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第五章
豹変
しおりを挟む「精霊様はどんな菓子がお好みですかな」
ニコニコと大量のお菓子を机に並べ、それをすすめてくる大司教。傍らでは白いローブを着た少年がお茶をいれてくれている。
何故こんな事になっているのかというと、片膝をついて謝罪された後、お詫びという名目でアフタヌーンティーに誘われたのだ。
教会のアフタヌーンティーとはどんなものかと興味もあり、トモコ(姿は見えない)と共に付いて来たのだが、まぁ王宮のお茶会と同じような感じであった。
お菓子もお茶も王宮に見劣りしないもので、教会の資金の潤沢さを知る。
とはいえ、ロードが作ってくれたお菓子とは比べものにもならないが。
「もしかして精霊様は人間の食べ物は召し上がらないのでしょうか?」
へにゃっと眉を下げるおじいちゃんに慌てて、いえ、食べれますよと答えれば微笑まれた。
「年若い娘さんにこんな爺の茶会を受けていただいただけで舞い上がる気持ちでしたが、ここにある菓子は古くさいものばかりで嫌がられてはいないかと思っていたところです」
等と言われては食べないわけにはいかない。
古くさいと口では言うものの、ここに並べられているお菓子は王都では行列の出来る人気店のものばかりだ。
無難にクッキーっぽいものを口に入れると、滅茶苦茶固い。石でも食べているのかと思う程だ。これは本当におじいちゃんの選んだ物なのだろうか。
もし仮に従者が選んだとしたら、大司教の歯を砕いてやろうと企んでいるんじゃないだろうか。
密かな陰謀を感じつつもお茶を口に含みなんとかふやかす事に成功した。
が、何やらガリッとする食感に歯が欠けたのではと恐怖する。
結局歯がかけたわけではなく、生地や焼き方がまだらになっていたらしい、お茶でもふやけない固い部分だったようだ。
「みーちゃん、そのクッキー石か何かなの? 尋常じゃない音が口の中からしたけど…」
トモコにまで聞こえたらしい。そう話し掛けてきたが今は大司教の前だ。答える事は出来ない。
その大司教だが、特に何を言うでもなくニコニコしているという事は、このクッキーはこれが普通なのだろう。
「…精霊様はこちらのクッキーを召し上がって何ともありませんか?」
違った。やはり尋常じゃなく固かったらしい。
「まさか…」
大司教の歯を砕くという陰謀に気付いて…!?
すると大司教はニコニコ顔をニヤリと歪めたのだ。やはり自分の従者が自身を陥れようとしていた事に気付いていたらしい。
「これ程簡単に精霊を誘き出せるとは思わなかったが…ふふっ精霊にも効いているようで良かったよ。強力な眠り薬を手に入れるには苦労したのでね」
え? 眠り薬?? ちょ、大司教が豹変したんですけど?
ついていけないとトモコを見れば、どうやらこの人がラスボスみたい~と笑っていた。初めから気付いていたようだ。
「この部屋には特殊な結界と魔方陣が仕込まれていてね。精霊や、例え神でも出られないのがこの結界の特徴だ」
それはつまり監禁専用の結界という事か。
「そして魔方陣だが、これはバイリン国の隷属させる魔道具に描かれていたものを部屋自体に組み込んだものだ」
ああ、そんなものもあったなと思い出す。
あのラップのようなものだな。どうやら大司教は私をここに閉じ込め力を抜き取る気でいるらしい。
「私の糧になってもらおうか」
ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべたまま、悪役らしいセリフを吐いた大司教は部屋を出ていったのだ。
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