聖剣が最強の世界で、少年は弓に愛される~封印された魔王がくれた力で聖剣士たちを援護します~

さとう

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雷聖剣イザナギ

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 エレノアは、アオイと向き合い剣を構えていた。
 エレノアの構えは、ティラユール流剣術『薙の構え』を、炎聖剣フェニキアが振りやすいようにアレンジした自己流の構え。
 対するアオイは、右足を前に出し、剣を鞘に納めたまま柄に右手を添える『居合』の型。
 エレノアは思った。
 どうして、剣を抜かないのか。
 抜かない自分が有利───……そう、考えていたのだが。

「……ッ」

 冷や汗が、止まらない。
 対峙するだけで、アオイのプレッシャーに押しつぶされそうだった。
 剣を鞘に納めているはずなのに、剥き身の剣を喉元に突き付けられている。そんな気がした。
 
「ふぅ───……ッ」

 呼吸を整え、エレノアは目をカッと開く。
 魔力による身体強化。度重なる魔族との戦いで、知らぬ間に達人レベルとなっている加速でアオイに迫る。
 アオイは、まだ動かない。
 鞘に納めたままの剣。
 だが───エレノアは見た。
 アオイの手が、ブレたのを。

「久世雷式帯刀剣、『紫電しでん』」
「ッ!!」

 エレノアが見たのは、アオイの手が紫色に爆ぜた瞬間だった。
 『雷』の力が、アオイの速度、反応、反射神経を爆増させている。
 まさに、雷の如き抜刀術。
 エレノアは、剣の軌道を無理やり変え、アオイのイザナギを受けた。

「っぎ───……ッ!!」
「ッ!?」

 アオイも驚愕した。
 まさか、音よりも速い『雷』の抜刀術を、視認してから受けられるとは思っていなかった。
 ガギン!! と、金属がぶつかる音が響き、エレノアとアオイの距離が開いた。

「はぁ、はぁ、はぁ……ッ」

 エレノアは真っ青になり、震える手で剣を構える。
 アオイも、汗びっしょりになり、再び剣を鞘に納めた。
 が───ここで、間にララベルが入る。

「はーいそこまで!! これ以上は危険だから終了~!!」
「「…………」」

 二人は深く息を吐き、ようやくお互いに笑い合った。

 ◇◇◇◇◇◇

「いやー……とんでもないわね。マジで」
「つよい」
「いや、そんなことはない。エレノア殿こそ、拙者の『居合』を見て動きを変え、さらに受け流そうとするとは……驚いたぞ」
「確かに。オレも驚いたよ。エレノアにも、アオイにも」

 エレノア、ユノ、アオイ、サリオスの四人がワイワイ話をしていると、それを遠目でスヴァルト、ララベル、ロセが見ていた。

「いやー、なんかいいわね。七聖剣士が揃うってさ」
「そうねぇ」
「……しかも、五人で魔王を倒しちまったしな」

 スヴァルトがララベルを見ながらニヤニヤ笑うと、ララベルはムスッとする。
 ロセが「はいはい、そこまで」と二人の間に割り込んだ。
 ララベルは、腰の短剣を二本抜き、ユノの元へ。

「よーっし!! ユノ、アタシとやるわよ!!」
「はーい」
「じゃあサリオス。おめーはオレとだ」
「はい!!」
「あたしとアオイは休憩ね。ロセ先輩は?」
「私は、自主練してる。ララベル、終わったら私とね」

 七聖剣士たちは、七人揃って訓練をするようになり、絆や連携を深めていく。
 特に、六人はエレノアに興味があった。

「エレノア。最終形態だけど、マジでどうやったの?」
「ですから、よく覚えてないんですよ。教えたいのはやまやまですけど……」

 六人は、聖剣を七形態、使えるようになっていた。
 武器を変形させての連携技や、仲間同士の連携なども訓練している。そして、エレノアと同じく最終形態を覚醒させることを目標としている。
 スヴァルトが、闇聖剣アンダンテを見ながら言う。

