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第三章
嫉妬
しおりを挟む「…それ、ロードさんにバレたら不味くない?」
トモコがひきつった顔で乾いた笑いをもらすので、ロードを思い浮かべる。
いかん。鬼のような形相で睨まれる様しか想像出来ない。
「みーちゃん、身元は確かだって言い切ってたもんね…」
「…確かでしょ。身元は」
だって王子様だもの。
「「…………」」
ロードもだけど、ヴェリウスにも怒られるかもしれない。
「どうやって切り出そうか?」
「トモコが話すとかどうかな?」
「止めてよぉ!? ロードさんみーちゃんにしか甘くないんだから、みーちゃんが話して!」
「ロードが甘い!? あんなヤクザか鬼みたいな顔で睨んでくる男が甘い!?」
甘い男はそもそも自分のつがいに睨みをきかせたりしません!!
「みーちゃん…」
「もういっそのこと、黙っておくのはどうかな?」
「誰に何を黙っておくって?」
「いや、だからロードにリンの…ん? トモコいつから声変わりした?」
随分低い声で話すなぁとトモコを見ると、ものすごい勢いで首を横に振っている。
「俺に、何を、黙っておくって?」
さっきよりも低い声が耳元で聞こえた。
「と、トモコさん…もしかして私の後ろに、ろ、ろ、ロードさんとかいないデスよね!? いないと言って! お願いだから!!」
「居るよーーー!!!!」
叫んですぐ逃げようとしたトモコの腕をガシッと掴む。
逃がさんぞ!! 死なばもろともだ!!
「!? 離せみーちゃん!! 1人で大人しく逝ってくれよォォォ」
「ふざけんなぁ!! 死なばもろともじゃあぁぁぁ!! 離さんぞっ」
「ギャアーッ みーちゃんの後ろに鬼がァァァ!!!」
私の後ろに居るであろうロードの顔を直視したトモコが、恐怖のあまり叫びをあげている。
私? 見ない見ない。見たらダメ。
腰に腕を回されてすでに逃げられない状態の私は、決してトモコを逃がさない。
「ミヤビぃ、オメェは俺に黙って何をしようとしてんだぁ」
優しげな声で問いかけてくるが、トモコの反応から表情は鬼のままだろう。騙されないぞ。
「何もしようとしてません」
無表情で淡々と答える。勿論ロードの顔は見ない。
「ほぅ……ならまずは、黙っていようと思った事を一字一句もらさず答えてもらおうか」
こうして恐怖の尋問が始まった。
「さて、どっちが素直に答えてくれるかねぇ」
多分凶悪な顔で笑ったであろうロードに、顔が引きつる。
「ハイ!! みーちゃんが、ステータスを見れるようになりました!!」
即効心友を売ったトモコを半目で見る。
「ステータスだぁ? 何だそりゃあ」
「ハイ! ステータスとは、名前や年齢、さらにレベルやスキル、装備等の状態を数値化して表す事を言います!!」
「ほぅ、それがミヤビには見れるんだな」
「ハイであります!!」
「…で、そのステータスからあのガキの重要な何かが分かり、俺に黙っておこうとした、と?」
「そうであります!! さすがボス!! 理解が早い!!」
トモコォォォ!! お前なに敵の子飼に成り下がってんだコラァ!!
揉み手をしながらロードをよいしょするトモコ。
もしかしてコイツのスキルのetc.って、よいしょと手のひら返しなんじゃ…。
「何がわかった?」
「え゛っと…」
こういう時にトモコが私を見てくるので、素直に答えるしかないかと観念した。
「リンが…」
口を開いたところで、くるりと体を反転されて向かい合わせになった。
こめかみに血管を浮かべつつも無表情なロードは、鬼を通り越していた。
「っ…お、怒ってらっしゃる?」
「怒ってねぇと思ってたのか?」
怒ってるとは思ってたけど、そこまで激おことは思わなかったんだよ。
「何でそんなに怒ってるのか分からない…」
「……」
黙ってしまったロードは、やっぱり無表情で怖い。
((みーちゃん、ロードさんは嫉妬してるんじゃない?))
はぁ? 一体何に嫉妬するというのか。
トモコの念話に顔をしかめた。
((みーちゃんこっちに来てからずっとリン君の事気にしてるもん))
いやいや、それは仕方ないでしょ。大体その話はさっき終わったんじゃなかったの!?
((終わってないでしょ。だってさっきのは演技だったし、今もみーちゃんはリン君関係の話をロードさんに黙っておこうとしてたわけだし))
う゛…。
((きちんと話した方が良いと思うけどなぁ))
「…ロード、リンの話をする前に、その…少し話を、しようか」
トモコにすすめられ、2人で話をする事にした。
了承したロードに連れていかれたのは、騎士寮のロードの部屋だった。
久しぶりに来た気がする。
「……」
「……」
沈黙が重い。
とりあえずソファに腰かけて周りを見る。相変わらず何もない部屋だなぁと思いながら。
「…話って何だ」
地をはうような声で、ボソリと呟くので空気がさらに重くなる。
「あの、誤解してるようだから…リンの事…」
口に出してなんだが、ロードは誤解しているのだろうか? さっきも詳しく話したのだから、誤解はしていないのではないかと思い始めた。
では一体何に怒っているのか。
トモコは嫉妬だというが、何が気にくわないのだろう。
黙ってこっちを見ているロードをチラリと見れば、先程と変わらない無表情で、何だか切なくなった。
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