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09,10&11:リバウンド、どうする?
Bパート
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佐伯先輩お気に入りの看板猫がいるお店に、初めて二人だけで来た。
初めて、といえば、お昼も香恋さんとの二人は、なかった。
それは、あたしが避けたせいだ。
大好きな香恋さんと二人きりだなんて、ボロを出してしまいそうだったから。
今日の日替わりお料理は、甘い卵焼きを薄焼きにして、軽く塩味をつけたご飯を幾重かに巻いた手毬寿司だった。
四つセットで、胡麻が乗った二つは、ご飯が味ナシの代わりに塩漬けの薄切りレンコンが混ざっていて、食感が違って、塩味も濃淡があってよかった。
甘い卵焼き好きの佐伯先輩がいたら、喜んだだろう。
いや、薄焼きだと違うのだろうか。
彼の食の好き嫌いは、ルールがよくわからない。
香恋さんなら、それも素敵だ、と思うのだろうが。
お互い、昨日のことを引きずっているので、あまり話も弾まず、お店が、静かにしていてもいい雰囲気なので、無理に話さずにいた。
クッション脇についていた手に、黒猫が近づいて、指先の匂いを嗅いでいた。
ゆっくり、指を動かしたら、逃げないので、鼻についた。
冷たい。
香恋さんが、ちょっと羨ましそうに見ているけど、その側に白猫が近寄っているのに気がついていないのが、カワイイ。
四人で来て、わいわいしたのも楽しかったけど、見渡してみれば、一人で来ている女性客もいる。
ちょっと、カッコイイな。
基本セルフサービスで、カウンターに注文にいくスタイルなので、お店の人も干渉してこず、かといって話かければ、手が空いていれば話相手にもなってくれるようで、居心地がいい。
今まで、佐伯先輩に連れてこられるばかりだったけど、いいお店だ。
たとえ、失恋記念の場所になっても。
「あ、あの、好き、です」
「え、あ、ありがとう」
唐突な、あたしからの告白に、香恋さんは 戸惑ったように礼を言い、少し首を傾げて、聞いてきた。
「人として、尊敬してくれてる、的なこと、だよね?」
あたしは、香恋さんの目を見据えて、誤解がないように答えた。
「性的に、です」
香恋さんが固まったので、つい余計なことを言い添えてしまう。
「安心して、ください。あたし処女なので」
「え、ええ。え?えーーーー?」
もっと固めてしまった。
呑まずにやってられないので、フリーズしている隙にビールを買ってきて、グビグビ呑みながら、自分の性癖や恋愛遍歴について話した。
そして、香恋さんが好きなこと、だからこそ、佐伯先輩との仲を応援したかったことも喋った。
難しい顔をして聞いていた香恋さんだったが、嫌悪感はなさそうなのが、唯一の救いだった。
でも、ダイエットで倒れてしまったことへも謝罪したら、遮られた。
「倒れたのは、無茶な断食したせいだから。山崎さんのせいじゃないよ、絶対」
「でも、好きな人に振り向いてもらえない気持ちは、よくわかるから!」
つい、大きな声で言ってしまったら、肩を誰かにガッチリ抱かれた。
「わかる、わかるよ、その気持ち!あの朴念仁が!」
見たら、一人で呑んでいた女性客だった。
いつの間にか合流していたらしい、もう一人の女性とお店の人が、
「すみません、すみません。お邪魔しました」
彼女を連れて行こう、とするところに、香恋さんが、呟いた。
「男って、鈍いよね?」
お店がシーン、と静まり返った。
「どうして、男って、あんなに鈍感になれるんだろう?それとも、気づいていて無視?」
リバウンドしたから、あまり食べないで呑んだせいか、香恋さんの目が座っていた。
「綺麗になろうって、辛いダイエットしているのは、誰のためにだと思ってるのよ!」
「か、香恋、さん?」
「それは、男が悪い!」
さっき、あたしの肩を抱いた女性客が、香恋さんの隣に座り、その手を握りしめた。
「そう思いますよね?」
握り返す香恋さん。
なにそれ、羨ましい。