「オレら全員が最終形態に覚醒して、長時間戦えるようになれば……魔王だってメじゃねぇ。そして、八咫烏。奴の力が加われば、魔族を滅ぼすことだって可能かもしれねぇな」
「そうねぇ。ふふ……私たちの代で、魔族との戦いに終止符を打つ、かぁ……歴史の教科書に名前が乗っちゃうかもねぇ」
「お、いいわねそれ!! 偉大なるハーフエルフのララベル!! とかね!!」
「わたしも名前載る?」
「あはは。忘れているかもしれないけど、七聖剣士の名前はみんな、トラビア王国の聖剣士一覧に刻まれているよ」

 七人は、訓練と雑談で盛り上がっていた。

 ◇◇◇◇◇◇

 ロイは、ショッピングモールでオルカとユイカの三人でお茶をしていた。
 込み合う喫茶店内。『八咫烏』による功績で飲食代が無料なので、大勢が利用している。
 ロイたちのテーブルには『初級魔法教本』が数冊置いてあった。

「くっそぉ……魔法、難しいよなぁ」
「だよね……」
「俺、無理……」

 今日は、魔法の授業があった。
 まずは、魔力を練ること。そして身体強化をするのが魔法への第一歩……というか、聖剣士の初歩中の初歩。身体強化をしないと、魔族と戦えない。
 一学期は、聖剣に慣れるための基礎訓練。二学期は魔法訓練。三学期は総合訓練で、一年生が終わる。
 二年生からは実戦形式が殆どだ。まずはこの初歩をクリアしないといけない。

『というか、ロイ。どうしてお前は身体強化を使えないんだ……? 魔界貴族相手に、あれほどの戦いっぷりのお前が、授業となるとカスみたいな成果しか出せんとは』

 カスとか言うなカスとか。とロイは思い、木刀の柄をぺしっと叩く。
 ちなみに、エレノアたち七聖剣士は、もう呼吸するのと同じくらい身体強化を使いこなしている。

「なぁ、魔法って面白そうだけどよ……メチャクチャ難しい」
「同感。ってかオルカ、あんなに楽しみにしてたじゃない」
「もっと簡単かと思ってたんだよ」

 教本をペラペラめくり、大きな欠伸をする。
 テーブルにある『聖剣スタンド』にある自分の聖剣を見て、オルカは言った。

「聖剣士かぁ……聖剣に選ばれたのは光栄だし嬉しいけど、オレには向いてないのかなぁ」
「ちょっと、どうしたのよいきなり」
「いやさ、オレって末っ子だし、期待されていないし」
「だからやめるってのは違うわよ。選ばれた以上、あんたには才能あるのよ」
「ユイカ……お前、いいやつじゃん」
「うっさい。ね、ロイもそう思うでしょ?」
「え、ああ……才能、それに兄弟かぁ」
「え、そっち?」
「ああ。あのさ、俺も末っ子なんだよ。兄上と姉上が、聖剣士として、魔界と人間界の国境で戦ってるらしいんだけど……今、元気かなぁって」
「おいおい、大丈夫なのかよ?」
「ま、最前線ではないし、今は魔界から来る魔獣も大したことないらしいけどな。正直……あの二人、俺の事嫌ってたし、俺も苦手だ」

 なんとなく、家族を思い出すロイ。
 ティラユール騎士爵家。絶縁された今は関係ない。
 元、父親は全く連絡がない。絶縁した以上当然ではあるが。兄と姉は、どこかの前線で聖剣士として剣を振るっているとは聞いている。

「家族とは仲良くした方がいい。って、言わない方がいいよな」
「ああ。というか俺、絶縁されてるし」
「ロイも大変ねぇ。将来どうするの?」
「んー……小さくてもいいから家を買って、狩りしながら暮らしたい」
「はははっ、それいいな」
「ばか、茶化さないの」

 割と本気なのだが、冗談と言われてしまった。
 ロイは、喫茶店の窓から外を見て───……ギョッとする。

「え……」

 窓の傍に、男がいた。
 ただの男ではない。身長が三メートル近くあり、頭に角が生えている。
 魔族。
 
『馬鹿な……気配が、ない!? まさかこれは』
「オルカ、ユイカ、逃げ───」

 ロイが叫んだ瞬間、魔族の男が拳を振り上げ、ロイたちが座っている喫茶店の壁を殴り、破壊した。
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