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○4 悪魔の熱い想い。
「……」
「……」
少し沈黙すると、ゼノヴィスはそっと頬を撫でてきた。
「どうして? ディナ」
優しく尋ねるから、ポツリポツリと吐露する。
「ゼノヴィスと、またやり直すのが怖かったの……虚しいだろうから……。それが繰り返されるなら、余計……私は心をすぐに壊してしまうと思って……ごめんなさい」
「ディナ」
ポロリと涙も落ちた。
「ごめんなさい、自分のことばっかりで。ゼノヴィスは100年もここに閉じ込められたのに……私が出さなきゃもっと閉じ込められる……本当にごめん。せめて、出してあげに来ればよかったね。前回、いっぱい助けてもらったのに」
「違う。違うよ、ディナ。そうじゃない」
私の目元を拭うゼノヴィスは、首を振った。
「オレと言うイレギュラーをみすみす手放しちゃだめでしょ、また死ぬことになったかも。そしたら、オレは前回を覚えていないオレだったかもしれない。だから……ごめん、怖かった。初めは準備で遅いだけかと思ったけれど、前回オレが助けられなかったから、他の手段を選ぶのかと思って、焦って呼び続けたんだ。魂の形を覚えていたから、なんとか届いてよかった」
「……頭、痛かった」
「えっ、それはごめんっ」
頭を、なでなで。痛かったよ、ホント。何日も。
「オレは、前回と同じオレだよ。ディナが好きで、婚約解消が成立したら、ディナにちゅーしたかった悪魔だよ」
「んっ」
すりすりと頬擦りしてくるから、くすぐったい。
「ディナ……本当にこの中は酷い孤独なんだ。時間の経過もわからないくらい、真っ暗で、やることなんて魔力を練り上げて貯め込む以外、なかったんだ。あと何年、閉じ込められるかもわからない気が遠くなる恐怖。悪魔だから、気が狂うなんてそう簡単でもなかったから、余計苦痛で。だから、オレは……本当に本当に、感謝しているんだよ? ディナ」
ゼノヴィスの両腕が、ギュッと私を抱き締めてくれた。
それは今まで聞いていなかったゼノヴィスの苦しみ。
「あの暗闇から救い出してくれた君への恩は、絶対に死に戻りの運命から救うことだって決めてたのに……ごめん。あんな……あんな油断で、ごめんっ……。今回は、絶対に死なせない。もう殺させない。守る。守るよ、ディナ」
私の首元に顔を埋めて、顔ずりして、ギュッと締め付けるゼノヴィス。
「君を救うから、対価に君をちょうだい」
「ゼノヴィス……」
「君の全部をちょうだい、ディナ。君が好きなんだ。大好き。愛しているんだ」
甘く告げるゼノヴィスは、うっとり熱く見つめると、唇を重ねてきた。
だめだと頭ではわかっていたのに、身体は強張るだけで抵抗らしい抵抗もせず、唇が重なることを許す。
優しく包み込む両手は、私を放してはくれない。
「ディナの全部が欲しい。それだけなんだ……ちょうだい、ディナ」
ほう、と吐息を零して、また口付けをするゼノヴィス。
「ゼノヴィス、だめっ。わた、私……まだ、婚約が……」
「ん。やだ。またディナを殺した奴なんか、裏切っていいんだよ。悪魔が許してあげる」
「ぜ、ゼノッ」
身を引こうとする私を許さず、腰をグッと抱き寄せるゼノヴィスは、また口付けをしてきた。
真っ赤になってゼノヴィスの肩を押すけれど、びくともしない。
立ち上がりたいのに、初めてのキスにすっかり腰が抜けて、ゼノヴィスの膝から降りれなかった。
「ああ、やっとちゅー出来た……ディナの唇、柔らかい。美味しいな」
「んっ!」
ぬるっと舌がねじ込まれてしまい、私はびくりと震える。
舌が私の歯並びを確認するように口の中を撫でて、口の上もなぞるから、ゾクッとした。
フッと苦しく息を吐いても、ゼノヴィスはやけに長く感じる舌を絡めてきては、じゅるっと音を立てて私の舌を吸ってきたのだ。
「ゼノぉ……」
「んぅー、ディナ……」
深い口付けの行為中に、口の端から零れた唾液を、ゼノヴィスは唇を這わせて舐めとった。
恍惚して瞳を細めたゼノヴィスは、とろける微笑みを零す。
こてん、と私の肩に頭を乗せる形で、私を見つめた。
「ゼノっていいね。いい響き」
そう愛称と受け入れて、気に入った様子。
「もう、ゼノ……。まだ婚約関係なんだって……あっちもまだ出会ってないし」
「浮気しちゃったね。でも先にしてもいいじゃん。ディナに”裏切り者”って言って短剣を突き刺したの、意味わからないんだけど」
「私も意味わからないけど、追い込みすぎたんじゃないかな。ネズミも追い込まれれば猫を噛むでしょ」
「猫を噛むどころじゃないでしょ……」
のぼせそうな私は、一応苦言を呈した。
悪魔はなんのそのな態度。確かに噛むという反撃とは、言い難い。
「その婚約は、今どういう状態?」
「私が解消を願い出たところ。傷心しているのを見て、家族もそっとしてくれてはいるけれど、いつまで持つかはわからないな……マズかった?」
追い込んだネズミの逆襲を考えたら、婚約解消を願い出たのはマズい行動だったのかな、と不安になった。
「ううん。色々考えてはいるけど、まぁ、それは帰ってから詳しく話すよ。今日はどうやって来たの?」
「頭痛の原因がゼノヴィスが呼んでいるからだと気付いて、そのまま散策のためのおともを撒いて来た」
「撒いたんだ。……傷心してたの?」
気遣う眼差しで私の頭を撫でるゼノヴィスに、また涙が込み上がる。
それを見て、すぐにゼノヴィスは抱き締めてくれた。
私も抱き締め返す。
「ゼノ。私も油断してごめんね。覚えているなら、つらかったでしょ」
「ッ……ディナ……」
ゼノヴィスの背を撫でると、彼は軽く肩を震わせた。
「でも、一緒に過ごした時間を覚えててくれて嬉しい……」
ぐすん、と鼻を啜り合っては、抱き締め合う。
「私も好きよ、ゼノ」
「……うん」
「好き……」
「オレもだよ、ディナ。好き」
ちゅっと、頬にキスをして、まだギュッと密着。
ぐりぐりと頬擦りして、髪に顔を埋めて匂いを吸い込むゼノヴィス。
ぎゅうぎゅうと抱き締めて、すりすりするのは、ゼノヴィスの愛情表現なのかな。
私は、ポンポンと頭を撫でた。
「でも、浮気はやめよう」
「……」
「……ゼノ? お返事は?」
「……」
じっと見つめてくるのに返事をしないゼノヴィスは、やがてにっこりと笑みを作る。
それから、ちゅっとまた唇を重ねてきた。
逃げようとしたのに、しっかり両手で固定したゼノヴィスは、許してくれない。
「ん~~~~っ!」
私を想う悪魔は、なかなか放してくれなかった。
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