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エルウッド、ロシュオ、サリッサ。そして
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キン───……と、剣を鞘に納めた時に鳴る鞘と鍔の音。
それは、ロシュオが『聖剣』を鞘に納めた音だった。
ロシュオの目の前には、切り刻まれ、左腕を肩から、右足を膝から切断された少年が転がっている。
大量に出血し、口をパクパクさせているが……ロシュオは、全く気にしていない。
すぐ傍にいるサリッサを呼んだ。
「そっちはどうだ?」
「んー、持ってないわね」
「じゃあ、エルウッドの方か」
ロシュオは、少年を無視して歩きだす。
サリッサと一緒に、エルウッドがいる十メートルほど先の広場へ向かった。
広場といっても、森の中にあるやや開けたスペースで、ここにエルウッドと、一人の少年が剣と剣をぶつけ合っていた。
「くっ……」
「悪いけど───きみは、オレの敵じゃない」
「あっ」
シュピン!! と、少年の剣が細切れになった。
エルウッドは、自分の剣を少年の首へ突きつける。
「フラッグを」
「くっ……」
少年がフラッグをエルウッドに渡す。
エルウッドは、剣の鞘で少年の首を強打。意識を刈り取った。
すると、少年の身体が発光……煙のように消えた。
エルウッドは言う。
「フラッグを失うとダンジョンから脱出する魔法か……」
「みたいだな。ところでエルウッド、フラッグは何本目だ?」
「十八本。やれやれ、歯ごたえのない相手ばかりで飽きてきたよ」
「あと三時間の辛抱だ。さて、少し休もうぜ……おいサリッサ、食いモンあるか?」
「あるわよ。もちろんお茶も。さ、殿下、休憩しましょ!」
「ああ、ありがとうサリッサ」
サリッサは、指揮棒のような杖を手に詠唱する。
「『レンタル。オーダー。ボロウ。レーヌン。ポケット。スキル……『収納』」
すると、何もない空中に黒い穴が開き、テーブルや椅子、茶器、ポットに入ったお湯などが現れた。
サリッサの魔法の一つ。『スキルレンタル』だ。サリッサに好意を持つ人物のスキルを借り、サリッサが自在に行使することができる。
魔法レベル95の、高レベル魔法。
『魔聖』であるサリッサにとっては、この程度の詠唱で発動できる。本来なら数十分の詠唱が必要なのだが、魔法使いとして高レベルのサリッサは、ある程度の詠唱破棄が可能だった。
サリッサは、エルウッドにお茶を淹れた。
「どうぞ、殿下」
「ありがとう」
「はい、兄さま」
「おう」
三人は座り、紅茶を飲む。
ロシュオは、テーブルの上にフラッグを並べた。
「なんか、つまんねーな……もっと手ごたえあるチーム、いねぇのかよ」
「兄さまったら、あんなに暴れといて」
「フン。やっぱ同年代じゃダメだな。王国騎士レベルのスキル使いと戦いたいぜ」
ロシュオがそう言うと、エルウッドは苦笑する。
「はは、確かに……ロシュオのレベルだったら王国騎士じゃないと相手にできないかもな」
「『五星』でもいいぜ?」
「ダメダメ。五星は王国騎士が総出でかかっても傷一つ付けられない。まぁ、今は任務で国には二人しかいないけどね」
「任務?」
「うん。五星が揃ったところは、オレでも見たことがない。国の守護に二人、他三人は任務で国外っていうのがデフォルトだからね。この国に三人以上の『五星』が揃ったこと、ないんじゃないかな」
「ヤベー任務なのかねぇ」
三人はお茶を飲みながら雑談。
予選の残り時間は、1時間を切った。
ロシュオは、椅子にもたれかかりながら言う。
「本選、どんな連中出てくると思う?」
「お兄さまの期待に沿えるような方、以外が出てくると思います」
「だよな。まぁ……エルウッド、チーム戦では仲間だけど、個人戦では……」
「わかってる。決勝で戦おう……ってことだろ?」
「ああ」
「それも楽しみだけど、個人的に気になる子がいるんだよなー」
「お。誰だ?」
エルウッドはニヤリと笑う。
「オレと一緒に新入生代表を務めた、黒髪の子だ。確か……ヤト・シキバだったかな。ヤマト国出身の」
「ヤマト国でしたら、シキバ・ヤトが名前ですね。あの国、家名が最初で後ろに名前っていう並びだったはずです」
