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07 別のもふもふ。
しおりを挟む門を出てから、北に向かう。
一時間ほどの距離なので、半分くらいの地点で休憩を挟んだ。
「足を痛めていませんか? 疲れていませんか? 大丈夫ですか?」
「あの、全然大丈夫ですから」
岩に座る私の前に跪いて、甲斐甲斐しくするルヴィ様。
彼に黄色い声を上げる女性達が、こんな風にされたら、卒倒するのではないだろうか。
「……ルヴィ様は、たった一度見た私の素顔に見惚れて、ずっと想ってくださったのですよね?」
「はい」
「どうして、こんな小娘の笑顔一つで?」
「こんな小娘とは、自分をずいぶんな言い方をするのですね……」
ルヴィ様が、苦笑を溢す。
素の私の笑顔に惚れたとは、とても嬉しいけれど、美しく微笑む人は他にもいるだろう。
ましてや年下であり、王子の婚約者だった私に、それほど惹かれるなんて、不思議でならなかった。
「……レティエナ様の知っての通り、騎士の家庭で生まれ育ちました。何不自由なく、育ったくせに……勝手に人生に失望していたのです。あの頃の私は、目に映る全てが色褪せて見えていたのです。このままでいいのだろうか、と自問自答している時に、あなたの笑顔を見たのです。眩しいほどの美しいあなたの笑顔が……私の世界を美しくしてくれたのです」
深紅の瞳で真っ直ぐに見つめて、ルヴィ様は微笑んだ。
「心が……こう胸が締め付けるように、反応をしたのです。殿下の婚約者だから、芽生えてはいけない感情だと頭が考えるその前に、婚約破棄を望んでいるという話を聞きました。勝手ながら、その瞬間に芽生えた感情を大事に抱いたのです」
胸に手を当てて、懐かしそうに目を細めるルヴィ様が、右手を伸ばす。
私の垂れ下がった黒髪に触れたのだ。
「想ってもいいのだと、まるで後押しされた気分でした」
そっと優しくひと房、手にした黒髪に、口付けを落とす。
「こんなにも溢れんばかりの無邪気な笑みをする少女なのに、偽りの仮面を被っているなんてきっと孤独で仕方ないのだろう……そう想像すると痛々しくて、同時に自分が孤独を埋める存在になりたいと渇望したのです。こうして触れる時を待ち焦がれておりました」
黒髪を絡めた右手が、私の頬に触れる。
「レティエナ様の笑顔を独占したいと、常々思っておりました」
いつの間にか細められた目が、まるで獲物を見ているようなそんな鋭利さがあるように感じてーー。
「レティエナ様の全てが欲しいーーーーなんて、とても欲張りな感情まであるのですよ」
ゾッとするものを、覚えた。
「わかっていただけましたか? 私が本気であなたに恋をしていることを」
「……はい」
にこ、と笑いかけるルヴィ様は、私の輪郭をなぞった手を放す。
その手で、私の手を掴むと、引っ張り立たせた。
「あなたは素敵な女性です。自信を持っていてください。そして、自覚も」
自信と……自覚?
