マカイ学校の妖達と私。

三月べに

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16 無自覚。(大神狼視点)

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 抱き締めてしまった。
 小紅芽さんを衝動にかられるがまま。
 彼女は、とても柔らかくて、小さいと感じた。

「落ち込んでる?」

 校庭の隅の階段に座っていた俺に話しかけてきたのは、和真。
 缶ジュースを持って、渡してくれた。
「ありがとうございます」と受け取り、一口飲む。

「別に落ち込んでいるわけではないですが……」
「でも悩んでるように見えるけれど?」

 和真にはそういう風に、目に映っているらしい。

「抱き締めてしまったのですよ……女子生徒を」

 雅に聞かれたら厄介だと、いないことを確認してから、俺はそっと和真に打ち明けた。

「え? 何それ? 狼がそんなことするなんて、脈あり? それとも事故?」

 和真がすぐにニヤニヤし出す。

「事故と言えば事故、ですかね……」
「どうだった? その女子の抱き心地は」

 このこの、と肘でつつく和真に問われて、少し思い返してから答える。

「やわらかったですね」
「やっぱり胸?」
「いえ、全体的に」

 ちょっと咎める視線を向けてから、俺は思い出した。

「あといい匂いがしました。花のような香りでした」
「あ。もしかして抱き締めたのって、小紅芽ちゃん?」

 その名前が出て、驚く。
 まぁ普通に考えて、出やすい名前だろう。
 俺が親しくしている女子生徒なのだから。

「俺も今日画鋲踏み付けた小紅芽ちゃんを抱きかかえたんだよ、保健室まで。その時花の香りした」
「……そうでしたか」
「おや? 狼くん、嫉妬した?」
「なんで嫉妬をするのですか」

 またもやニヤつく和真は、ピコピコと頭の上の耳を動かした。

「恋だと思うね。小紅芽ちゃんを抱き締めたのは」
「詳細を話していないのに、決め付けないでください」
「じゃあ話してみろよ、その抱き締めた経緯をさ」

 和真に促されて、話そうとした時に、雅がスタンと目の前に降り立つ。

「なーに? 何の話をしてるの?」
「べっつにー?」
「大した話ではないですよ」

 和真は伏せてくれた。

「それよりさ、あの黒猫。どうするー?」
「小紅芽ちゃん付きまとってる黒猫? しつこいよね! なんなんだろう!?」
「ああ、いますよね。ずっと」

 和真が話題に出したのは、小紅芽さんについて回っている黒猫の妖。さっきの帰りも小紅芽さんについて来ていた。
 魔界から来たようだが、結界をすり抜けるほどの弱い妖なのか、それとも逆に強い妖なのか。正体不明。
 調べようがないのだ。小紅芽さんの目の前にいるから、雅も和真も聞き出せない。
 俺が聞き出そうか。俺は小紅芽さんが視えていると知っている。
 もう少し一人で楽しみたいが、俺のせいで小紅芽さんが嫌がらせに遭って怪我をした負い目があった。そろそろ話すかな。

「けれども、危害は加えていないようですよ」
「そうだね。なんか傍観しているだけって感じ」

 車に轢かれそうになった黒猫を、助けた時もあった。
 それで視えていると確信したのだが。
 お人好しなのだろう。彼女は。
 付きまとう妖を助けてしまうくらい、優しい人。
 無意識に口元が緩んだ。

「まーたー狼が思い出し笑いしてるー。小紅芽ちゃんのこと考えてただろ?」
「……」
「図星だ!」

 和真と雅は揃って、俺を笑った。

「それにしても、暫くは目を光らせておかなくちゃね!」
「幻獣に遭って、黒猫に付きまとわれて、嫌がらせには遭うわで、小紅芽ちゃんも災難だよな。目ぇ離せない感じだよな? 狼」
「……そうですね」
「小紅芽ちゃん、守り隊結成!!」

 小紅芽さん守り隊か。
 張り切る雅を見て、俺は苦笑を漏らす。
 さて。いつにしましょうかね。
 彼らに打ち明けるのは。
 せっかくだから、小紅芽さんにここに来てもらって、自ら明かしてもらいましょうか。
 そうすれば、さらに楽しい時間になる。
 大体、体育祭あとがいいでしょうか。
 小紅芽さんに明日提案してみましょう。
 俺はそう小紅芽さんの反応を想像して、また無意識に口元を緩ませた。


 
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