異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ

トール

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第四章

イタズラなお土産~ロードside~

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ロード視点


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ロヴィンゴッドウェル第3師団長」

見慣れた王宮の、執務室へと続く廊下を歩いていると声をかけてきたのは、この国の宰相ルーベンス・タッカード・ルーテルだった。
俺の苦手とする相手で、何を考えているのか簡単に腹の内が探れねぇ所が特に嫌だ。

「ルーテル宰相…」
「北の国への旅行はどうだったかね?」

最近この男は俺のミヤビと親しくなっており、ミヤビがこの男を父親のように思っているというのもあって邪険に出来ない所が更に腹立たしい。

「…北の国にはまだ行ってねぇですよ」
「ふむ? 君の奥方の様子では、あの後すぐに出発すると思ったのだが…君も休みを取っていただろう」

他人にミヤビを奥方と称されるのは中々に気分が良いが、この男とは話したくない。

「先にバイリンに行った。アンタが100年前の話なんかすっから、アイツが捕まったエルフが生きてるか確かめてぇってな」
「ああ、やはりバイリン国の“神罰再来”は君の奥方の仕業だったか」

コイツ、分かっていやがったのに確認する為にわざわざ話し掛けて来やがったのか。

「山を一つ吹き飛ばし、力の差を見せつけて元通りにしたらしいな」
「知ってんなら聞いてくんじゃねぇ…ですよ」
「ふんっ 私が聞きたいのはそんな事ではないのだよ」

着いて来たまえと顎でしゃくるようにいって颯爽と歩き出した。
いちいち腹の立つ男だなと思いながらも一応上司にあたる人物なので渋々ついていく。

やって来たのは奴の執務室だ。

「ー…で、何の用でしょーか?」
「その下手くそな敬語をいい加減やめないか。逆に不快だ」

俺ぁお前の存在自体が不快だよ、と思わず考えてしまう。

「へいへい。で、何だよ」
「君は何故奥方に他国であんな真似をさせたのだね」

神経質そうな瞳が俺を睨み付け、口の端がヒクリと引きつっている宰相を尻目にソファへドカリと腰掛ける。
この部屋に慣れてきている自分が嫌だと思いながら、未だ俺を鋭い目付きで見ている宰相に口を開く。

「ありゃ不可抗力だよ」
「不可抗力だと…」

俺の向かいに座ると、眉間にシワを寄せて聞き返してくるので面倒臭ぇ。

「バイリン国のトップ2人が絡んできやがったから払っただけだ。神々に喧嘩を売ってくる方が悪い」
「…成る程、、という事は共にいた神は君の奥方だけではなかったという事だな。大方あのおかしな少女か神獣が共に居たのだろうが…」
「分かってんのに聞くんじゃねぇっつってんだろうが。つーか、俺ぁなんでアンタにプライベートを報告しなきゃいけねぇんだよ!」

イライラと訴えるが、目の前のいけ好かねぇ野郎は余裕の笑みを浮かべて蔑むように言い放った。

「ロード・ディーク・ロヴィンゴッドウェル第3師団長、貴様の直属の上司は私だ。プライベートも何も、我が国の師団長が他国を滅ぼしかけたというのに上司に報告も無いとはおかしな事だと思わんかね? ん?」
「ぅぐっ」

至極もっともな事を言われ、何も言い返せねぇ。

「神は確かに自由ではある。だが、山をも吹き飛ばす力と騙されや……人懐こく素直な性格のミヤビ殿は、目立てば目立つ程人間に狙われる事になるだろう」

確かに普通の神なら脅威に思い敬遠するだろう。だがこの男の言う通り、ミヤビは自ら人間に近付いて行く上騙されやすい。ミヤビの事を知る人間ならば神の力を利用しようと近付いてくるかもしれない。

「俺ぁアンタが一番信用ならねぇよ」
「ふんっ私がミヤビ殿を利用する気だと?」

鼻で笑いやがったが、今の所ミヤビの事を知っていて利用しそうな人間の最有力候補はコイツだ。

「部下に信用されていないとはな。情けない事だ」

大袈裟に嘆く真似をするこのおっさんにイラっとする。
その時、

「ルーベンスさーん、お土産持って来たよー」

そんなイラつきも俺の可愛いつがいの声で霧散した。

「…ミヤビ殿、何度も言うようだが急に現れるのは止めたまえ」
「あれ? 来客ちゅぅ……ロードサン、ここに居たのネ」

転移で現れたミヤビを抱き寄せ膝の上に座らせる。

「テメェは…俺の前で堂々と浮気かぁ?」

そんな事はないと分かっているが、他の男に会いに来る事が許せねぇ。
ミヤビは違う違うと慌てて首を横に振っているが腕の中に抱き込む。

「ロードさん、ルーベンスさんにバイリンのお土産持って来たんだから離して」

そう言って腕をペチペチと可愛らしく叩いてくるので可愛くてたまらない。
コイツは何でこんなに可愛いんだと腕を少し緩める。離してはやらないが。

「はぁ~…苦しかった。あ、ルーベンスさんにバイリン国に行ったお土産ですよ」

ミヤビはどこから出したのか、小さな硝子製のポットとコップを一組ルーテル宰相の前に置いた。

「どうぞ!」
「…何だねこれは」
「バイリン名物“ザボンジュース”です!」

キラキラと一際輝く笑顔で言い切っているが、それお前がクソマズイつってたジュースじゃねぇか。
ああ、そういう事か。イタズラ好きのミヤビだからなぁ~可愛い奴だ。ルーテルの野郎ざまぁみやがれ。

心の中でニヤニヤ笑い、ミヤビの形の良い頭を撫でていると宰相がコップよりも一回りだけ大きな硝子のポットを手に取ってじっと眺めている。

中のザボンジュースがタプンと揺れた。
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