遺品の声

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1章

3話「墓参り」

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「よし、鳴都君」
『ちょっ、いきなり投げないでください』
突然眞妬さんが車の鍵を投げ渡してきた
「鳴都君は車を出して来てくれるかい?ほら、君も行くよ、類君」
「…何か、分かったんですか」
「ついてからのお楽しみさ、君の彼女のお墓はどこだい?」
2人の会話を聞き流しながら店の表に出る
建物の横に併設してある車庫の鍵を開け、シャッターを押し開けた
素早く運転席に乗り込み、エンジンをかける
重低音を響かせながら車が唸った
「鳴都君、この案内通りに向かってくれ」
『はいはい、道案内頼みました』
助手席に眞妬さんが乗り込み、後ろに依頼人が乗り込んだ
「さあ、楽しい楽しいドライブの始まりだ」

『よし、ここであってるかい?類君』
「は、はい…この先の丘に、彼女の墓が…」
車のドアを閉め、木が生い茂る丘を見据える
かすかに波の音が聞こえた
「眞妬さん」
丘に向かって歩き出そうとすると、鳴都君に呼び止められる
『どうしたんだい?そんな怪訝な顔をして』
「どうしたも何も、彼女から何を聞いたんですか」
『特に?彼女からは死因と伝言しか聞いてないよ』
不服そうな鳴都君の手を振り払い、彼の目を見た
深くため息をついた彼は呆れたように歩き出した
『類君も、これが彼女の答えだから』
「は、はぁ…」
車のそばで呆けている類君に声をかけ、三人で茂みに向かう
『鳴都君』
「…なんですか」
少し先を歩く鳴都君に近づき小声で耳打ちした
『一応、“出せる”準備はしといて』
「…危険が及ぶんですか」
『分からないから、一応だよ』
「俺は依頼人を優先しますからね」
『君は真面目だなぁ、その必要はないよ』
鳴都君の横を通り抜け、少し先に躍り出た
段々と木々の隙間から光が漏れ出す
「どういう意味ですか」
『答え合わせまでのお楽しみ、もうすぐ答えが出るからね』

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