召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~

さとう

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第三章

『傲慢』の魔人ヒュブリス

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 魔人ヒュブリス。
 身長は百八十を超え、褐色の肌に真っ白な髪をオールバックにした四十代半ばほどの外見だ。
 上品な髭を生やし、着ている服も高級なスーツを上下に着込んでいる。ここまで見れば普通の人間にしか見えないが、ヒュブリスにはアベルと同じく、頭部に反りかえったツノが二本生えていた。
 ヒュブリスがいるのは、どこにでもある小さな農村だった。
 その農村に目を付けたヒュブリスは、堂々と二本の脚で村に入る。
 
「フゥム。いいね……この寂れ具合、我が寵愛を与えるに相応しい」

 農村は、見た目以上に寂れていた。
 細い川が流れ、その水を使い田畑を作っている。
 住人はボロく色フェニアた服を着て、栄養状態が悪いのか顔色がよくない者ばかりだ。よく見ると、田畑はやや荒れている……どうやら、農業に適さない地のようだ。
 すると、ヒュブリスを見た農民が───。

「ひっ……なな、なんだあんた!? ツノ……ま、魔獣か!?」
「はっはっは!! 我が魔獣とはな。いやいや違うのだ、我は魔人ヒュブリス。村人よ、腹は空いておらぬか? それとも金は足りているか? 望みがあればなんでも───」
「ひっ……ひぃぃぃぃぃっ!!」
「お?……ふむ、やはり友好的というのは難しい」

 村人は逃げ出した。
 その村人が叫びまわりながら逃げたせいで、小さな村では一気に騒ぎが広まった。
 魔人ヒュブリスの襲来。
 住人は農具を投げ捨て、わずかな家畜を納屋に入れ閉じこもった。
 ある家は父親が鍬を持ち大汗を流し、ある家は母親が幼い子供を抱きしめ毛布をかぶり震えていた。

「はぁ……なぜ人間と言うのはこうも臆病なのだ……我はただ、施しを与えたいだけなのに」

 とぼとぼと村を歩く。
 十分も歩かないうちに、一周してしまった。
 住宅は二十もなく、状態の悪い田畑があるだけ。なんともつまらない村……だからこそ、ヒュブリスが施しを与えるのにふさわしい。

「さて、どうするか……む?」

 ヒュブリスは気付く。
 ボロい小屋の影に十歳くらいの少年が蹲っていた。
 ヒュブリスはその少年に近づく。

「少年。いいことを教えてやろう。『頭隠して尻隠さず』……ふはは、頭を押さえて隠れるのはいいが、尻は丸見えという意味だ」
「ひっ……ひ」

 少年は、小さなイタチを抱いて震えていた。
 どうやら愛玩型召喚獣のようだ。
 
「ここは、きみの家かな?」
「そ、そそ、そう、です……」
「ご両親はいるかね?」
「い、いません……ぼく、一人で暮らしてます、ほ、ほんとです」
「そうかそうか。では、これをやろう」
「……え?」

 ヒュブリスは『魔法』を使う。
 魔人にしか使えない『能力』で、ヒュブリスは空間に裂け目を作り、そこに手を入れる。
 亜空間から取り出したのは……調理された串焼きだった。

「ミノタウロスの肉だ。人間にとってご馳走と聞いて購入した」
「…………」
「遠慮をするな。人間は肉が好きなのだろう? 我も肉が好きでな……うむ。少年、熱いうちに食え」
「……ッ!!」

 少年は、ヒュブリスの手から串焼きを奪うと、がつがつと食べ始めた。
 
「なかなかいい食べっぷりだ。よし、水も飲め。おかわりの肉もあるぞ」
「い、いただきます!!」
「はっはっは。焦るな少年」

 ヒュブリスは少年に『施し』を与えた。
 肉を、水を与え、少年の警戒心は緩んだようだ。
 いくつかの視線を感じることから、少年とヒュブリスの会話を住人は聞いているようだ。
 ヒュブリスは、少年の住むあばら家を見上げる。

「それにしても、ひどいあばら家だな」
「……以前、嵐のせいで壊れたんだ。おれ、子供だし直せなくて」
「ふむ、ならば任せよ」

 ヒュブリスがそっと手を掲げる。
 すると、家を覆うほど巨大な魔法陣が展開され、地面から『黄金』がせりあがってきた。
 黄金は少年の家を包み込み、形を変え、あっという間に黄金の家が完成したのだ。

「これでよし。さ、今日からここへ住め。それと、生活費が必要だな?」

 ヒュブリスは両手をしっかり握りこみ、少年の目の前で広げる。
 すると、ヒュブリスの手には数十枚の金貨、宝石、アクセサリーがあった。

「これだけあれば当面の生活は可能だろう。さぁ受け取れ」
「…………」
「む? どうした少年。間抜けな顔をして」
「…………あの、あなたって神様なんですか?」

 少年の純粋なまなざしに、ヒュブリスは噴き出した。

「ぶ、はっはっはっはっは!! か、神とは……ハハハハハッ!! いやいや違う違う。我は魔人。ヒュブリスとでも呼んでくれ……おお、出てきたか」

 ようやく、住人たちが集まってきた。
 少年の黄金の家が羨ましいのか……住人たちの眼が少しずつ、欲望に染まっているのがよくわかる。
 ヒュブリスはニヤリと笑う。

「種は植え付けた。ふふ……あとはじっくり育てるだけ」
「あの、魔人様……おれ、あなたにお礼がしたいです!」
「む?」

 少年は、キラキラした目でヒュブリスを見上げた。
 その眼がとても眩しく、ヒュブリスは眩んでしまう……そして同時に思うのだ。この目をどうやって曇らせるか。ヒトを崇拝の眼で見る純粋な少年が、他者を傲慢に見下すような眼をしたらどうなるのか。
 それを考えると、ヒュブリスの下半身が熱くなる。

「れ、礼ならいい……ふふっ、ならば、裕福になり、幸せになるのだ。それが何よりの恩返しであるぞ」
「恩返し……」
「うむ。少年よ、施しを受け入れ、幸せに、満たされるのだ。それが何よりの恩返しであるぞ」
「……はい!! ありがとうございます!!」

 少年は、頭を下げた。

「おれ、ブーバッキーって言います! 魔人さま、ありがとうございます!!」

 これは、アルフェンたちが奴隷オークションに出る二十年ほど前のできごと。
 アースガルズ王国が、ゆるやかに発展していく農村を見つけ、魔人の存在を知る前。『傲慢』の魔人ヒュブリスを確認する前の話である。
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