「そうだった。サリッサ、物知りだね」
「えへへ……」
照れるサリッサ。
ロシュオはどうでもよさそうに聞く。
「で、そのヤトとかいう奴、強いのか?」
「ああ。とんでもなくね」
エルウッドは言い切る。
ロシュオは、少し興味が出たようだ。
「お前にそこまで言わせるなんてな。へへ……先にオレが戦いたいぜ」
「油断するなよ? 彼女……間違いなく実戦経験者だ。それも、相当な場数を踏んでいる」
「だから何だ? オレの敵じゃねぇ。楽しめるか楽しめないか、どっちかでいい」
「やれやれ……」
「お兄さま、単純ですから」
「うっせ。サリッサ、個人戦出るならお前でも容赦しないからな」
「残念。魔法使いの私は個人戦には出ませんので」
兄妹は軽口をたたき合う。
仲良しな姿に、エルウッドは笑った。
いい友人。たとえ、個人戦でぶつかり合うことになっても、ロシュオやサリッサとは仲良くしたい。
エルウッドは知らない。
かつて、この二人とキネーシス公爵家が、家族ぐるみで兄を殺害したことを。
すると、テーブルの上に置いたフラッグが静かに、淡く光り出した。
「お、なんだ……終わりか?」
「みたいだな。なるほど、このダンジョンに送り出した時と同じ、転移系の魔法がかかっているのか」
「みたいですね。しかもこの感じ……最初に転移した時と違いますわ。恐らく、三本集めると、別系統の転移魔法が発動するようになっているのでしょう」
「さっすが魔法の天才。我が妹ながら恐ろしいぜ」
「お兄さま! もう……」
軽口を叩き合いながら、三人は光に包まれ転移した。
◇◇◇◇◇
時間は少しだけ巻き戻る。
エルク、ガンボ、フィーネの三人は大量の『昆虫』に襲われていた。
ガンボは叫ぶ。
「チュータの野郎だ!! このスキル、間違いねぇ!!」
「あのネズミ顔のやつか!!」
「ネズミ!? これバッタじゃん!!」
スキル『操作』───チュータは、昆虫と小動物を操れる。
小動物だったら数匹。だが、昆虫だったら数百以上……このバッタは、チュータが操っているのは間違いない。
その理由に───少し離れた場所から、マルコスが見ていた。
「さて、あいつらのフラッグを奪って予選突破だ」
「ウス」
「チチチチ……さすがマルコス様。あいつらに雑魚チームけしかけてフラッグ奪わせて、消耗したところを狙うなんて」
スキル、『感情操作』
マルコスは、エルクたちにけしかけたチームの感情を操作。『敵対心』と『勇気』を植え付け、エルクたちを襲わせた。
どちらが勝っても消耗しているはず。そこを狙えば……フラッグは二本。つまり、予選突破ということである。
だが、この作戦には穴があった。
「任せとけ」
エルクが両腕を広げ、念動力を発動。
木々の葉っぱがブチブチと千切れていく。
エルクは両腕、五指を器用に動かす───まるで、一流の指揮者のように。すると、葉っぱが昆虫を包み、地面にポトポト落ちていく。
「おいおい、殺さねぇのかよ」
「ああ。操られてるだけみたいだしな……虫とはいえ、かわいそうだろ」
エルクは、木々の葉っぱで虫を包み無力化する……が、あり得ない。
数百以上の昆虫を、葉っぱで包む。そんな芸当、あり得ない。
チュータは愕然とし、マルコスも目を見開いた。
「な、なんだ……あの黒いフードの、暗殺者みたいなやつ!? チチチッ、おいらの虫を」
「……ロックス、行け」
「ウス……!!」
ロックスが地面に触れると、土が岩のように硬くなり、ロックスの身体にまとわりつく。
スキル『土装』
ロックスは、土を身に纏って戦う戦士だ。
そして、ロックスはエルクたちの前に飛び出す。
「……テメェか」
「オォォォォォ!!」
土で巨大化した拳がエルクを狙う。
だが、エルクは動かない。それどころか───笑っていた。
エルクの前に、ガンボが飛び出し……土の拳を頭で受けた。
ガッキィィン!! と、激しい音がして───ロックスの拳が砕けた。
「ぬ、ガァァァァ!?」
「馬鹿が。土の塊が、『鋼鉄』に敵うワケねぇだろうが……」
「ぐ、ぬ」
「近くにいやがるな? まぁいい……テメェは、これでも喰らいやがれ!!」
ガンボの『鋼鉄化』した右ストレートが、ロックスの顔面に突き刺さる。
慌てて土で顔をマスクのように覆ったが、あっさり砕け散った。
