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徐州の場合

だから陶謙はクソだといっただろ

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 黄巾賊を退けた陶謙は調子に乗って、漢臣の朱儁を擁立しようとして失敗した。ざまぁ、古狸ざまぁ。副官の趙昱さんにさんざん反対されてたから赤っ恥だな。

 変わり身の早いクソ狸は漢王朝へと貢物をしようと言いだした。まぁ趙昱さんもこれには賛成だそうだが。

 しかし……どこにそんな余裕があるんだ? 他の州に比べりゃ十二分なほどに物資はあるが、貢物になんて使ったらキリがない。一応俺ら麋兄弟の財テクで貯蓄は殖やせてるが、中央に献金するほどの余裕はねぇと思うんだが。

 兄上が俺に相談するには、「東海の財産を分けて欲しい」だそうだ。あーあー、そんなことだろうとは思ってたよ。
 そりゃね、金はたくさんあるさ。でもそう簡単にほいほいくれてやるようなもんでもないじゃん。絶対ヤダね。

 でも結局兄上は折れた。俺も渋々承諾した。何てったって兄上の決定だ。必ず正解だというわけではないだろうが、少なくとも俺の判断よりは間違いがない。

 贈物は無事に都に届いたらしい。お陰で陶謙は徐州牧に任命されて、ほくほく顔だ。

 あ、そうそう。副官の趙昱さんだけど、元々無理強いして呼び寄せたんだって。でも余りにも趙昱さんが実直だから、卑怯な陶謙の奴は鬱陶しく感じるようになってきて、結局広陵太守に左遷よ。

 副官の後任は兄上だってさ。
 兄上は確かにクソが付くほど真面目だけど、それ以上に空気の読める人だから大抵の人とうまくいくんだよね。……羨ましいな。

「あ、兄上……」

「どうした、子方。張昭殿なら開放されたぞ。趙昱様のご尽力のおかげだ。許劭様は東海の実家に身を隠しておられる」

「ああ、えと、そうですか。……よかった」

 近頃の陶謙の傲慢は目に余る。自分に従わぬ人間は片っ端から投獄&拷問。兄上の超人的なバランス能力のおかげで憂き目を見る人はだいぶ減っていると思うけど。

 それにしても、新しく採用された連中は柄が悪くてしょうがない。
 笮融とかいう奴は僧の格好して仏教を布教してるのに、その実素人の俺がわかるほど滅茶苦茶なこと言ってる。あれは仏教という名前のナニカだ。気持ち悪い。
 曹宏っていう小男は卑怯な性質が陶謙と合ったのか、いつもひそひそ話を陶謙としてる。あれも気分悪いよな。
 許耽が一番マシだな。許耽自身は至って凡庸な奴なんだが、奴が率いてる兵士の態度が悪くて。確かに強いんだけど、品性がないというかなぁ。

 面倒な後輩が入ってきたもんだが、俺は直接連中とは関わらない。連中は陶謙お気に入りの直属みたいなもんだしな。くわばらくわばら。
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