心が読める私に一目惚れした彼の溺愛はややヤンデレ気味です。

三月べに

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お試しの居場所編(前)

32 ポロッと発覚で今更すぎる報告。(真樹視点)(前半)

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 おれ達は心配してんのにぃ~! その反応はアカン!!

「お前な! 危機感どこ忘れた!? 数斗の部屋に来て、隣で無防備に寝るとか! 危機感を持て!!」
〔そ、それは反省してます! で、でも! 普通にドクズのことなんて、避ければいいじゃないですか! そろそろ異動すると思いますし!〕

 新一に怒られて、萎縮する七羽ちゃんは言い訳した。
 ! 七羽ちゃんがドクズって言った!
 天使も毒吐きたいほどの最低男なんじゃん!

「七羽ちゃんってば、その下心を感じ取ってるんでしょ!? 我慢よくないって! 酷いクソ不倫男がそばにいるとか、心配すぎるよぉ!」
〔避けられますって。挨拶しかしなかった仲なので、仲良くなるきっかけを窺っているんでしょうが、私は避けるんで絶対に挨拶以上の仲にはなりません!〕
「あのな、ナナハネ。何かあった後じゃ遅いんだぞ。そんなドクズ不倫男が、いつまでも正攻法で行くとは限らない。その下種野郎と部屋で二人きりにならないって言えるのか?」
〔…………〕
「なるんだな!?」
「危険!!」

 七羽ちゃんがグッと眉間にシワを寄せて、顔を枕の方に背けた。

 おれに親しくなるチャンスは与えないって言い切るけれど、新一の言う通り、密室で二人きりになれば、危険しかない。
 いつかは何かが起こるかも! 心配、最高潮!!

〔い、いや、スーパーのバックヤードで、そんな危険はないですよ? ホント! 食堂はランチ時間を過ぎればものけの空ですが、そこには滅多に行きませんし! 見回りみたいにちょくちょく、私のいる精肉部の部屋に入ってきますが、正社員が大抵いますし、元不倫相手だっていますから! 女性ロッカー室になんて、絶対に入ってきません!〕

 二人きりになったとしても、押し倒されるとか、襲われるとか、そんなことは起きっこないだなんて、宥めてくる七羽ちゃん。

「七羽ちゃん……本当に心配なんだ。考えてみてくれないかな。転職」

 数斗が静かに七羽ちゃんに語りかけるみたいに言った。
 冷静だな、とは思ったのは一瞬で、膝の上で固めた拳がワナワナと震えている。
 ドクズ男にお怒り堪えて、七羽ちゃんに心配だってことを訴えているんだ。

 数斗~! お前は、いい男だな! 隣で寝ちゃった七羽ちゃんにも手を出さなかったし!

〔……わかりました。考えておきます。ごめんなさい。心配してくれて、ありがとうございます、皆さん〕

 シュン、と眉を下げる七羽ちゃんは、おれ達の心配が伝わったようで、さっきのキョトンとした反応を謝ってくれたみたい。それから、心配してくれたことにお礼。

 よし! 七羽ちゃんが転職する意思を、僅かながら持ったな!

「おれ達は、大切にするお兄ちゃんな友だちだもん! もちろん!」
「転職の相談も受けてやるからな。あと、その下種野郎は、今まで以上に警戒するように。……てか、お前、フリーだとバレてる?」
〔えっ? ……ええーと、ずっといないって……部門内では言っちゃいましたね……〕
「知られてそうだな。その下種のルックスは? いいのか?」
〔いえ? 生理的に受け付けない相手をイケメンと思わないでしょ……。客観的に見ても……イケメンとまでは言わないかと〕

 新一の問いに、ややげんなりした顔になっちゃう七羽ちゃん。
 ……そりゃそうだ。七羽ちゃんの中では、そのドクズ男はヘドロレベルじゃない?

「じゃあ、コイツの写真見せて、カレシだって言っとけ」

 ピッと、人差し指を数斗の頬に突き付けた新一。

 イケメンカレシ! 数斗ほどのイケメンの恋人がいるのに、不倫野郎に靡くなんて思わないよな!?

〔えっ〕
「いいじゃん! 虫除け! むしろ魔除け! イケメンカレシがいるって言えば、魔除けになる!」

 って、勢いよく乗り気になったおれだけれど、ハッと我に返る。

 これは、勝手に数斗を恋人に押し付けてる感ない……?
 職場に数斗をカレシだって言い触らせって……外堀埋めさせてるようなもんじゃん……!

