私のおウチ様がチートすぎる!!

トール

文字の大きさ
37 / 53
第一章

37.邪竜

しおりを挟む


『滅びた……、だと?』

え、どういう事!? リッチモンドさんがドラゴンの国を追い出されてから、まだ1年経ってないよね?

滅びた!? 何で??

『リッチモンド様が国を出た後、赤竜のロッソ様が王として国を統治しておりましたが、1週間前の事です……』

青いドラゴンさんが、何があったのかを語り出した。それを真剣に聞くリッチモンドさんの表情は、見た事がない程険しかった。


『“邪竜”が、復活したのです』


じゃりゅう? じゃりゅうって何だろう?

『何だと!? アレの封印は後1000年は保つはずだ!! 一体何故封印が解けたのだ!?』
『っ……ロッソ様が……1000年しか保たぬ結界など意味がないと仰られ、自分が邪竜を倒すと……』
『なんと愚かな事を……っ』
『復活してしまった邪竜に勝てるものなどおらず、国は邪竜によって滅ぼされてしまったのです……っ』

青いドラゴンさんは這う這うの体でここまでやって来たらしい。

リッチモンドさんを探して……。

『生き残ったものは皆、散り散りになり、今はどこに居るのかも分かりません……っ』
『…………』
『申し訳ありません……っ 貴方様が創り上げた“ソレルーナドラゴ王国 ”を、このような事でなくしてしまうなど……っ』

ボロボロと涙を零し、謝り続ける青いドラゴンさんに、リッチモンドさんは何も言えずにいた。

『リッチモンドさん、青いドラゴンさんを休ませますね。リッチモンドさんはお昼ごはんをちゃんと食べて下さい』
『カナデ……』

床に崩れ落ちている青いドラゴンさんを支え、空いている客室に連れて行く。

『ドラゴンさん、こちらで少し休んで下さい。眠って起きたら、お風呂に入ってすっきりしましょう』
『あ、ありがとう……っ』
『いえ。あ、私カナデと言います。ドラゴンさんの名前を聞いてもいいですか?』
『クレマンスだ……。国が、滅びる前は、騎士をしていた』
『女性の騎士ですか! 格好良いですね!!』

私が子供みたいな事を言ったからか、クレマンスさんはクスッと笑ってくれて、『ありがとう』と私を見たその表情が、本当に綺麗で眩しかった。




「───リッチモンドさん、クレマンスさんはお休みになりましたよ」

食堂で昼食を食べていたリッチモンドさんに声を掛ける。

「そうか……」

心ここにあらずな返事に、心配になって隣に座り、彼の手を握った。

「リッチモンドさん、ドラゴンの国に行きましょう」
「カナデ!?」
「生き残っているドラゴンさん達が気になりますし、“じゃりゅう”っていうのも気になります。放っておくと、まずいんですよね?」
「しかし、危険だ……っ」

リッチモンドさんは、きっと一人で行く気だったに違いない。でも、

「私、リッチモンドさんを一人で行かせたくないです」

話を聞く限り危険な場所に、リッチモンドさんを一人で行かせるなんて絶対反対だ。

「カナデ……」
「私なら、ドラゴンの国で家を召喚するスキルが使えます! それを使えば、結界も張れるし、リッチモンドさんが逃げ込める場所も確保できます。生き残りの人だって、避難させられますよ」

だから、私も連れて行って下さい!!

じっと彼の目を見つめれば、リッチモンドさんは、

「絶対無理はしないと約束してくれ」

と手を重ねて私の瞳を覗き込むように見つめてきたのだ。

今更ながらに、こんな美形に見つめられると動悸が……っ

「カナデ、そなたはわしが必ず守る」
「リッチモンドさん……。私もリッチモンドさんを守ります!」
「カナデには敵わないな……」

蕩けそうな微笑みを見せるリッチモンドに、顔が真っ赤になったのは当然の反応だろう。


◇◇◇


「“邪竜”ですか!?」

子供達には話せないので、レオさん、ローガンさん、ヒューゴさん、イヴリンさんに集まってもらい、ドラゴンの国で何があったのかを説明すると、ヒューゴさんが蒼白な顔で息を飲んだ。

「ヒューゴさん、“じゃりゅう”っていうのを知ってるんですか?」
「はい。魔に魅入られたドラゴンで、その力は一国をも簡単に滅ぼすと言われています。しかし、邪竜は同族に封印されたと聞いた事がありますが……」

“じゃりゅう”ってドラゴンなの!? しかも魔に魅入られたって…………もしかして、“邪竜”!?


「その通りだ。“邪竜”は昔、わしが封印したのだ」

しおりを挟む
感想 98

あなたにおすすめの小説

逆行令嬢は聖女を辞退します

仲室日月奈
恋愛
――ああ、神様。もしも生まれ変わるなら、人並みの幸せを。 死ぬ間際に転生後の望みを心の中でつぶやき、倒れた後。目を開けると、三年前の自室にいました。しかも、今日は神殿から一行がやってきて「聖女としてお出迎え」する日ですって? 聖女なんてお断りです!

義弟の婚約者が私の婚約者の番でした

五珠 izumi
ファンタジー
「ー…姉さん…ごめん…」 金の髪に碧瞳の美しい私の義弟が、一筋の涙を流しながら言った。 自分も辛いだろうに、この優しい義弟は、こんな時にも私を気遣ってくれているのだ。 視界の先には 私の婚約者と義弟の婚約者が見つめ合っている姿があった。

もう散々泣いて悔やんだから、過去に戻ったら絶対に間違えない

もーりんもも
恋愛
セラフィネは一目惚れで結婚した夫に裏切られ、満足な食事も与えられず自宅に軟禁されていた。 ……私が馬鹿だった。それは分かっているけど悔しい。夫と出会う前からやり直したい。 そのチャンスを手に入れたセラフィネは復讐を誓う――。

善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です

しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。

俺って当事者だよな? 知らぬ間に全てを失いました

碧井 汐桜香
恋愛
格上であるサーベンディリアンヌ公爵家とその令嬢ファメリアについて、蔑んで語るファメリアの婚約者ナッツル・キリグランド伯爵令息。 いつものように友人たちに嘆いていると、第二王子であるメルフラッツォがその会話に混ざってきた。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

女神に頼まれましたけど

実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。 その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。 「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」 ドンガラガッシャーン! 「ひぃぃっ!?」 情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。 ※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった…… ※ざまぁ要素は後日談にする予定……

殿下、幼馴染の令嬢を大事にしたい貴方の恋愛ごっこにはもう愛想が尽きました。

和泉鷹央
恋愛
 雪国の祖国を冬の猛威から守るために、聖女カトリーナは病床にふせっていた。  女神様の結界を張り、国を温暖な気候にするためには何か犠牲がいる。  聖女の健康が、その犠牲となっていた。    そんな生活をして十年近く。  カトリーナの許嫁にして幼馴染の王太子ルディは婚約破棄をしたいと言い出した。  その理由はカトリーナを救うためだという。  だが本当はもう一人の幼馴染、フレンヌを王妃に迎えるために、彼らが仕組んだ計略だった――。  他の投稿サイトでも投稿しています。

処理中です...