継母の心得 〜 番外編 〜

トール

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番外編 〜 ノア3〜4歳 〜

番外編 〜 妖精の秘密2 〜 ノア4歳

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『カスタードと生クリームが混ざったこのクリームと、バニラビーンズが入ったプチシューが美味しすぎる! これを考案したベル、天才だよ!』
『コッチノ、フルーツタルトモ、サイコー!』
『モンブランハ、ノミモノ!!』

わたくしが考案したわけではないのだけど、神のアイデアをパクらせていただきましたわ。
それとアオ、モンブランは飲み物ではなくてよ!?

「おかぁさま、おいち…しぃね」

ノアは天使だわ!

「ははうえ、わたしは、プチシューなら、たくさんたべられます」
「イーニアス、プチシューが何故プチなのか分かる? 小さいとね、無限に食べられるから、山のような量をお食べなさいという気持ちを込めて、イザベル様が考案されたのよ」
「全然違います」

皇后様、おかしな事を殿下に教えないで下さいませ!

「じゃあ、モンブランは……ハッ! これこそ、山のように食べろという意味で……」
「違いますわよ!」

皇后様のお菓子好きにも困ったものですわね………………ん?

『アカ、モンブランモ、タベルー!』
『アオ、フルーツタルト、タベルー!!』

アカとアオ、さっきより膨れて……、

わたくしが気付いた時にはもう遅かった。

それは、刹那の事。風船が膨らみきった時のあのピンと張ったような質感、それがアカとアオのまんまるな体にも見えたと思った瞬間、

パーン!!!

本当に風船が割れるように、二人が破裂して消えてしまったのだ……!


「アカ……、アオ……?」

最初は大きな破裂音に驚いて、身をすくめていたノアが、ハッとして、妖精たちの名前(?)を呼ぶ。

「アカと、アオが……どこにもいないのだ……」

イーニアス殿下も辺りを見回し、呆然と呟いた。
わたくしと皇后様も顔を見合わせる。

「嘘でしょう……っ、破裂するなんて……、まさかアカとアオは……っ」
「破裂!? 今の音……まさか、し、死んじゃったの!?」

皇后様の言葉に、ノアとイーニアス殿下の瞳がみるみる内に潤んでいき、

「うぁ、アカど、ぁ゛、ア゛オ゛が……っ」
「ちんじゃったぁー!!」

声を上げて泣き出したのだ。あの悪魔にお城の模型を壊された時よりも大泣きしている二人に、プチシューをリスのように口に入れた正妖精が、「むぐ、んぐ、何? 何?」と挙動不審になっている。

「あんた! もぐもぐ言ってんのよ!? あんたの部下みたいな子が死んじゃったのよ!?」
『むぐ? アカと、んぐ、アオは部下じゃなくて兄弟だよ??』

兄弟!? 正妖精とアカ、アオが、兄弟!?

皇后様の怒号にも微動だにせず、飄々と衝撃的な事を言っている正妖精に目を剥く。

『むぐ、むぐ……ゴクン。はぁ、美味しい! あのね、さっき言ったよね。アカとアオはもうすぐ進化するって』
「破裂して消えましたのよ!? それが進化だとでも言いますの!?」
『そう言われても、それが小妖精の進化だし』
「進化ではなく、死んでますのよ!!」

うぇ~ん!! と子供たちの泣き声が大きくなる。
皇后様とわたくしはそれぞれ子供たちを抱きしめ宥めるが、あのアカとアオが亡くなってしまった事に、わたくし自身もショックが大きすぎて……っ

『死んでないから。さっき話したように、小妖精は幸せな気持ちを体内に自分の力として蓄え膨らんでいくんだ。そして最後にはパーン! と破裂して、虫でいう脱皮っていの? あれをするわけ』

脱皮ですって……?

『見てて。あの小さな体に溜めておけなくなるほどの力が集結して、新しい身体を形作っていくから』

そう言って妖精の指し示す場所を見ると、直径30センチ位の楕円の光が二つ、浮かんでいるではないか!!

「もしかして、あれが……アカとアオですの?」
『そうだよ。ノアとアスがびっくりしちゃわないように、先に教えてあげようと思ったんだけど、ひと足遅かったみたいだ。ごめんね。ノア、アス』

正妖精の呼びかけに、涙と鼻水に濡れた顔を上げ、「アカと、アオ、いぎでる゛?」と聞く二人は離したくないほど可愛い。

『もちろん生きてるよ! これから、滅多に見れない小妖精の進化が始まるからね。よく見てるんだよ!』
「「はい!」」

進化……、あの光の玉が、正妖精になるんですわね……。
「アタシも見たかった!」と悔しがっている皇后様は、後でイーニアス殿下からどんなものだったか詳しくお話ししてもらうのでしょうね。楽しそうにお話ししている光景が目に浮かびますわ。

そんな事を考えていたら、光の玉が徐々に人の形を作っていく。そして───……

『アカは、ちゅーよーせーに、しんかした!』
『アオも、ちゅーよーせーに、しんかした!!』

ころんとでんぐり返しをして、両手をバッと上に上げた身長30センチの可愛い小人が、その後『んしょ』と立ち上がってぐるぐると駆け回り始めたのだ。

その頭には、しっかり赤と青のキノコの帽子をかぶっていた。

何か、想像と違いますわ!

「アカとアオが、しんかした!」
「おおきく、なった!」

手のひらサイズのアカとアオの進化とは、ただ、30センチ台に大きくなるだけというショボ……ゴホンッ、その、あれですわ。そう、生きていてよかった。

『アカ、ことばもからだも、スマートになった!』
『アオ、ことばもスラスラ、からだも、スッキリ!!』

うーん、身体……太ってはないけど、赤ちゃんみたいにぷくぷくでスマートでもスッキリでもありませんわよ。
すごく可愛らしいですけど。

『アカ、アオ、すごい進化を遂げたね! 弟として鼻が高いよ!』

弟ぉ!? 正妖精が、弟!? アカとアオがお兄ちゃんですの!?

『エッヘン! アカ、りっぱな、ちゅーよーせーになった!』
『アオも、ちょーりっぱな、ちゅーよーせーになった!!』

正妖精になるのかと思いきや、中妖精……? でしたら、正妖精ではなく、大妖精と呼ぶべきではないの?

『これで、ボクらの力が強くなったから、ボクらが補助魔法をかけたら、テオは大魔王だね!』
『テオ、だいまおー!』
『テオ、つよーい!!』
「テオ様すてきー!!」

止めなさい! 皇后様も一緒になって騒がない!

『ノア、アス、これでほかのあそび、たくさんできる!』
『いっしょに、できる!!』
「はい! たくさん、あそべるのよ!!」
「うむ! シーソーもできるのだ!」

まぁっ、もしかして……

「妖精たちが進化したのは、子供たちと一緒に遊ぶ為でもあった……?」
『ボクら妖精は、元々子供と契約して、一緒に遊んだり、おやつ食べたり、眠ったりする生き物なのさ! だから、ボクらの進化に子供は必要不可欠だよ! そして、子供にもボクら妖精が必要なのさ』
「待って。それって……、あなたたち、ノアとイーニアス殿下と勝手に契約を結んだりしてないでしょうね!?」
『ボク“は”結んでないさ! 可愛いフローレンスがいるからね』
「“は”って何ですの!? アカとアオはまさか……っ」

正妖精の顔を見れば、首をコテンと傾げ……、

『テヘッ』

ちょっと、それどういう事ですの!? きちんと説明しなさい!



アカとアオが、ノアとイーニアス殿下と契約したのかどうか、真相は未だ不明である。


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