気付くと私は、ルヴィ様と手を繋いで歩いていた。
や、やるな、この人。
そしてきっとこの人は、ヤンデレ属性かもしれない。
そう内心で、恐れおののいた。
薬草は傷の手当てに使うもの。こういう依頼は、いつもあるらしい。小さな病院などで使うそうだ。
大きな病院だと、治癒魔法を使う医者がいるのだ。光の精霊に愛されているミミリー様には及ばないが、普通の怪我なら事足りる。
薬草の生える森に到着したから、いつでも戦闘態勢が取れるように、剣を抜いておいた。
手分けして集めようと提案したけれど「一緒にいましょう」と笑顔で返されてしまう。
薬草そっちのけで、レベル2の魔物探しをするつもりだとバレていたのだろうか。
結局、二人で薬草を探して、茂みを掻き分けた。三十ほどでいいと依頼書に書いてあったから、結構時間がかかりそうだ。なかなか見つからない。見付けたものは引っこ抜いて【無限収納】にしまっておく。
「それにしても……不気味さを感じる森ですね」
春と夏のちょうど中間の時期だというのに、枯れ木があちらこちらで目立つ。
そして、木から生えた葉は少々黒っぽい。
「北方面は、こんな森がざらにあります。魔王が君臨していた名残り、とでもいうのでしょうかね」
「魔王ですか。いましたね、三年前に倒されたのですよね」
「はい」
ルヴィ様が私に見惚れた一件よりも少し前に、魔王は倒された。
ここから北部の方に拠点を立てていたけれど、手練れの冒険者一行が倒したそうだ。
のちに彼らは勇者一行と呼ばれ、国王が感謝して褒美を与えた。勇者一行は金品を要求。
惜しかった……。魔王が健在なら、私は迷わず旅に出たのに。もちろん、魔王退治のため。
放っておけば、国に大打撃を与えるような危険な存在だったから、早めに対処したのは当たり前か。
「ルヴィ様は、その魔王の角を見たことがありますか?」
「ええ、拝見させていただきました。魔王の力、そのものらしいですね。勇者一行がそれに気付き、角を砕いたことで倒せたと聞きました」
私も、城に保管されている魔王の角を見たことがある。
昨日の魔獣牛と比較できないほど、巨大な黒い角だった。私が抱えても、重さで倒れてしまうのではないかと思うくらいの大きさ。それが頭に生えていた魔王は相当大きかったに違いない。
どんな魔王だったのだろうか。
そんな魔王を倒した勇者一行の強さも、気になるところだ。
しかし、国から金品を得た彼らは、今頃、豪遊暮らしをしていそう。
「魔王、という魔物を統べる存在が現れるなんて、とんでもないですよね」
ルヴィ様がそう言った。
「魔物は基本、同じ姿形をしたものを仲間と認識するだけだと言われています。魔物同士の仲間割れ、共食いも多い。それなのに、魔王はそんな魔物達を従えたというのです。早めに退治されてよかったですね」
手強そう。やはり私は魔王を討伐する旅に出たかった。
「!」
ずっと発動していた【魔力感知】が異変を察知する。魔物がいるようだ。
レベル2の魔物だといいのだけれど。
ルヴィ様に目配せをして、魔物を感知した方へと急ぐ。
どんどん北へと進むと、咆哮が飛んできて、肌がびりびりと痛みを覚えた。それでも突き進むと、大きな魔物を視認する。
木よりも大きく見えてしまうのは、真っ黒な毛に覆われた巨大な犬。それも、顔が二つあった。赤い瞳をぎらつかせて、前足を地面に振り下ろす。地獄の番犬、って感じだ。でも地獄の番犬って顔が三つだったっけ。
そんな目の前の魔物は、渡されたレベル2の魔物の資料の中には確かなかったはずだ。歩きながらざっと確認しただけだけれど、確かになかった。
こんなにも大きくて手強そうなのに、レベル1の魔物だろうか。まぁレベル1の魔物だとしても手強そうなのだ。経験値はそれなりに入るだろうと予想する。
何より私は、その魔物を一刻も倒したい理由があった。
前足を地面に振り下ろしているのは、猫らしき生き物を押し潰そうとしていたからだ。
猫はなんとかぎりぎりでかわしているが、押し潰されるのは時間の問題だろう。
目の前で、可愛いもふもふを殺されてたまるか!