それは、あたしのだ。
パンパン、と手を叩く音が、鋭く響いた。
そこには、お店の人が立っていた。
「サービスで、温かいスープをお持ちしますね。お席でお待ちください」
にこやかだが、有無を言わせないその表情に、女性客は香恋さんの手を放して、戻っていった。
その連れが呟いた言葉が、印象的だった。
「片想いでも、出会えたんだから、良かったんじゃない?」
スープを飲んで一息ついた後、酔い覚ましにコーヒーも飲み、ついでにパウンドケーキも食べて、落ち着いたあたしたちは、お店を出た。
ちなみに、ケーキは餡子の味がする茶色い生地がマーブル状に混ざって、抹茶チョコチップ入りだった。
二人で、駅まで歩きながら、あたしは、いろいろ考えていたら、手を握られた。
香恋さんが立ち止まり、あたしも止まった。
両手を握られ、
「好きになってくれて、ありがとう。でもごめん」
香恋さんが、握った手に額をつけた。
「私、やっぱり佐伯さんが好き」
額を手に、強く押し付けながら、
「だから、ごめん」
「あー、フラれちゃいました」
お道化て言ったら、顔を上げ、
「うん。振った。他にもっと好きな人がいるから振った。ごめん」
なんだかストン、と佐伯先輩に負けたことが、腑に落ちた。
これは、拒否ではなくて、失恋なのだ。
「あー、本当に、フラれちゃいました」
「本当にごめん、でも」
香恋さんは、手を放し、一歩下がって、頭を下げる、と片手を伸ばして言った。
「お友達になってください!」
あたしはポカン、とその手を見ていた。
「今日、ちゃんと山崎さんのことを知った気がする。だから、お友達になってください!」
香恋さんが、更に頭を下げる。
カワイイ人だ。
なんて、カワイイ人なんだろう。
あたしは、こんな人を好きになれたんだ。
凄いんじゃないか、あたし?
「萌って呼んで、ください」
「じゃあ、今日みたいな敬語は、止めて。萌ちゃん」
こんなに素敵な香恋さんの魅力がわからない佐伯先輩に、思い知らせてやる。
それが、この失恋の落とし前だ。
「友達になって」
香恋さんの手を取った路上は、彼女との失恋記念でもあり、友達記念の場所にもなった。
初めて、といえば、お昼も香恋さんとの二人は、なかった。
それは、あたしが避けたせいだ。
大好きな香恋さんと二人きりだなんて、ボロを出してしまいそうだったから。
今日の日替わりお料理は、甘い卵焼きを薄焼きにして、軽く塩味をつけたご飯を幾重かに巻いた手毬寿司だった。
四つセットで、胡麻が乗った二つは、ご飯が味ナシの代わりに塩漬けの薄切りレンコンが混ざっていて、食感が違って、塩味も濃淡があってよかった。
甘い卵焼き好きの佐伯先輩がいたら、喜んだだろう。
いや、薄焼きだと違うのだろうか。
彼の食の好き嫌いは、ルールがよくわからない。
香恋さんなら、それも素敵だ、と思うのだろうが。
お互い、昨日のことを引きずっているので、あまり話も弾まず、お店が、静かにしていてもいい雰囲気なので、無理に話さずにいた。
クッション脇についていた手に、黒猫が近づいて、指先の匂いを嗅いでいた。
ゆっくり、指を動かしたら、逃げないので、鼻についた。
冷たい。
香恋さんが、ちょっと羨ましそうに見ているけど、その側に白猫が近寄っているのに気がついていないのが、カワイイ。
四人で来て、わいわいしたのも楽しかったけど、見渡してみれば、一人で来ている女性客もいる。
ちょっと、カッコイイな。
基本セルフサービスで、カウンターに注文にいくスタイルなので、お店の人も干渉してこず、かといって話かければ、手が空いていれば話相手にもなってくれるようで、居心地がいい。
今まで、佐伯先輩に連れてこられるばかりだったけど、いいお店だ。
たとえ、失恋記念の場所になっても。
「あ、あの、好き、です」
「え、あ、ありがとう」
唐突な、あたしからの告白に、香恋さんは 戸惑ったように礼を言い、少し首を傾げて、聞いてきた。
「人として、尊敬してくれてる、的なこと、だよね?」
あたしは、香恋さんの目を見据えて、誤解がないように答えた。
