継母の心得 〜 番外編 〜

トール

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番外編 〜ノア5歳〜 〜

番外編 〜 家族旅行4 〜 ノア6歳間近の5歳



「おとぅさま、おかぁさまいないの……」
「ベルは昼までには戻って来る。ノアはそれまで私と、ベルをどこに連れて行くか計画を立てよう」
「おかぁさまと、あそぶ、けーかく?」
「そうだ。ベルが喜ぶ所へ連れて行ってやろう」
「はい!」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



メアリーちゃんのお姉さんは、私たちをリビングへと通すと、お茶を出してくれて、疲れた様子でベビーベッドを虚ろに見つめた。

「……ご挨拶が遅れ申し訳ございません。私は、メアリーの姉のアメリアと申します」
「アメリアさん、突然お邪魔してお茶までご馳走になってしまい申し訳ありませんわ。先程言ったように、わたくし、あなたのお悩みが聞きたいんですの」

戸惑うアメリアさんに、出来るだけ優しい声でお話をする。
最初は世間話で距離を縮めてというように、徐々に警戒を解いた方が良いのは分かっているけれど、あまり時間がないのですぐ本題に入らせてもらう。

「領主の妻として、領民の子育ての悩みを放っておくわけにはまいりませんわ。悩みを打ち明けていただければ、少しでもお助けできる事もあるかもしれません」
「……」
「メアリーさんと出会ったのも何かの縁だと思いますの。ですから、お話しくださらない?」

わたくしが貴族という事もあり、無下にはできないと判断したのか、アメリアさんは暫くして、話し始めた。

「───夫は漁師で、一度漁に出るとひと月は帰ってきません。私も、いくら妹を育ててきたとはいえ、両親が亡くなったのは妹が6歳の頃でしたし……初めて出産して、この子が……夜中にも朝方にも泣きわめくし、それがずっと続いて……三日前にはお隣のおじさんが怒鳴り込んできて……っ、私、もうどうしたらいいのか……っ」

うるさいと言われても、どうしようもできませんものね。それは辛かったでしょうね……。

かなり追い詰められている上に、隣人問題が発生している状態だと、精神的にも追い詰められますわよ……。

「ご主人は、いつ頃お戻りになりますの?」
「漁に出たばかりですから、後2週間は戻ってきません……」

この疲れ果てて、泣きはらし、目が虚ろな状態の彼女を一人にするわけにはいけませんわよね。
いくら子供が好きなメアリーちゃんでも、赤ちゃんの正しい知識はあまりないようだし。お姉さんのお手伝いをするのは難しいかもしれませんわ。

「わかりましたわ。アメリアさん、あなた、ご主人が帰って来るまで、おじいさまとおばあさまと一緒に過ごしたらどうかしら?」

予め、こんな事もあるだろうと男爵夫妻には話は伝えてある。
アメリアさんも限界のようだし、隣人の問題もありますし、一旦家を離れた方が良いだろう。

「それは……出来ませんっ! あの人たちとはずっと疎遠でしたし、他人と変わらない関係なのに、突然子供を連れてお世話になるなんて……っ」

あら、メアリーちゃんは男爵夫妻と仲が良さそうにしていたけれど、アメリアさんは違うみたい……?

「あなたのおじいさまもおばあさまも、メアリーさんが予めご事情をお話しておりますのよ。あなたがどういった状況かはご存知だし、今まで何もしてあげられなかった分、助けてあげたいと仰っていたわ」

本当は、わたくしたちがいる間はディバインの別荘で過ごす予定だった男爵夫妻は、メアリーちゃんから話を聞き、別荘の近くにあるご自宅に帰り、アメリアさんたちを迎える準備している。

「でも……、会ったのも数度ですし……ご迷惑をおかけするわけにも……」
「おねえちゃん、ディバイン公爵夫人の仰るとぉり、おじいちゃんたちにお世話になろぉ? 私も昨夜お世話になったけどぉ、すっごく優しかったしぃ、今までごめんねって言ってくれたのぉ」

メアリーちゃんが、そう言ってお姉さんを説得する。
アメリアさんは、涙を流してようやっと、重い腰を上げたのだ。

問題が解決したわけではないけれど、頼れる人がいると思えば、気持ちも少しは楽になるだろう。

後は、隣人問題や育児の問題をどう解決していくか……ですわよね。

大掛かりなものだと、壁に発泡ポリウレタンのような断熱材を入れると、防音にもなるけれど……。それはすぐには出来ないから、考えるとして、まずはご近所さんと仲良くなる事が重要かしら。
仲の良い人の騒音は、ストレスになりにくいと言うし、近所の人が集まる機会を作って、周りの理解と味方を増やさないといけませんわ。


どちらにしてもすぐには難しいので、アメリアさんとメアリーちゃんを男爵夫妻のお宅に送り届け、別荘へと戻ったのだ。

思ったよりも早く戻って来れたので、ノアと海辺を散歩できるわと思いながら応接間に顔を出すと、テオ様とノアが何やら真剣に話し合っているではないか。

わたくしが帰ってきた事にも気付いていないようだ。

そっと二人の会話に聞き耳をたててみる。

「───この別荘地ならではの食べ物はどうか」
「おかぁさま、おいしぃの、うれしいのよ!」
「そうだな。やはり海鮮の食べられるレストランに連れて行くとしよう」
「うみ、そばでみるの!」
「ああ。ベルに綺麗な貝殻を見つけてあげるといい」
「かいがら!」

まぁ、もしかして、わたくしが喜びそうな所に連れて行ってくれる気で、真剣に話し合っているのかしら。

声をかけてもいいか迷っていた所で、アオが、『ベルだ!!』とわたくしの名前を呼んで、二人が気付く。

「おかぁさま!」
「ベル、帰っていたのか」

嬉しそうにやってくるノアを抱きしめ、テオ様に「ただいま戻りましたわ」と伝えると、「何とかなりそうか?」と心配そうに問われた。

「やはりコミュニティーは必要だと感じましたわ。それと、各家の防音対策も考える必要がありますわ」

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