私のおウチ様がチートすぎる!!

トール

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第一章

2. チートなお家様

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私の唯一のスキル、『家召喚』を試してみたのだが、

「畑と果物の木が付いてるなんて!! “家召喚”すごいっ」

鬱蒼とした森の中に一人放置され、不安でいっぱいだったが、何とかなりそうだとひと息吐いてから、じっくりと観察する。

小屋の前にまずは畑を見てみようか。運の良い事に、何か植えられているようだし、生きていくためには食料は大事。

「キャベツ、玉ねぎ、ジャガイモ……」

良かった。知っている植物が生っているようでひと安心だ。
畑のそばにはリンゴの木。大きな赤い実が沢山生っていた。

当分の間、食料に困ることはなさそうである。

「よし。次は小屋だ」

見た目は木で出来たシンプルな四角い小屋。
大きな窓があり、そこから畑に出入りする事も出来るようだ。

「へぇ、きちんと玄関もあるんだなぁ。意外と立派」

小屋の周りを一周し、いよいよ中へ入る。

玄関を開けると、一人暮らし用のアパートのような、小さな靴置き場。顔を上げると、12畳ほどのフローリングのワンルームに極小キッチンと……、トイレだろうか、中折れドアが1つある。

靴を脱いでまず、中折れドアを開けると、やっぱりトイレ。そして同室にシャワールーム。浴槽が無いのは残念だが、シャンプー、コンディショナー、ボディソープがあったので嬉しくなった。
トイレットペーパーもちゃんとあるようでホッと息を吐く。

次にキッチンへ移動する。
小さな流しにカセットコンロが一つ。嬉しい事に、砂糖、塩、醤油、味噌、胡椒と日常使いする調味料が置かれているではないか!!

あ、食器用洗剤とスポンジもある。

さらに吊り戸棚にはパン皿、深皿、どんぶり、お茶碗、お椀、箸、スプーン、フォーク、マグカップ、グラス、急須が一つずつ並べてあった。

「ありがとうございます!!」

よく分からんが、このスキルを与えてくれた人(?)に感謝したい。

流しの下には扉があって、中にはボウル、ザル、鍋、フライパン、おたま、フライ返し、菜箸が置かれていた。その横に小さな冷蔵庫。独り暮らしのアパートのような仕様だ。

このタイプの冷蔵庫は放置すると霜がもりもりになる冷凍庫が内部に付いているはず。
開けると、中にはミネラルウォーターとペットボトルの麦茶、卵、牛乳、バター、茶葉(緑茶)、たくあん、が入っている。
 
「何故たくあん?」

いや、しかし飲み物も確保出来た。

床に直置きされているが、ポットと炊飯器もある。なんと、炊飯器の横にはお米もあるではないか!!

日本人、米さえあれば生きていける。

ちなみに、中折れドアの横には小さなクローゼットもあり、そこにほうき、塵取り、雑巾、バケツ、洗濯板と洗濯用洗剤という掃除道具類、が入っていた。

バスタオル、フェイスタオル、下着に寝袋もある。

「ああ~。もうここで暮らしていけるわ! チートなお家様だった!!」

安心したら力が抜けて、へにゃりと床に座り込んでしまった。
はぁっと息を吐き出し、ふと気付く。

部屋の真ん中に鎮座した折り畳み式の机の上に、本が置かれている───

「タイトルは、『家召喚について』……? 説明書か!!」

ページをめくると、

なになに……、初めて家召喚したあなたへ。

この家の中(畑、果樹園含め)にある全ての物は、家の中にある限り、どれだけ使用しても無くなる事はありません。

この家の食料には健康維持、体力、魔力回復の効果があります。

畑の手入れは1日1回の草取り、水やりで十分です。

土地の周りには結界が張られており、あなたが許可したものしか入れません。

あなたのレベルが上がるにつれ、家の仕様は変化します。
例: 土地の拡張、畑の拡張、食料、飲料、調味料の種類増加等



「なにこのおウチ様、チートすぎる……!」



さて、家召喚の事もなんとなく分かったが、どうやら私には戦闘系の能力は皆無で武器もない。
レベルを上げていきたいが、どうやったら良いのか一切分からない。

…………とまぁ、考えてもらちが明かないので、とりあえず何か口に入れよう。そう思い、ご飯を作る為に畑に収穫に行くことにした。

「ついでに草取りと水やりもしようかな」

キッチンからボウルを持ち出し、畑に続く窓から外に出て、そのまま数歩で畑に入る。

「大きなキャベツだなぁ。とりあえず一つ貰おう」

よいしょ!! とキャベツを収穫する。後は玉ねぎと、ジャガイモを……ごっそり取れた!!

「そして草取り……って、そんなに生えてないなぁ」

プチプチと僅かな草を取ると次は水まきだ。
外にあった水道にはホースが繋がっていたので、それを使って水をまく。
小さな畑なのですぐに終わった。

それにしても、久々に感じる身体の軽さと頭のすっきり具合、嬉しすぎて……っ

もう……っ、涙が出てくる。

辛かった。苦しかった。女としての全てを奪われた気がした。でも、そんな思いとはもうさよならだ!! 私は今日からまた、新たな人生を生きていく。

今度こそ後悔しないように。

「はぁ~。身体が軽い! 健康って最高!! 今なら何でも出来そうな気がするよ!!」

青空に向けて両手を上げ、伸びをする。

ん~、良い気持ち。

よし! お昼御飯は肉と人参なしの肉じゃがと、キャベツの味噌汁でも作ろうかな! 


◇◇◇


「う~ん、何時かはわからないけど、太陽の位置から考えて今はお昼時……? あ、この野菜めちゃくちゃ美味しい!!」

肉じゃがにキャベツと卵のお味噌汁、炊きたてのご飯を食べながら考える。

チートなおウチ様のおかげで病気になる心配もなさそうだし、しばらくはここで憧れのスローライフを送るとして……………………、

「え」

外に何か居る!? 何アレ……っ

良い風が入るので、窓を開けたままご飯を食べていたが、閉めて置けばよかった。
だって森の中……葉っぱが繁ってる所にが見える!! ギョロってしてる赤い目!! 葉っぱがガサガサ揺れてるし!!

……結界、大丈夫だよね!?

「ギャギャ!!」

出てきたァァァァァァァァ!!!!

車並みに大きい、蜘蛛みたいな気持ち悪いのが飛び出してきたァァァァ!!!!

「ギ……」

あ、弾かれた。

「ギィィィィィ!!!!」
「ぎゃあぁぁぁぁぁ!!!!」

結界を攻撃してる! 気持ち悪っ、私虫系だめなんだって! お願いだから早く去ってくれ!!

「ギャッ」
「え?」

蜘蛛もどきがその足で、今までにないくらい思いきり結界を攻撃したら、その足がもげたのだ。

「ヒィィィィ!!」

足が地面に落ちてる!! 気持ち悪すぎる!!!!

「ギィィィィィ!!!!」

蜘蛛もどきは怒ったのか、今度は口からゴォォォ!!!! ととんでもない威力の炎を放った。私の目の前が真っ赤に染まっている。
しかし、その炎は蜘蛛もどきに跳ね返ると、ジュッという音と共にその姿がかき消えてしまった。

後に残るのは、黒く焦げた木々と地面だけだった……。

「……おウチ様、最強」


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