顔面が潰れ、鼻血が噴き出し歯が折れ、ロックスは吹き飛ばされ地面を転がった。完全に気絶したのかピクリとも動かない。
全ての昆虫を葉で包み終えたエルクは、両手を振る。
「みっけ」
すると───チュータ、マルコスの周りにあった木々がボコボコ抜けて倒れていく。
綺麗に抜け、並んで倒れていく木々。
そして、開通……エルクたち、マルコスたちを一直線につなぐ、『木々の道』が開けた。
フィーネはしゃがみ、両手を地面につけお尻を上げる。
前傾姿勢になり、ニヤリと笑う。
「ネズミ、嫌いなの」
フィーネは一瞬で駆け抜けた。
一直線。ネズミ顔のチュータへ向かって。
「『マッハパンチ』」
「ボッ」
チュータはわけもかわらず、顔面が陥没し地面に叩きつけられた。
『加速』によって勢いの付いた拳を、もろに喰らったのだ。
残されたのは、マルコス。
マルコスは真っ蒼になり……ズンズン歩いてくるガンボに言う。
「あ、えっと、その、も、戻ってこないか? 男爵家のぼくが」
「いらん」
「ふ、フラッグ、フラッグやるよ、あの」
「テメーをブチのめして奪う」
「い、い……いいのか!? ぼくに手を出したら、男爵家が」
「構わねぇ。つーか、正々堂々の勝負だ。勝ち負けにいちゃもん付けて親が出てくるようなら、その貴族の品位も落ちる……ってか、テメェをぶん殴れるなら、男爵家を敵に回してもいい」
ガンボはニヤリと笑い、指をゴキゴキ鳴らす。
手には金属製のナックルが装備されている。
「いいこと教えてやる。たった今、レベルが上がってな……『鋼鉄化』が、『鋼鉄化付与』になった。オレの身体だけじゃなく、装備品やモノも鋼鉄化できるようになった」
「ま、まて」
「待たない。じゃあ……ぶっ飛べやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!? ぶげっぼっぷ!?」
ぎゅちゃめぎゅぃぃぃっ!! と、肉と骨が砕け散るような音がして、マルコスの顔面が陥没。空中で何度も回転し、地面に突き刺さるように倒れた。
エルクとフィーネは青くなる。
「「うわぁ……」」
「あースッキリしたぜ。お、これフラッグか……よし、これで三本だな」
ガンボはフラッグを回収。
こうしてエルクたちは、フラッグの三本目を手に入れた。
それは、ロシュオが『聖剣』を鞘に納めた音だった。
ロシュオの目の前には、切り刻まれ、左腕を肩から、右足を膝から切断された少年が転がっている。
大量に出血し、口をパクパクさせているが……ロシュオは、全く気にしていない。
すぐ傍にいるサリッサを呼んだ。
「そっちはどうだ?」
「んー、持ってないわね」
「じゃあ、エルウッドの方か」
ロシュオは、少年を無視して歩きだす。
サリッサと一緒に、エルウッドがいる十メートルほど先の広場へ向かった。
広場といっても、森の中にあるやや開けたスペースで、ここにエルウッドと、一人の少年が剣と剣をぶつけ合っていた。
「くっ……」
「悪いけど───きみは、オレの敵じゃない」
「あっ」
シュピン!! と、少年の剣が細切れになった。
エルウッドは、自分の剣を少年の首へ突きつける。
「フラッグを」
「くっ……」
少年がフラッグをエルウッドに渡す。
エルウッドは、剣の鞘で少年の首を強打。意識を刈り取った。
すると、少年の身体が発光……煙のように消えた。
エルウッドは言う。
「フラッグを失うとダンジョンから脱出する魔法か……」
「みたいだな。ところでエルウッド、フラッグは何本目だ?」
「十八本。やれやれ、歯ごたえのない相手ばかりで飽きてきたよ」
「あと三時間の辛抱だ。さて、少し休もうぜ……おいサリッサ、食いモンあるか?」
「あるわよ。もちろんお茶も。さ、殿下、休憩しましょ!」
「ああ、ありがとうサリッサ」
サリッサは、指揮棒のような杖を手に詠唱する。
「『レンタル。オーダー。ボロウ。レーヌン。ポケット。スキル……『収納』」
すると、何もない空中に黒い穴が開き、テーブルや椅子、茶器、ポットに入ったお湯などが現れた。
サリッサの魔法の一つ。『スキルレンタル』だ。サリッサに好意を持つ人物のスキルを借り、サリッサが自在に行使することができる。
魔法レベル95の、高レベル魔法。
