継母の心得 〜 番外編 〜

トール

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番外編 〜 ノア3〜4歳 〜

番外編 〜 荒れてしまったお肌2 〜 ノア3歳

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化粧水を作ったと思ったら、異世界もののマンガに登場するポーションのように、傷が治る液体が出来てしまった。

とはいえ、怪我をしてすぐというよりは、手当てした後の傷跡に効果があるようで、一週間からひと月使い続けると、徐々に綺麗になっていくというものだった。

「傷跡や、傷のひきつれにも効果があるようですわ……」

即効性はないようだけど……、困ってしまいますわ。これは封印した方が良いのかしら……。

「奥様、恐れながら、あまり表には出さない方がよろしいかと愚考いたします」
「そうよね……。ミランダは使ってみてどうだったかしら?」
「……はい、お陰様で、傷跡も綺麗になりました。くすみも消えて、肌もツルツルになったような気がします」

とても素晴らしい効果ですけれど、聖水を美容品として使っている事が、教会に知られてしまうと怒られるかもしれませんわ……。

「みんな特に赤く腫れたり、ブツブツが出たりはないようですわね」
「はい。やはり聖水が主な成分だからでしょうか。逆にブツブツが出やすい体質の者は、こちらの化粧水を使い始めた事で出なくなったようです」

思った通り、アレルギーを抑える効果があるようね。

「それは良かったですわ。洗濯場の子たちの、赤切れなどにはあまり効果がないようだけど……」

先日洗濯場の様子を見に行ったのだけど、まだ手には赤切れがありましたもの。

「そのような事はございません。確かに即効性はございませんが、傷の治りは早くなり、荒れていた手も綺麗になったと報告がございました」
「そうでしたの?」
「恐らく、ひと月ほど水仕事をしなければ、傷のない美しい手になるでしょう。とはいえ、そういうわけにもいきませんので、そこは多少改善したということで、本人たちはとても喜んでおりました」

なるほど……。ゴム手袋があれば、水仕事で手も荒れにくいわよね。洗濯機は無理でも、ゴム手袋の開発なら出来るかしら? オリヴァーが今頑張ってくれてるようだけれど。

「洗濯場の使用人には、引き続き化粧水とハンドクリームを塗るように徹底してちょうだい。冬場は特に辛いだろうから、携帯用湯たんぽも持ち歩くように。くれぐれも火傷には気をつけてね」

新素材でカイロのような大きさのケースを作り、そこにお湯を入れて袋に入れ、持ち運べるようにしたのだ。冬場はそれを皆に持たせている。

「かしこまりました。携帯用湯たんぽの支給はご指示通り使用人全員にしております。奥様が作ってくださった新たな制服はポケットが多いですので、そちらに入れております」

厚手の袋に包まれておりますので火傷は大丈夫だとは思いますが、気を付けるように伝えておきます。とミランダは言って、いつもはあまり表情を変えないのだが、少しだけ微笑んでいた。

ちなみに、携帯用湯たんぽと、布団に入れるタイプの湯たんぽは、ウォルトが目をつけ売り出した所、大ヒットしている季節商品なのだ。

ウォルトったら、本当商才がありますわよね。

「それとミランダが言う通り、化粧水は表に出さず、ディバイン公爵家でのみ使用しましょう」
「それがよろしいかと」
「皆にも口止めしておいてもらえるかしら」
「かしこまりました」

化粧水は表に出さなければ問題にはなりませんわよね!


そう思っていたのだけれど……、

「奥様……っ、お願いします! どうか……っ、どうか、娘にこの化粧水を使用する許可をいただけないでしょうか……っ」

わたくしの前で土下座するメイドに驚いたけれど、娘さんに、何かあったようだった。

「落ち着いて……。娘さんに何かありましたのね? 詳しく教えてもらえるかしら?」
「っ……うぅ……奥様……っ」

メイドは涙を流しながら話してくれたのだ。
10歳になる娘さんが、顔に火傷を負ってしまった事を。

「それは大変ではありませんの! 化粧水の前に聖水でよく洗わなくては!」

感染症になってはいけませんもの!

「は、はい……っ、お医者様にもそのように言われ、こまめに聖水で顔を洗うようにしております」
「では、痛みが引くまでは聖水だけで洗い、痛みが引いてから化粧水を付けるようにいたしましょう」
「っ……奥様、ありがとうございます……っ、この御恩は決して忘れません!」

額を地に付け、肩を震わせるメイドの背を撫でる。

「今まで不安だったでしょう。娘さんが落ち着くまで、有給休暇を取りなさい」
「奥様、ですが……っ」

私の言葉に不安そうに見つめてくるので、改善したばかりの雇用形態の話をする。

「本来有給休暇はこういった時に長期間休みを取るためにあるのですわ。あなたが皆にお手本をみせてちょうだい。ミランダ、大丈夫ですわよね」
「はい」

わたくしは、消炎効果のある植物を探してみましょう。今のままの化粧水では、治るまでに時間がかかりそうですもの。

こうして誕生した化粧水は、結局化粧水ではなく、薬として使われるようになるのだけれど、わたくしは人類の宝であるノアのマシュマロ肌も、メイドの娘さんの肌も守れたので、満足ですわ!

「おかぁさま、ノア、おみじゅぬりゅ、おじかんよ」
「フフッ、そうね。化粧水、お母様が塗ってあげますわね」
「あーい!」

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