「性的に、です」
香恋さんが固まったので、つい余計なことを言い添えてしまう。
「安心して、ください。あたし処女なので」
「え、ええ。え?えーーーー?」
もっと固めてしまった。
呑まずにやってられないので、フリーズしている隙にビールを買ってきて、グビグビ呑みながら、自分の性癖や恋愛遍歴について話した。
そして、香恋さんが好きなこと、だからこそ、佐伯先輩との仲を応援したかったことも喋った。
難しい顔をして聞いていた香恋さんだったが、嫌悪感はなさそうなのが、唯一の救いだった。
でも、ダイエットで倒れてしまったことへも謝罪したら、遮られた。
「倒れたのは、無茶な断食したせいだから。山崎さんのせいじゃないよ、絶対」
「でも、好きな人に振り向いてもらえない気持ちは、よくわかるから!」
つい、大きな声で言ってしまったら、肩を誰かにガッチリ抱かれた。
「わかる、わかるよ、その気持ち!あの朴念仁が!」
見たら、一人で呑んでいた女性客だった。
いつの間にか合流していたらしい、もう一人の女性とお店の人が、
「すみません、すみません。お邪魔しました」
彼女を連れて行こう、とするところに、香恋さんが、呟いた。
「男って、鈍いよね?」
お店がシーン、と静まり返った。
「どうして、男って、あんなに鈍感になれるんだろう?それとも、気づいていて無視?」
リバウンドしたから、あまり食べないで呑んだせいか、香恋さんの目が座っていた。
「綺麗になろうって、辛いダイエットしているのは、誰のためにだと思ってるのよ!」
「か、香恋、さん?」
「それは、男が悪い!」
さっき、あたしの肩を抱いた女性客が、香恋さんの隣に座り、その手を握りしめた。
「そう思いますよね?」
握り返す香恋さん。
なにそれ、羨ましい。
それは、あたしのだ。
パンパン、と手を叩く音が、鋭く響いた。
そこには、お店の人が立っていた。
「サービスで、温かいスープをお持ちしますね。お席でお待ちください」
にこやかだが、有無を言わせないその表情に、女性客は香恋さんの手を放して、戻っていった。
その連れが呟いた言葉が、印象的だった。
「片想いでも、出会えたんだから、良かったんじゃない?」
スープを飲んで一息ついた後、酔い覚ましにコーヒーも飲み、ついでにパウンドケーキも食べて、落ち着いたあたしたちは、お店を出た。
ちなみに、ケーキは餡子の味がする茶色い生地がマーブル状に混ざって、抹茶チョコチップ入りだった。
二人で、駅まで歩きながら、あたしは、いろいろ考えていたら、手を握られた。
香恋さんが立ち止まり、あたしも止まった。
両手を握られ、
「好きになってくれて、ありがとう。でもごめん」
香恋さんが、握った手に額をつけた。
「私、やっぱり佐伯さんが好き」
額を手に、強く押し付けながら、
「だから、ごめん」
「あー、フラれちゃいました」
お道化て言ったら、顔を上げ、
「うん。振った。他にもっと好きな人がいるから振った。ごめん」
なんだかストン、と佐伯先輩に負けたことが、腑に落ちた。
これは、拒否ではなくて、失恋なのだ。
「あー、本当に、フラれちゃいました」
「本当にごめん、でも」
香恋さんは、手を放し、一歩下がって、頭を下げる、と片手を伸ばして言った。
「お友達になってください!」
あたしはポカン、とその手を見ていた。
「今日、ちゃんと山崎さんのことを知った気がする。だから、お友達になってください!」
香恋さんが、更に頭を下げる。
カワイイ人だ。
なんて、カワイイ人なんだろう。
あたしは、こんな人を好きになれたんだ。
凄いんじゃないか、あたし?
「萌って呼んで、ください」
「じゃあ、今日みたいな敬語は、止めて。萌ちゃん」
こんなに素敵な香恋さんの魅力がわからない佐伯先輩に、思い知らせてやる。
それが、この失恋の落とし前だ。
「友達になって」
香恋さんの手を取った路上は、彼女との失恋記念でもあり、友達記念の場所にもなった。
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