〔う、うーん……昨日も電話しているところ見られましたし…………数斗さんが良ければ、魔除けにしていいですか?〕

 七羽ちゃんは困った様子に悩んだけれど、意外なことにあっさりと数斗に許可を求めた。

「もちろん、いいよ。七羽ちゃんの身の安全が守れるなら」

 微笑む数斗も、すんなり許可を出す。

 さっきまでワナワナと震わせていた拳が、ガッツポーズしているようにしか見えなくて、噴き出して笑いそうになった。

「ナイス」と、小さく新一によくやったと褒める。七羽ちゃんに見えない位置で、新一は親指を立てる。

〔ありがとうございます。本当に心配かけちゃって……。そういえば、今日は何してました? 数斗さんと新一さんは、二人でカラオケに?〕

 にこりとする七羽ちゃんは、ドタキャンしてしまったカラオケ店で遊ぶはずだった予定はどうなったのか、と尋ねた。

 数斗が七羽ちゃんのためにもって新型ゲーム機を買って、それを新一がセットして、七羽ちゃんに新作ホラゲーのプレイを見せるために、数斗が前作のホラゲーを練習してたんだけど……。
 それ、言っていいのか?

 数斗も新一も顔を合わせて、考える。
 その時間が長く感じたので、おれがアシストすることにした。

「カラオケなんだけどさ! 七羽ちゃんの友だちも誘って、ワイワイしない!?」
〔え? 私の……?〕
「うん! だめ? ほら、カレシ持ちの仲いい子! いるって言ってたでしょ? そのカレシさん達も一緒に、大勢でパーティー状態で!」

 七羽ちゃんの友だちを見定める作戦のためにも、カラオケに誘ってもらおうと提案!

〔んー……でも、休みが被らないと思うんですよね……〕
「あ! 別にいいんだね!? 会わせてはくれるんだ!?」
〔あ、はい……真樹さん達のことは、もうツブヤキに書いてますし……私の友だち側もいいと言えば、一緒にワイワイもよさそうですね〕

 七羽ちゃん、ワイワイを楽しみたいみたいで、表情を緩ませた。
 乗り気! よっしゃ! 楽しむついでに!

〔今月は、真樹さんも新一さんも、休みが被らないですよね? じゃあ来月に、同じ日に休みを取ります?〕

 問題は、カラオケパーティーの実現か!

「ん~! ……オールとか無理? 夜なら、みんな参加出来ない?」
「だめだよ、七羽ちゃんが……」

 ダメもとで、仕事上がりの夜にしないかって言ってみたけど、朝早い七羽ちゃんは難しいだろう。
 数斗も七羽ちゃんの疲れを気にして首を横に振る。

〔オールですか? ふふ、高校の時にやろうとして、結局喉が耐え切れず、眠気にも負けて、解散しちゃったことがあります。楽しそうですね~〕

 なんて、七羽ちゃんが乗り気の反応をした。

「いいの!? オールナイト!」
〔私は次の日、休みならいけますけど……。あと、友だちのカレシの人は、夜勤が多かったはずなんで……微妙なところです。とりあえず、誘ってみますね〕
「おおー! いいね! お願い!」

 よっしゃ! スムーズにいけそうじゃね!?
 新一がまた親指を立てた手を上げたので、おれの方から拳をコツンと当てた。

〔んー、そうなると……今週の土曜が私の休みなので、金曜日の夜? 他の人は参加しやすそうですね。皆さんは?〕
「今週の? おれは全然オッケー! 花の金曜日!」
「俺も平気だよ」
「おれも」
〔じゃあ、友だちの方に聞いてみます〕

 よしよし! 七羽ちゃんの友だちを見れるぞ!

〔……ん~。あの、えっと……友だちを友だちに紹介するのって、初めてなんですけど…………みんな高卒なので、大卒の皆さんに萎縮したり、話題がなかったり、相性悪かったりしたら、どうしましょ〕
「いや、心配しすぎ! それぞれの仕事の話とかも趣味とかも話題あるって! 一番はカラオケなんだから、曲の話でいいじゃん!」

 七羽ちゃんが急に顔を曇らせるけど、それは無用な心配だと笑い退ける。
 おれなら、盛り上げる自信しかない!

「別に悪い人間じゃなければ、大丈夫だろ。変な悪癖があったりするのか?」
〔悪癖……? それは……ないかと〕
「それとも、おれ達の方が失礼しないか、心配か?」

 新一がニタリと意地悪を言うから、七羽ちゃんは苦笑いで首を横に振る。

「改めて、どんな友だちか、聞いていいかな?」
〔あ、はい。んーと、先ずは祥子(しょうこ)です。中学の時に転校してきてから付き合いがあります。医療事務員勤め。性格はぁ……サバッとしていると思いますね。悪く言うと、キツイ性格だとは思うんですが、初対面なら愛想がいいはずです!〕
「俺達の出会いのきっかけを作った子だね?」
「七羽ちゃんの悪口言った子……」
「縁切った方がいい奴」
「「新一」」

 バッサリ言う新一を咎めるように、おれと数斗で名前を呼ぶ。お前の性格もキツイよ。

 かなり七羽ちゃんの話から聞いている子だ。
 お洒落を頑張った七羽ちゃんを、チャラくてウザいとか言ってたから、それ聞いちゃった七羽ちゃんが、レストランに逃げ込んで、おれ達と出会ったわけ。

〔忘れてください……触れないでください〕と、七羽ちゃんは苦い顔をする。
 うん、大丈夫。言ったりしないって。


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