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第五章

人間を創った日

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「ふむ。やはりこの“器”は馴染み良いのぉ」

さすが何万年と使っていた身体だと指を動きを確かめ、腕や足を動かす。

「しかし爺の身体のせいか、あちこちがボキボキ鳴りよるわぃ」

首をゴキゴキならしながら伸びをするとバキボキと音がする。言っておくが折れてはいない。


「さて、早く戻らねばロードの奴も神々も戸惑うじゃろうて…」 

の身体を先程が置いてあった場所へ保管し踵を返す。
白いローブと長く白い髪が揺れ懐かしい気持ちになった。

さすがにこの“器”でロードのそばに戻るわけにはいかず、神々のいる空へと転移する事にしたのだが、

「神王様!?」

丁度ランタンさんの目の前に転移した事で、驚愕の声を上げられた。しかしそれだけではない驚きをたたえた表情でこちらを見ているのだ。

そう、今の私の“器”が“北野 雅”ではなく、昔ハマっていた“爺”の器でここへ立っているからに他ならない。

『ミヤビ様!? 何故そのお姿で…っ』

ヴェリウスがすぐさま寄って来て、嬉しそうな、戸惑っているような複雑な表情と尻尾の動きをしているではないか。

「“雅”の姿だと、神王じゃと言うても信じてもらえんようだからのぅ」

しわくちゃの手でその毛並みを撫でてやるとブンブンと尻尾を振った。

『神王様自らが人間達の前に出ていく必要などありません!!』
「そうは言うてものぅ…神王に成り代わると言われては、出ていかんわけにもいかぬだろう?」

反対するヴェリウスに眉尻を下げて言えば、ランタンさんまで反対してくるのだ。

「アタクシも反対です!! 神王様にもしもの事があれば…っ」
「ランタンや、お前はわしの居らぬ間に何があったんじゃ」

ランタンを皮切りに他の神々が次々と反対してくる。
懐かしい顔が並んでいるなぁと眺めて微笑んでいれば、皆がそばに寄ってきて押し潰されそうになった。

「分かった、分かった。少し落ち着かんか」

どさくさに紛れて抱きついてきた神々も居たが、それはヴェリウスが後ろ足で蹴飛ばしていた。

「…皆、覚えておるじゃろうか?
人間達はわしとお前達とで協力して創った事を」

数百といる神々の顔を見ながら、私は人間を創った日の事を思い出していた。 


ーーーーー


「ーー…今日は、この世界を発展させる為に新たな生き物を創ろうと思っておる」

神々を集めた私は、そこで皆に目的を伝えたのだ。
世界の発展には人類が必要不可欠だと、創造主仲間の“地球の”が教えてくれたから、私の世界にも“人”を創ろうと考えていた。

「ハイッハーイ!! 神王様! 新たな生き物って、どんなのを考えてるんだっ…ですか!!」

ぴょんぴょん跳ねながら、手を上げて元気よく発言したのはジュリアスで、興味津々の様子で質問してくる。

「それはのぅ“人間”といってなぁ、お前達にとてもよく似た生き物じゃよ」
「……私達に似た生き物…?」

ランタンが無表情のまま首を傾げ、ヴェリウスは私の足元で丸まって眠っており、ジュリアスだけが大きな声で「また神を創るのか!? …ですか!!」と懸命に言葉遣いを丁寧にしようと奮闘していた。

「神ではないよ。似ているようで違うのじゃ」
「似ているのに違うのですか?」

アーディンがおずおずと声を出す。
この頃のアーディンは大人しく、皆の前で発言する事も恥ずかしい様子だった。

「そうじゃよ。姿形はお前達のように、しかし“力”はあまり持たせぬようにし出生率を上げよう思っておる。お前達は強大な“力”を持ってしまった事で出生率も低いしのぅ」

繁殖せねば世界は発展しないらしいからと付け加え、さらに話を続けたのだ。

「お前達をベースにした生き物を創るにあたり、お前達の力を貸してもらいたいのじゃ」

神々の“力”を借りる事により、神々の姿、形を取り入れやすくする為の工夫であった。

だからこそこの世界の人間は多種多様であるのだ。
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