婚約破棄された悪役令嬢は自由に生きようかと。~気分転換に冒険者になったら指導担当が最強冒険者で学園のイケメン先輩だった件~

三月べに

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二章・多忙な学園の始まりは、恋人と。

85 最強クラスメイトは元から大物。(友人そのA②)



 ほぼ断定、ルクトの恋人。

「ルクト先輩は楽しそうですか? 学園でも」
「はい? え、えっと……多分? 人並みに、自分達と学生生活を楽しんでますよ?」

 と、なると、なんなんだろうか。この探りは。
 果たして、答えていていいのだろうか。
 助けて、ルクト。

「……ルクト先輩の元パーティーの方々についてはご存知でしょうか?」

 静かな問いに、納得した。

「あー、はい……まぁ。アイツらは、やめましたけど」

 入学当初から、親友って間柄だった生徒が数人いたが、ルクトから離れて行っては、辞めてしまった。
 ルクトが最強すぎて、仲間であるアイツらはついていけないって、八つ当たりみたいに言っては、突き放してはいなくなったんだ。
 その話を聞けば、交友関係も心配になるよな。

「大丈夫ですよ? ルクトは、普通の学生らしく、自分達とお喋りをしたり、ランチしたり、してますんで」
「それを聞けて安心しました。先輩のようないいご友人も、クラスにいらっしゃるんですね」
「へっ!? いや、自分はそんなたいそうなことはしてないんですけどっ」

 可愛らしく笑いかけられて、ボッと顔を真っ赤にする。
 正直恥ずかしい。
 本当に、特別気にかける友人という自覚もないので、いい友人と称されるのは、気恥ずかしい。

「ふふ。そうだ。私、ルクト先輩から直接聞いたのですが……告白されたことがないって、事実ですか?」
「はい、事実です!」

 微笑んでいるのに、声が鋭利になった気がするので、ビシッと背筋を伸ばして、エリオットは力強く答える。

「どうしてですか? ルクト先輩は、モテますよね? 告白の一つや二つ、経験あると思うのですが」

 と、戸惑うリガッティーにお答えしよう。

「先程話した通り、ルクトは机に突っ伏して寝てる時が多いですし、放課後は図書室か冒険にすっ飛んでいきますので。女子生徒がアプローチする隙が皆無だったんです! 最初の一年で呼び出しを全て断りまくったおかげで、ランクアップで有名になっても、呼び出しすら聞いてもらえなかった女子生徒には難易度が高く! さらには、仲良くなろうと起きている時には話しかけても、のらりくらりとかわす! モテるくせに、冒険一途! それがルクト・ヴィアンズなんです!!」

 今後のトラブル防止のためにも! ルクトには、一切の女の影がないことを言わねば!!
 クラス一同で、頷きで肯定する。
 クラスの女子生徒は、すでに、ルクトを恋愛対象外にしているくらいだ。
 一途で安心安全だと、太鼓判が押せる!

「まぁ、本当だったのですね。学生のうちに、一度ぐらいは、見目のいい相手にラブレターを出したりするものだと思っていましたわ」
「あぁー。ルクト自身は知らないんですけど……机の中や下駄箱の手紙に気付かずじまいが多発して、出した本人が泣く泣く回収していって、早々にラブレターを読まないイケメンと認識されました。って、じゃあ、ファマス侯爵令嬢も経験が?」

 こんな美少女だ。告白なんて星の山ほど……。

「えっ? 私ですか? ……私は婚約者がいましたので、ありません」と苦笑。

「(ヤベ! そうだった! 王子の婚約者に、ラブレターを送るアホ男はいない!! なんつーことを言ってしまったんだ! 伯爵令嬢がおれを睨んでるぅううっ! なんだよ! みんな授業中みたいに黙り込んで聞いてるだけのくせに!! 誰か代わってくれよ!!)」