「”ーー風よーー”!」
風の魔法を唱えて加速した足で、真っ直ぐに猫に向かう。
振り下ろされた前足を寸前のところで避けて、猫を抱えた私はついでのように頭上の肉球を剣で切り付けた。
二つ頭の巨大な犬は「キャン」と一度鳴いたが、怯むのもそこそこに、また鋭い咆哮を放つ。
猫を脇に抱えた私は一度離れるために走っていたが、攻撃に近い咆哮に耐えるため、足を止める。
しかし、ルヴィ様が横から現れるなり、私を抱き締めて盾になってくれた。それでも肌がびりびりと痛みを覚えたけれど。
「大丈夫ですか?」
「はい!」
猫を地面に置いて、私とルヴィ様は戦闘を開始する。
ルヴィ様が真正面から挑む。
すると、二つの頭の犬の口が赤く光り出した。
まさか!
予想は的中する。口から火を噴き出したのだ。
レベル1の魔物ではないと理解する。そんな技を持つ魔物は、レベル1ではないはず。
ルヴィ様は、剣で吐き出された火を両断した。火の粉を散らして”紅蓮の騎士”の名にぴったりな姿だ。
なんて感心している場合ではなかった。
ルヴィ様が真正面から行ったから、私はまた風の魔法で加速して、大きく遠回りをして木々の中を駆け抜ける。もちろん【忍者】のスキルを発動して。
魔物の背後を取った私は、風の魔法を強めて飛んだ。背中を踏み、首を落とそうと横から切った。
しかし、浅い。
背中を踏んだことで、気付かれて、身を引かれたか。
相手が火属性なら、水属性のヒュネロの魔法を使いたいと過るところだが、それでは面白くない。
「レティエナ様、何故そんな笑顔なのですか?」
しょうがなさそうに笑うルヴィ様を一瞥する。
「冒険をしているからですよ」
私は浮かべてしまっているであろう無邪気な笑みを深めた。
もう一度、魔物が火を吐き出すから、私はバク転してかわす。ワンピースを翻し、私は倒された木を飛び越えて間合いを詰める。
しかし、鋭利な爪を出した前足を振られ、避けるしかなかった。
追い打ちに、火を吐き出してくる。またバク転でかわした私は、並んだ二本の木を足場にして飛びかかった。
宙に飛んだ私に向かって、火が吐かれる。その対処方はあったけれど、先にルヴィ様が火の魔法を放つ。立ち上がる火柱が、魔物の火を吸収した。
って、このままだと、私も火柱に呑み込まれてしまう。
「”ーー氷結ーー”!」
私はその火柱をまるごと凍らせた。そして踏み場にして飛び越え、魔物の左の顔を切りつけた。
また浅い。
致命傷を容易く受けないとは、なかなかやる魔物だ。
着地をすると、大きく魔物は飛び跳ねた。その巨体で跳ねるから、地面が軋み揺れる。バランスを崩しそうになる私に向かって、火が吐き出される。鮮明な赤が迫り、咄嗟に後ろに飛ぼうとしたが、それよりも早く私の腰に腕を回したルヴィ様と一緒に横へ転がった。
「やはり対人戦闘とは違い、魔物相手では勝手が違いますね。大丈夫ですか?」
「ありがとうございます。そうですね。でも、それがいいんじゃないですか!」
「……ふふ、好戦的ですね」
「ちょっとルヴィ様? 離れていてくださいませ」
二ッと口角を上げてしまう私は、バーサーカー?
