【完結】cat typing ~猫と麦酒~第10回ドリーム小説大賞奨励賞

まみ夜

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連合、まで

揚げ物

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 よくある定番のつまみで好きなのは、唐揚げだ。
 本当に美味しい唐揚げに出会う、と本当に嬉しい。
 唐揚げも竜田揚げも、フライドチキンも好きだ。
 子供のころは、居酒屋に連れていってもらい、注文のたびに、「これ唐揚げなのに片栗粉?」と聞く、迷惑で嫌なガキだったが。
 ただ、自分の店で出す、となると問題なのは、揚げる時間だ。
 ビール、他のつまみの注文などが入ったら、対応できるか。
 更に、たくさんの注文があったら、提供に時間がかかりすぎる。
 無理かなあ。
 でも、熱々に噛り付いて食べて、ビールって、格別だからなあ。
 肉を小さくすれば、まだ可能?
 揚げ時間に差があると難しいから、チューリップのみ?
 うーん。

 なんてことを、オヤジに話したところ。
「ちょい揚げなら、提供の問題は少ないな」
 ちょい揚げ?
「知らないのか?」
 「やれやれ」と首を振る。
(本当に、この仕草は、ムカつく)
 簡単に説明してしまえば、加熱済みの食材の揚げ物。
 その味は、簡単には説明できず、あまり揚げ物として提供されない品もあり、奥深いらしい。
 これは、一度食べてみなければ。
 
 店に入る前に、ごま油の匂いがしなかった。
 大阪風なのだろうか。
 店に入ると、「らっしゃい!」と景気いい声がした。
 ランチが十五時まで食べられるので、やってきていた。
 昼食には、遅い時間だというのに、カウンターだけの店は、混んでいた。
「なんにします?」
「ランチの定食の方と、生ビールお願いします」
 午後二時過ぎとはいえ、平日の昼間だ、スーツ姿の方々の視線が痛いが、仕方ない。
 これも、つまみのメニュー開発のためで、仕方ないのです。
「あいよ!」
 早速きた生ビールで口を湿らせている、とカウンターに紙を置いた皿が置かれた。
「野菜四種類に、アナゴ、肉の後、かき揚げ丼になります」
 うんうん。
「揚がった順番に、置いていきますよ」
 ご飯物はかき揚げ丼だから、天ぷらを食べてしまっても、いいのか。
「はい、竹の子。ウチ天汁ないから、味足りなかったら、塩使って」
 早い!
 さすが、ちょい揚げだ。
「いただきます」
 猫舌なので、慎重にフーフーして、齧る。
 旬じゃないなあ、と思ったが、シャキシャキとして、出汁が香る。
 かつお節で炊いた竹の子を、さっと天ぷらにしてある。
 生の竹の子ではなく、炊いてあるからこそだ。
 もう加熱済みだから、高温で短時間で揚げてあるので、サクサクしゃきしゃきだ。
「はい、さといも。中熱いからね」
 小ぶりなので、ふたつのうち、ひとつを一口で、熱っ。
 ビールで冷やす。
 ネットリした舌触り。
 生から揚げたら、ありえない天ぷらだ。
 もう一つは、ちょっと塩をふって。
 ビールが、グビグビ進む。
「はい、大根。味噌ダレ使うのもいいよ」
 えーと、大根?
 しかも、細切りではなく、オデンのような分厚い輪切りだ。
「揚げていいんですか?」
 水分が多くて、危なそうだ。
 職人の超絶テクニックなのか?
「特殊なフライヤー使ってるんですよ。家でやっちゃダメですぜ」
 まさかの、文明の利器!?
 しかも、良い子は真似しちゃダメ付きだ。
 なんでも、電波振動をつかって、水気が跳ねない仕組みらしい。
 柔らかい大根なのに、サクサク食感。
 出汁でオデンの味なのに、オデンじゃない食感なのだ。
 味噌ダレをつけてみる。
 柚子味噌で、風呂吹き大根なのに、サクサクなのだ。
 すでに、ビールは、一杯目ではない。
 というかこれ、ランチでビール飲まずにガマンできるのか?
 他のお客様を盗み見る、ともうひとつのランチメニュー、天丼を食べていた。
 確かに、ビール呑めないのなら、丼一択だ。
 それでもツライが。
 そこでビール呑んでたら、殺気が出ても仕方がない。
「はい、椎茸。甘く煮てるから、塩はいらないよ」
 これで野菜は最後だから、箸休めにいい。
 ビールが、グビグビ進む。
「はい、アナゴ。ワサビも試してみて」
 ふっくらと煮られたアナゴが、美味しい。
 ふっくら、ふわふわなのに、サクサクなのだ。
 ワサビも合う。
 ビールが、グビグビ進む。
「かき揚げ丼の前の最後の牛タンのカツね。デミグラスソースも使ってみて」
 天ぷらに比べて、カツはサクサク感が強い。
 そして、その中身は、とろとろにデミグラスソースで煮られた分厚い牛タン。
 聞き飽きてきただろうが、とろとろサクサクなのだ。
 ビールが、グビグビ進む。
「かき揚げ丼だけど、二種類のどっち?」
 なんですと?
「今日は、肉ジャガか、エビとイカのチリ煮だよ」
 選べと?
「料金追加でもいいので、両方ってできないんですか?」
 店主は、ニヤリと笑い、
「しょうがないねえ。半分ので、両方つくってやるよ」
「いや、それは申し訳ないです」
「いやいや、バランスだよ、バランス。丼二杯だと、腹にキツイ。なら小ぶりにつくるよ」
「ありがとうございます」
 もう茶碗が置かれた。
「まずは肉ジャガの方」
 続けて、少鍋で更に、かき揚げを揚げだす。
 チリを使った具材は、油に匂いがつくからか、別に揚げるようだ。
 まずは、目の前の茶碗からだ。
 甘いジャガイモ、肉は牛スジのようだ。
 これに、タマネギの端がカリカリしているかき揚げ。
 飯に合わないわけがない。
 揚げ物が続いているのに、飽きない。
「はいよ、エビとイカのチリ煮」
 辛いが、旨味が強い。
 エビとイカは、かき揚げの定番なのに、まったく違うのだ。
 飯に合う。
 ビールを呑み干した。
 はふうぅぅぅぅ、っと息をつく。
 まだ、かき揚げ丼は、両方とも半分残ってる。
 顏を上げる、と店主が、ニヤニヤしていた。
「出汁か、中華スープをかける、天茶って手もあるんだが」
「生ビール、もう一杯ください」
 さて、丼二種類にかけ汁二種類、どの組み合わせから食べるのが正解ルートか、攻略法を考えなければ。
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