『魔聖』であるサリッサにとっては、この程度の詠唱で発動できる。本来なら数十分の詠唱が必要なのだが、魔法使いとして高レベルのサリッサは、ある程度の詠唱破棄が可能だった。
サリッサは、エルウッドにお茶を淹れた。
「どうぞ、殿下」
「ありがとう」
「はい、兄さま」
「おう」
三人は座り、紅茶を飲む。
ロシュオは、テーブルの上にフラッグを並べた。
「なんか、つまんねーな……もっと手ごたえあるチーム、いねぇのかよ」
「兄さまったら、あんなに暴れといて」
「フン。やっぱ同年代じゃダメだな。王国騎士レベルのスキル使いと戦いたいぜ」
ロシュオがそう言うと、エルウッドは苦笑する。
「はは、確かに……ロシュオのレベルだったら王国騎士じゃないと相手にできないかもな」
「『五星』でもいいぜ?」
「ダメダメ。五星は王国騎士が総出でかかっても傷一つ付けられない。まぁ、今は任務で国には二人しかいないけどね」
「任務?」
「うん。五星が揃ったところは、オレでも見たことがない。国の守護に二人、他三人は任務で国外っていうのがデフォルトだからね。この国に三人以上の『五星』が揃ったこと、ないんじゃないかな」
「ヤベー任務なのかねぇ」
三人はお茶を飲みながら雑談。
予選の残り時間は、1時間を切った。
ロシュオは、椅子にもたれかかりながら言う。
「本選、どんな連中出てくると思う?」
「お兄さまの期待に沿えるような方、以外が出てくると思います」
「だよな。まぁ……エルウッド、チーム戦では仲間だけど、個人戦では……」
「わかってる。決勝で戦おう……ってことだろ?」
「ああ」
「それも楽しみだけど、個人的に気になる子がいるんだよなー」
「お。誰だ?」
エルウッドはニヤリと笑う。
「オレと一緒に新入生代表を務めた、黒髪の子だ。確か……ヤト・シキバだったかな。ヤマト国出身の」
「ヤマト国でしたら、シキバ・ヤトが名前ですね。あの国、家名が最初で後ろに名前っていう並びだったはずです」
「そうだった。サリッサ、物知りだね」
「えへへ……」
照れるサリッサ。
ロシュオはどうでもよさそうに聞く。
「で、そのヤトとかいう奴、強いのか?」
「ああ。とんでもなくね」
エルウッドは言い切る。
ロシュオは、少し興味が出たようだ。
「お前にそこまで言わせるなんてな。へへ……先にオレが戦いたいぜ」
「油断するなよ? 彼女……間違いなく実戦経験者だ。それも、相当な場数を踏んでいる」
「だから何だ? オレの敵じゃねぇ。楽しめるか楽しめないか、どっちかでいい」
「やれやれ……」
「お兄さま、単純ですから」
「うっせ。サリッサ、個人戦出るならお前でも容赦しないからな」
「残念。魔法使いの私は個人戦には出ませんので」
兄妹は軽口をたたき合う。
仲良しな姿に、エルウッドは笑った。
いい友人。たとえ、個人戦でぶつかり合うことになっても、ロシュオやサリッサとは仲良くしたい。
エルウッドは知らない。
かつて、この二人とキネーシス公爵家が、家族ぐるみで兄を殺害したことを。
すると、テーブルの上に置いたフラッグが静かに、淡く光り出した。
「お、なんだ……終わりか?」
「みたいだな。なるほど、このダンジョンに送り出した時と同じ、転移系の魔法がかかっているのか」
「みたいですね。しかもこの感じ……最初に転移した時と違いますわ。恐らく、三本集めると、別系統の転移魔法が発動するようになっているのでしょう」
「さっすが魔法の天才。我が妹ながら恐ろしいぜ」
「お兄さま! もう……」
軽口を叩き合いながら、三人は光に包まれ転移した。
◇◇◇◇◇
時間は少しだけ巻き戻る。
エルク、ガンボ、フィーネの三人は大量の『昆虫』に襲われていた。
ガンボは叫ぶ。
「チュータの野郎だ!! このスキル、間違いねぇ!!」
「あのネズミ顔のやつか!!」
「ネズミ!? これバッタじゃん!!」
スキル『操作』───チュータは、昆虫と小動物を操れる。
小動物だったら数匹。だが、昆虫だったら数百以上……このバッタは、チュータが操っているのは間違いない。
その理由に───少し離れた場所から、マルコスが見ていた。
「さて、あいつらのフラッグを奪って予選突破だ」
「ウス」
「チチチチ……さすがマルコス様。あいつらに雑魚チームけしかけてフラッグ奪わせて、消耗したところを狙うなんて」
スキル、『感情操作』