ルヴィ様が離れた隙に、私はバトンのように剣を一回転させたあと両手を前に突き出す。
「”ーー我を過ぎ去りし風よ、纏われ、踊り狂え、旋風の爪痕ーー”!!」
風の強大魔法をお見舞いしてやった。荒れ狂うように風が鋭利に切り裂く。黒い血飛沫と黒い毛が飛ぶ。
その魔法に怯んだ様子の魔物の背後に回り、風が止んだ頃合いで飛び込む。尻尾を切断。表現出来ない悲鳴を上げて、振り返った左の首を切り落とした。右の首まで切り落とす余裕がなかったため、その顔に足をつけて蹴って距離を取る。
ごろんと落ちる片割れの首を見て、痛みに耐えつつ怒りを露にして、口から火の粉を溢す魔物。
ルヴィ様の存在を、完全に忘れていたようだ。
死角に入ったのだから、攻撃しないわけもない。
ルヴィ様の一振りが、残りの首を落とした。
「流石、レティエナ様。お強いですね」
着地をすると、にこやかに褒めてきたルヴィ様。
「ルヴィ様も流石です。普通のレベル1の冒険者では、もっと苦戦していたでしょうか」
「いえ、きっと戦うことなく逃げ出すと思いますよ。普通は」
普通を強調するルヴィ様は、私達は普通ではないと遠回しに言っている。
ルヴィ様も魔法学園の卒業生。私はトップの成績者だった。備えている者が違うから、普通の冒険者と比べてはいけないか。
家庭環境はあれだけれど、恵まれた境遇だったと感謝をする。備えあれば憂いなし。
「そうだ、経験値をもらわなくては。こうやって翳せばいいんですよね。頭二つ分あるので、山分けできますかね?」
「私はあまり詳しくありませんが……きっとそうでしょう。では私も経験値をいただきますね」
周りにはもう魔物も魔獣もいないから、安心して冒険者プレートを出して、転がる頭に翳した。
すると。
レベルアップ!
の白い文字が表示された。
「やった、レベルアップですよ。レベル2の冒険者になりました。カリーの話を聞いて、もう少し多くの魔物を狩るべきかと思っていたのですが、やっぱり強敵打破はレベルアップに繋がりますね。ルヴィ様はどうですか?」
「同じくレベルアップしました。ほとんどレティエナ様がダメージを与えていたのに、なんだか悪い気がします」
「そこはいいじゃないですか、二回ほどルヴィ様には助けられました。あ、尻尾と胴体と頭をいただいてもいいですか?」
私もルヴィ様も昨日冒険者になったばかりなのに、レベルアップ。
ルヴィ様は首を傾げると尋ねた。
「……食べるのですか?」
「食べませんよ、魔物ですよ」
「冗談です」
魔獣と違って、魔物は食べれない。
「魔物の素材がお金になることがあるので、その足しにしようかと思いまして」
「どうぞ、私は必要ないので、こちらの頭も遠慮なく売ってください」
「ではお言葉に甘えまして……あら?」
【無限収納】に吸い込むように入れていれば、さっき助けた猫が歩み寄ってきた。
「あなた、逃げなかったの?」
てっきり遠くへと逃げているとばかり。
尻尾から頭までぼさぼさの毛が野良猫っぽいそれは、特に鳴くことなくヨロヨロと歩く。
「猫ちゃん、おいでー」
「レティエナ様。普通の猫が街の外で生き抜けるわけがありません。きっと魔物です」
「そういえば、【魔力感知】で黒い気配しか感じなかったです。魔物の猫ちゃんですか」
【魔力感知】では、魔物は黒の気配だと感じる。
人や動物は白。魔獣は灰色。精霊はその属性の色に輝くように感じる。
おもちゃはないから、指先をちょこちょこと左右に振っていれば、やがて魔物の猫はパタンと横に倒れた。
「い、生きろー!!」
せっかく助けたのに、目の前で死ぬなぁああ! 生きてくれ!