 すると、心のSOSの叫びが通じたのか。

「あれっ? リガティがなんで教室にいるの? 幻?」

 と、ひょっこりと窓から現れたルクトが戻って来た。

「(きゅ、救世主ー!! と歓喜したけれど、いや待て!! そもそもお前だよ!! お前のせいでこうなってんだよ!! 一体何したんだよ!?)」

 救いに思うのも一瞬で、恨めし気に思う。
 それもまた、一瞬。

「ルクトさんっ」

 ふわりと笑みを零して、可憐な声を弾ませるリガッティーに、クラス一同、胸をズキュンと射抜かれる。

「(今まで先輩呼びだったのに、さん付けで呼んでは、そんな可愛らしい少女の笑み! なんて可愛さだ!!)」

 全員ノックダウン。

「何故窓から? ここ4階では?」

 キョトンと首を傾げる仕草も可愛いと見惚れるが、ルクトの非常識さに引かないで! と焦る。

「購買に行ってた。最短距離だから。来るって知ってたら、行かなかったのに」
「ふふっ。来ちゃった♪」
「いや、ソレ可愛すぎ……」

 特に引いた様子もないリガッティーにホッと安心するが、”来ちゃった”の破壊力がすごいと胸を押さえる。
 見ていてすごいのに、向けられたルクトは、デレデレ。
 見た顔だ。これ、さっきの緩い顔。

「(やっぱり、さっきのカノジョの話! ご令嬢のことか!? 大物カノジョ!!!)」

「ホント、制服姿も可愛い……」
「ルクト先輩も、素敵ですね」

「(制服デートなんですか? このあと、そのまま制服デートに行くんですか!?)」

「リガティ後輩は、どうして連絡もなしに教室に来たのかなー?」

 ルクトは、恐れ多くも高嶺の花の髪を撫でては、耳飾りを摘まんだ。
 同じ赤い輝きの耳飾り。

「(いや、カノジョならいいのか? いやでも、マジでカノジョなの? いいのソレ!? やっぱりお揃いのピアス!!)」

 もう誤魔化せない現実。それでも受け止め切れない。

「(てか、何? ”リガティ”って! 愛称なの!? そんな恐れ多い呼び方ってある!? お前は何様なんだよぉおおルクトぉおお!!)」

 もうルクトがわからない。

「ルクト先輩の身辺調査ですよー。ちょうどいらっしゃらなかったので、根掘り葉掘りお尋ねしました」
「えー? 何? オレ、嘘言ってなかったでしょ?」

 冗談めいて笑うリガッティーに、困り顔でエリオット達を見るルクト。緊張が走った。
 ルクトの初めてのカノジョである。果たして、探りを入れた内容を白状していいものか。
 オロオロと、リガッティーとルクトを見比べてしまった。
 ルクトが怒るかどうかも気になるが、リガッティーが大物すぎて慎重にもなる。

「確かに、ご友人方にも告白などは受けていないと聞きましたけど……些か、異性に冷たすぎる印象を受けました」
「えっ! いや、別に……いいじゃん。今後もリガティ以外からの好意を受け取る気ないし、思わせぶりはよくないでしょ。だめなの?」

 ラブレター無視の件だろうなぁ、とヒヤヒヤする。

「オレはリガティのものだよ?」

 リガッティーの手を取り、甲に口付けて熱く見つめるルクト。

「(ゲ、ゲロッ! ゲロ甘っ!! 今なら砂糖吐けそう!! え!? 何コレ!? あの冒険一途で異性のアプローチをかわしまくっていたルクトがっ!!! メロメロじゃん!!! 人生捧げちゃうくらいゾッコンじゃん!!!)」

 甘い雰囲気に震え上がる。

「(いや一生の伴侶ってさっき言ってた!!! マジだ!! マジのマジなヤツだ!!! もう何に震え上がっているかわからないけれど、慄いた!!)」

「も、もし!」と、そこに声をかけるのは、伯爵令嬢。

「(アンタ今動くか!? チャレンジャーか!! でもビビりまくっている姿勢だなおい!!)」

 伯爵令嬢。引け腰感ひしひし。

「なんでしょう? 先輩」

「せ、先輩呼びっ」と小さな黄色い悲鳴を上げる伯爵令嬢。
 すでにノックダウン寸前でよろける。何しに来たアンタ。

「あら? お嫌でしたか?」
「いえいえ滅相もございませんわ!」

「(そうだよな、こんな可愛すぎる後輩に先輩呼びされるなんて、嫌なわけないよな! 大ファンは、歓喜だろうな!!)」

「その、えっと……ええっと……」と口をこもらせる伯爵令嬢が、何を言うのか、一同はゴクリと息を呑み込んで見守った。

「そ、その……ヴィアンズさんは……ど、どうやら、お付き合いをしている方がいらっしゃるようなんですが……」

「(そ、そこから、攻めるか!? 一瞬だけ、ルクトが悪い遊びに目覚めたんじゃないかという危惧が浮かんだけれど、それはない!! この女神に対して、遊びとか無理!! あり得ない!! 今のが、たった一つの真実の愛じゃないなら、この世に愛はない!!)」

