としての気持ちもわかるのだ。
ヨガのレッスンを目当ての男性陣は、そのまま来客数の増加になる。
朴念仁なのは、確かだけど。
やってきた菊池さんにも絡んでいる。
まあ、「独身」女性の二人が仲いいのは、いつも通りだ。
『でも、好きな人に振り向いてもらえない気持ちは、よくわかるから!』
近くのテーブル席で、ちょっと深刻そそうに話していたお客様からの声に、九十九さんはクワっ、と振り向き、その女性客の肩をガッチリ抱いた。
「わかる、わかるよ、その気持ち!あの朴念仁が!」
慌てた菊池さんと二人で、
「すみません、すみません。お邪魔しました」
九十九さんを連れて行こうとしたら、
絡んだお客様のお連れの方が、呟いた。
「男って、鈍いよね?」
お店がシーン、と静まり返った。
「どうして、男って、あんなに鈍感になれるんだろう?それとも、気づいていて無視?」
そのお客様の目が座っていた。
「綺麗になろうって、辛いダイエットしているのは、誰のためにだと思ってるのよ!」
「か、カレンさん?」
「それは、男が悪い!」
九十九さんが、隣に座り、その手を握りしめた。
「そう思いますよね?」
握り返すお客様。
寒くなる、といろいろあるなあ、と思った。
でも、そこまで。
ビールは、楽しく呑んでこそ、だ。
僕は、手を強く二つ叩いた。
注目が集まったので、
「サービスで、温かいスープをお持ちしますね。お席でお待ちください」
我に返った九十九さんが、大人しく戻ってくれたのは助かった。
菊池さんが、呟いていた。
「片想いでも、出会えたんだから、良かったんじゃない?」
別アングルから、落ち込むの止めて。
サツマイモは、ゆっくり加熱する、とデンプンを糖に分解する酵素が長持ちするので、より甘くなる。
低温のオーブンで、じっくり時間をかけて焼いたサツマイモは、ねっとりほっこりの甘々だ。
皮を丁寧に取り除いて、鍋に牛乳と入れる。
皮は、今度パウンドケーキに使おう、と焦げを取り除いて冷凍しておく。
焼き芋は、柔らかくなっているので、簡単にほぐれて、溶けていく。
一回、濾して、塩で味を調えてできあがり。
そんな風に試作していたサツマイモのポタージュを温め直して、マグカップに注ぎ、黒胡椒とクルトンをパラパラと。
「お待たせしました。焼き芋のポタージュです。熱いので、お気をつけてくださいね」
二つのテーブルに、四つのマグカップを置いた。
「・・・甘い」
「・・・美味しい」
といった声が、お客様から漏れた。
落ち着いてくれたようだ。
「甘いものが食べたくなるね」
と聞こえたので、「本日のパウンドケーキは、プレーンと餡子生地のマーブルで抹茶チョコチップ入り。コーヒーは、エクアドル産ベースのブレンドです」と宣伝しておく。
本当は、このケーキは明日以降用なのだけど、まだリキュールを染みさせていない方が良さそうなので、こちらを出すことにする。
九十九さんが、ポタージュを啜りながら、
「取り乱して、ごめん」
と謝ってきたので、
「悪いのは、朴念仁ですから」
「好きな人を悪く言われるのは、ムカつく」
と酔いの残った表情で言われたので、僕は肩を竦めた。
「恋煩いに効く薬です」
一枚の紙を渡す。
「これ、来年の?」
昼間、百田さんに挨拶したときに、来年のレッスンをどう組むかで、軽く希望を聞かれたのだ。
平日昼間組の僕に、ご常連の高齢の方々寄りなレッスンにしてしまっていいか、聞くぐらいには、悩んでいるようだ。
「ダンス系のレッスンを増やしてみたいらしいんですが、できるコーチがいなくて、困っているらしいですよ?」
「そうなの?」
やはり、彼女には話していなかったか。
まあ、まだ日が浅い九十九さんに、相談するような性格じゃないよね、彼は。
でも、僕経由で話を伝えようとしたとしたら、意外と策士なのか?
「ダンスいいなあ。やってみたいかも」
菊池さんは、運動会の暗黒舞踏の二の舞になるから、やめておこうね。
「ダンスか」
空になったマグカップの底を見つめながら、
「攻めるよ」
格闘技系エクササイズを教えるときの戦士の目になって言った。
「集客も、ハートも掴んでみせる」
恋する乙女の顔は、これが本質なのかな、と思った。
早速、研修を受けて、ダンスのレッスンを行えるようになった九十九さんは、祝日プログラムでデヴューした。
そのキレッキレのダンスは、カッコイイと絶賛で、女性客の人気を呼んだ。
一番、得をしたのは、新な集客の柱を得た、百田さんかもしれない。
ただ、九十九さんの話を菊池さん経由で聞いた、百田さんの妹、千秋さんから、後日。
額に「朴念仁」とマジックで太々、と書かれた百田さんの寝顔写真が送られてきた。
妹の企みで、アラームが止められたため、遅刻寸前で起こされた彼は気づかず、そのまま出勤したらしい。
「最初の一杯に、温かい日替わりスープのサービス始めました」
--------------------------------------------------------------------
番外編の解説(作者の気まぐれ自己満足と忘備録的な)
「冬の」とあったら(以下略)
はい、冬です。
(開き直った?)
(修飾語すらないの?)
(スポーツのとか、食欲のとか、飽きたでしょ?)
(そう思ったら、それ以外書こうよ?)
元々は、ビールのお店が、冬場の敷居を下げるための暖かいスープのサービス開始のお話でした。
が、食物ネタが続いているの、とちょっと短くなりそうだな、と書くのを躊躇していました。
ところ、「恋愛で痩せますか?いいえ痩せるなら××運動です」の「09:リバウンド、どうする?」で、このお店でのシーンを書いたところ、共感した九十九さんが乱入してきまして、それに連動させよう、となったお話です。
(人気ない作品同士でコラボとか意味あるの?)
(別作品で、ちょっとクロスオーバーするの好きなんだもん)
(まあ、魔境遊撃隊の豹頭像で、感動してたものな)
そうなる、と九十九さんが乱入したくなる原因。
まあ、ライバル(と彼女が思い込む)女性の出現かな。
どんな人だろうか?
あ、いいキャラがいる、とできたお話です。
(でも、結局、食物とジムばっかりだな)
(減量期のストレスぶつけてるだけだろ?)
(いいキャラがいるとか、思わせぶりだな?)
(まあ、そういう仕掛けも楽しんでもらいたいじゃない?)
落ち着かせるための飲み物が、「恋愛で~」では当初、コーヒーだったのですが、ここにスープが割り込んできて、なんとなくまとまった感じです。
(まとまったか?)
(スープネタ、欠片だな?)
(小ネタだから、書くの躊躇してたって言ったでしょ?)
というか、番外編で、また新キャラ出して大丈夫か、って気もしますが。
まあ、そもそも続くかどうかがわからないのが、番外編の醍醐味ですよね?
また、機会がありましたら、このお店にお付き合いくださいませ。
(食物とジムばっかりだな?)
(番外編だからねえ)
(番外編って言えば、許されると思ってるだろ?)
(うん)
(そこは、否定しようよ?)
(じゃあ、次はそれ以外で)
(そんな縛りしたら、書けなくなるだろ?)
(え?)
(え?)
まみ夜
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