「落ち着いてください、レティエナ様」
どうすればいいかとしゃがんだまま慌てふためく私の肩に手を置いたルヴィ様。
「先程の魔物に怪我を負わされたのではないでしょうか。薬草を使えばいいのでは?」
「そ、そうですね。あっ、私は水の精霊の力で、強力ではないですが癒しの魔法も使えます」
「試してみましょう」
「はい。”ーー清浄の水の癒しをーー”」
ぷくぷくと水の中にいるようなそんな音が聞こえてくる魔法を行使した。
淡い水色の光に包まれると、閉じられた琥珀の瞳が開かれる。
「大丈夫?」
猫は相変わらずにゃーともすんとも鳴かない。
でも回復はしたようで、ちゃんと起き上がってくれた。
「よかった」
私はホッとして笑みになる。
「もう大丈夫?」
手を伸ばして、頭を撫でた。そうすれば、きゅるるるっと音が聞こえてくる。
デジャブ……。
「お腹も空いているのね。魔物なら魔獣の生肉も食べれるわよね」
昨日の魔獣を【無限収納】から取り出す。食べやすいように切ってあげようと思ったのに、目の前に出てきた牛肉の塊に目の色を変えてかぶり付いた。猫とは思えないかぶり付きで、引きちぎって咀嚼する姿は、やっぱり魔物らしいと感心する。
いい食べっぷりを見て笑みを溢す私は、魔物の猫の食事を邪魔しないように肉の塊をいくつか切り落とさせてもらった。当分の食料なので。
「いいのですか? 与えてしまって」
「私はこれで足りますので。行きましょう。私もお腹が空いてきました。少し薬草を探したら、森の外でお肉を焼きましょう!」
残りは魔物の猫にあげて、私達はこの場をあとにしようとした。
しかし、ブーツに違和感を覚える。
なんとなく足を前に向かって上げてみれば、宙ぶらりんの魔物の猫がかじり付いていた。
「おや、この恩知らずは、誰に噛み付いているかわかっていないようですね。切り捨てましょう」
「怖いです、ルヴィ様。落ち着いてください」
笑顔で剣を構えるから、どうどうどう。
こんな猫同然の魔物を切り捨てるなんて、酷い。
「何よ、傷も癒したし、お肉も分けたのに、なんなの?」
足を地面につければ、魔物の猫はじっと私を見上げた。
鳴かないのかしら、と思い頬をつついたら、がぶっと指を噛まれる。
「痛い!」
「レティエナ様!」
容赦なくルヴィ様が剣を振り下ろした。魔物の猫は、後ろに飛び退いて避ける。
「”ーーーー”」
何かを唱えたような、僅かにそれが聞こえたが、全然聞き取れなかった。
私とルヴィ様は唱えていない。なら、魔物の猫だろう。
「何をした?」
ルヴィ様が、睨むように見据えた。
すると、魔物の猫はどこかに走り出してしまう。
「レティエナ様、大丈夫ですか? 私がついていながら、こんな怪我を負わせてしまい……申し訳ございません!」
「いや、猫に噛まれたぐらいで大袈裟ですよ」
でも思いっきり噛まれたから、血が指先から数滴落ちてしまった。
「この失態は一生をかけて償います!」
「それは重いです」
何故そこまでしようとするんだ、この人。
ガサッと茂みが揺れたから、私もルヴィ様も剣を構えた。そこから現れたのは、さっきの魔物の猫。
口には薬草をくわえていて、私を真っ直ぐに見上げていた。丁寧にお座りまでして、受け取ることを待つ。
「噛んだくせに、薬草を……? 何がしたいの、この子」
「……レティエナ様。もしかしたら……使役してしまったのではないですか?」
「使役って……私が魔物を使役したってことですか!?」
首を傾げたら、ルヴィ様が気付いてくれた。
私はギョッとしてしまう。
魔物の使役は、魔法で可能だ。確か必要なのは、主人となる人間の血。それを飲んだ魔物が自分の名前を唱えれば、使役が完了となる。
さっき、名前を唱えたのか!
「使役してほしいならそう言えばいいのに」
「……してあげたのですか? 使役」
「餌付けまでしてしまいましたからには、責任を持ちますよ」
当然ではないか。餌をあげるなら、最後まで面倒見る。
「そうやってカリーさんの面倒を見ることにしたのですか?」
「……」
否定できないから、無言を貫く。
「レティエナ様。私も昨日のお肉で胃袋をがっちり掴まれました。どうぞ拾ってください」
「だから、あなたには立派な家があるじゃないですか……」
「なら燃やします……」
「怖いです……」
そんな捨てられた子犬のようなうるうるした目を向けても、私は騙されません。
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