「……」
「……」
「……」

「(ええ!? そこで沈黙!? 確かに言葉を向けられているのはリガッティーだから、ルクトも黙ってリガッティーを見ているけれど、伯爵令嬢も言葉を止めるな! ご令嬢は、なんで微笑んだままなの!?)」

 ニコニコしたままのご令嬢を前にして、伯爵令嬢が踏み出した。

「そういうことで間違いないのですねっ?」

 ニコッと、笑みだけを返すリガッティー。

「(貴族令嬢の意味深の笑み!!! ええっ! 待って! はっきりして!? もう一思いに断言してください!! 憶測が飛び交うから!! 侯爵令嬢様がお遊びするわけないと思うけど! 婚約破棄事件の直後だから!! 身分差もあるし! 心配しかないんだよ!!)」

 ほら、もう大ファンの伯爵令嬢が蒼白な顔で立ち尽くしてる! 色々想像しているよ絶対!!
 ルクト! お前がなんとか言えよ!! と、エリオットは視線で訴えた。

「オレも、昨日侯爵様に、って釘さされてるから……」と、むくれたように言う。

「(こ、侯爵様……? え? ファマス侯爵のこと? ハッ! 両親に会ったって言ってたなさっき!!)」

「あら、お父様がそんなことを?」
「うん。学園内でも、思う存分寄り添って牽制して来いって、義父様が許可出してくれた」

「(お、おとうさまー!!? 義父呼びが許されたってことは公認……!? 牽制ってことは、本気の交際が認められている!?)」

 ルクトがリガッティーの腰を引き寄せて、ぴとっと頭に頬を重ねて密着。



 と、ルクトは伯爵令嬢に見せ付けた。

「っ……! か、かしこまりましたっ……!!」

 伯爵令嬢はふらつきつつも、意をくみ取ったと拳を固めた。
 今にも血涙出しそうだ。そのまま、退場。

「(明言しないけど、恋人確定! まだ明言出来ないけれど、そのうち公に出来る関係! 気になる! 気になるぞ、ルクト!!)」

 しかし、まだ教えてはもらえないようで、困ったように笑うだけのルクト。

「あっ、そうだ。テオくんにも会ったよ」
「テオ殿下に?」
「うん。アリエットちゃんと一緒に、リガティを捜してたよ?」
「あらまあ、入れ違いですか。ではカバンを取りに行くついでに戻らないと。私、戻りますね。じゃあ、待ち合わせ場所で、また」

 ルクトが教えると、リガッティーはすぐに戻ると言った。

「お邪魔させていただき、ありがとうございました。先輩方」

 ほんわかと微笑んで、リガッティーはルクトのクラスメイトにお礼を伝えると、ひらひらと上品に手を振って教室をあとにする。
 ほんわかして手を振り返したのは、一部だけだ。

 青褪めたエリオットは、ルクトをぎこちなく見上げた。

「な、なぁ……ルクト? その……て、テオくんって…………まさか……」

 テオという名に続いて出てきたアリエットの名。
 今年の大物生徒、第二王子のテオ殿下。そして、アリエットは婚約者の伯爵令嬢の名前だ。



 ケロッと、なんでもないように言うルクト。

「(絶対に第二王子とその婚約者だよな!? なんでそんな気安く呼んでんの!?)」

 友人が大物すぎてついていけない。
 エリオットは、頭を抱えた。

「……でさぁ。今日のデートでファーストキスは」

 真顔に戻ったルクトが相談をする。
 今日の制服デートで、ファーストキスをするか否かの相談。
 教室は、絶叫が木霊した。

 大半が反対する絶叫だったが、最終的には「今日はやめとけ」という説得で終わる。

「お前が大物だってことはわかったけれど、今日はやめとけ! 今日はやめとけ!!」

 エリオットは胸ぐらを掴んで必死の形相で、ルクトに言い聞かせたのだった。


 

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