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第二部 第4章
499.特異魔法と昏い目 〜 テオバルド視点/イザベル視点 〜
しおりを挟むテオバルド視点
『たいへんだー! テオ、たいへん!』
イーニアス殿下と契約した赤いキノコ……妖精が突如、暴走した馬のようなスピードで体当たりしてきたのだ。
『いたいー! テオかたーい!』
体当たりした後に跳ね返り転がって、ジタバタと床を這いずり回るキノコは、羽があるからか虫のように見える。
『アカ、むしちがう! かわいーよーせー!』
「自分で言うな。それよりも、何があった……?」
これから大事な会議だという時に、一体何事だ。
『そうだ! せーよーせーと、アオから、ディバインこーしゃくけ、キケン! つーしんあった!』
「何だと……っ」
ベルと子供たちは無事なのか!?
ディバイン公爵家から連れてきた侍従を見るが、影からの報告は何もないのか、私を不思議そうに見返すだけだった。
「影は、何をしている……」
「……はっ、奥様に付けている影からは、緊急の連絡は受けておりませんが……何かあったのですか!?」
『かげ、ムダ! てき、けーかいしん、なくすまほー、つかう!』
警戒心を無くす魔法だと!?
「まさか、あの王女か!」
『そう、テオ、あのオージョみたとき、けーかいしん、なくされた! だから、しょくぶつとおなじ、なった!』
「今すぐ副帝に……っ、いや、ノアの神獣に私を屋敷に転移させるよう通信しろ!」
『ダメ、しんじゅー、ノアと、はなしてる!』
こんな時に……まて、まさかノアが神獣を使って、ベルを守ろうとしているのか?
「アカ、状況を詳しく教えてくれ」
冷静にならなくては……、まずは状況確認だ。
『わかった! いま、オージョのへや、ベル、ミランダ、ウォルト、ゴエーいる。チロもいる! テキ、オージョひとり!』
「敵だと判断したのは何故だ」
『オージョ、みたアオとチロ、こわがった! ぺー、たおれた!』
ぺーが倒れた……? ぺーの能力は、鑑定眼だったか……。
よく倒れるからと、ぺーの事をクレオ枢機卿に詳しく聞いたのは、あの子が来て間もない頃だった。
ベルには伝えていなかった事が裏目に出たようだ……。
「王女はエンプティに関係があるのか」
『わからない……。よーせー、たましいの、よごれぐあいしか、わからない』
「そうだったな……」
『でも、せーよーせー、オージョのジジューしらべてた!』
「よくやった。それで、何がわかった?」
『ジジュー、とくいまほー、つかえる!』
貴族の一部は特異魔法を使用できる。王女の侍従であれば、なおの事。しかし正妖精は調査をしていた……。つまり、
「その特異魔法に何かあるのだな」
『そう! ジジューのとくいまほー、テオのに、にてる!』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
イザベル視点
警戒心を無くす魔法───
じゃあ、この……王女様は絶対大丈夫だろうと思う、この感情は……っ
「奥様、離れてください!」
ミランダの声にやっと身体が反応する。
だけどまだ、わたくしは大丈夫だと思っていますわ……。
「さすが、ディバイン公爵家の侍女。警戒心が無いはずなのに、離れろと言えるなんて、なかなか出来ない事だ」
話し方が、変わった……?
「私の能力は、ただ、警戒心を無くすだけ。人を傷つけたり、殺したりできるようなものじゃあない」
ニタリと笑ったまま、語りだす王女の声は、まるで何の感情もないようで……
「全く大した事のない、クズな能力……」
「クズなどと、脅威でしかありませんわよ……」
「フフッ、そうだね。能力もさぁ、使い方によって、使う人物によって変わるんだ」
どこまでも昏い、底冷えするような目ですわ。
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