マルコスは、エルクたちにけしかけたチームの感情を操作。『敵対心』と『勇気』を植え付け、エルクたちを襲わせた。
どちらが勝っても消耗しているはず。そこを狙えば……フラッグは二本。つまり、予選突破ということである。
だが、この作戦には穴があった。
「任せとけ」
エルクが両腕を広げ、念動力を発動。
木々の葉っぱがブチブチと千切れていく。
エルクは両腕、五指を器用に動かす───まるで、一流の指揮者のように。すると、葉っぱが昆虫を包み、地面にポトポト落ちていく。
「おいおい、殺さねぇのかよ」
「ああ。操られてるだけみたいだしな……虫とはいえ、かわいそうだろ」
エルクは、木々の葉っぱで虫を包み無力化する……が、あり得ない。
数百以上の昆虫を、葉っぱで包む。そんな芸当、あり得ない。
チュータは愕然とし、マルコスも目を見開いた。
「な、なんだ……あの黒いフードの、暗殺者みたいなやつ!? チチチッ、おいらの虫を」
「……ロックス、行け」
「ウス……!!」
ロックスが地面に触れると、土が岩のように硬くなり、ロックスの身体にまとわりつく。
スキル『土装』
ロックスは、土を身に纏って戦う戦士だ。
そして、ロックスはエルクたちの前に飛び出す。
「……テメェか」
「オォォォォォ!!」
土で巨大化した拳がエルクを狙う。
だが、エルクは動かない。それどころか───笑っていた。
エルクの前に、ガンボが飛び出し……土の拳を頭で受けた。
ガッキィィン!! と、激しい音がして───ロックスの拳が砕けた。
「ぬ、ガァァァァ!?」
「馬鹿が。土の塊が、『鋼鉄』に敵うワケねぇだろうが……」
「ぐ、ぬ」
「近くにいやがるな? まぁいい……テメェは、これでも喰らいやがれ!!」
ガンボの『鋼鉄化』した右ストレートが、ロックスの顔面に突き刺さる。
慌てて土で顔をマスクのように覆ったが、あっさり砕け散った。
顔面が潰れ、鼻血が噴き出し歯が折れ、ロックスは吹き飛ばされ地面を転がった。完全に気絶したのかピクリとも動かない。
全ての昆虫を葉で包み終えたエルクは、両手を振る。
「みっけ」
すると───チュータ、マルコスの周りにあった木々がボコボコ抜けて倒れていく。
綺麗に抜け、並んで倒れていく木々。
そして、開通……エルクたち、マルコスたちを一直線につなぐ、『木々の道』が開けた。
フィーネはしゃがみ、両手を地面につけお尻を上げる。
前傾姿勢になり、ニヤリと笑う。
「ネズミ、嫌いなの」
フィーネは一瞬で駆け抜けた。
一直線。ネズミ顔のチュータへ向かって。
「『マッハパンチ』」
「ボッ」
チュータはわけもかわらず、顔面が陥没し地面に叩きつけられた。
『加速』によって勢いの付いた拳を、もろに喰らったのだ。
残されたのは、マルコス。
マルコスは真っ蒼になり……ズンズン歩いてくるガンボに言う。
「あ、えっと、その、も、戻ってこないか? 男爵家のぼくが」
「いらん」
「ふ、フラッグ、フラッグやるよ、あの」
「テメーをブチのめして奪う」
「い、い……いいのか!? ぼくに手を出したら、男爵家が」
「構わねぇ。つーか、正々堂々の勝負だ。勝ち負けにいちゃもん付けて親が出てくるようなら、その貴族の品位も落ちる……ってか、テメェをぶん殴れるなら、男爵家を敵に回してもいい」
ガンボはニヤリと笑い、指をゴキゴキ鳴らす。
手には金属製のナックルが装備されている。
「いいこと教えてやる。たった今、レベルが上がってな……『鋼鉄化』が、『鋼鉄化付与』になった。オレの身体だけじゃなく、装備品やモノも鋼鉄化できるようになった」
「ま、まて」
「待たない。じゃあ……ぶっ飛べやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!? ぶげっぼっぷ!?」
ぎゅちゃめぎゅぃぃぃっ!! と、肉と骨が砕け散るような音がして、マルコスの顔面が陥没。空中で何度も回転し、地面に突き刺さるように倒れた。
エルクとフィーネは青くなる。
「「うわぁ……」」
「あースッキリしたぜ。お、これフラッグか……よし、これで三本だな」
ガンボはフラッグを回収。
こうしてエルクたちは、フラッグの三本目を手に入れた。
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