聖剣が最強の世界で、少年は弓に愛される~封印された魔王がくれた力で聖剣士たちを援護します~

さとう

文字の大きさ
124 / 227

魔界貴族侯爵『夢魔』のスキュバ①/夢か現か

しおりを挟む
『ね、ロイ』
「……ん? ユノか?」
『うん。起きて』
「あ、ああ」

 妙にダルい身体を起こし、ロイは起きた。
 場所は自室。ベッド際にいるのはユノ。

『ほら、起きなさいよ』
「エレノア? お前たち、ここ男子寮だぞ……う、いてて」
『クビ、いたいの?』
「ああ……なんか、チクチクする」

 首をグルグル回し、ロイはぼんやりとした。
 妙に、気分がいい。いや、悪い。
 霞が掛かったような、視界がおかしい。
 まだ眠いのかなと、目を擦る。だが、変わらない。

『ロイ』
「ん、ユノ……ん!? おま、なッ!?」

 ユノは、上半身裸だった。
 そのまま、ロイのベッドに登ってくる。

「ななな、なにしてんだ!? こ、こっち来るなって!!」
『じゃ、こっち来なさいよ』
「え、エレノアも!? まてまて、待った!! 夢、これ夢だよな!? おいデスゲイズ!!」
『……ああ、夢だ。だが、妙だな……むぅ、我輩、眠い』
「寝ぼけんな!! おい、二人とも離れろって!!」

 デスゲイズがコロンと転がり、ロイは二人を押しのけようと手を伸ばすが……妙に柔らかな塊が、左右の手に触れた。
 一つは、掌で覆えるくらいの大きさ、もう一つは片手ではあふれる大きさ。
 それは、二人の胸。

「ゲッ!? ごご、ごめん!!」
『いいわよ、別に』
『ロイなら、いいよ?』
「えっ……」
『ね、もっとしよ』
『ええ。もっと』
「…………も、もtt

 ◇◇◇◇◇◇



「ふふん♪ ───……そのまま、ゆっくり寝ててね♪」



 ◇◇◇◇◇◇

「なぁロイ。今日の剣術授業、模擬戦オレとだよな」
ああ・・

 ロイ・・は、食堂でオルカと日替わり朝ごはんを食べながら言う。
 今日は『ワ国』の伝統食材である『コメ』の料理だ。『ゾウスイ』という、ドロドロして温かい不思議な料理なのだが、これが何とも美味かった。
 アオイが学園に掛け合い、城下町で手に入れたコメを使ったらしい。すでにコメの仕入れルートも決め、定期的に『ワ国』の食事が出るようになるそうだ。

「お前さ、ほんと大丈夫なのかよ。オレが心配することじゃねーけど、剣技の成績、マジでドベだぞ」
「別にいいよ。落第しないくらいの腕前ならな」
「まぁ、座学はほぼ満点っぽいしなぁ」
「おはよう、二人とも」

 やって来たのはアオイだ。
 手にあるトレイには、雑炊と卵、『ウメボシ』というアオイが持ち込んだすっぱすぎる何かがある。
 アオイは、雑炊に卵を入れて混ぜ、その上にほぐしたウメボシを入れた。

「うむ。やはりコメはいい」
「す、すっげぇな……」
「あ、ああ」

 アオイが美味しそうに食べるので、ロイは聴く。

「アオイ、卵入れると美味いのか?」
「ああ。拙者のおススメは───……んん?」
「ん、どうした?」
「あ、いや。すまん……ロイ、お前……頬にコメが付いてるぞ」
「え、マジ」
「ぶっ、言うなよアオイ。そのまま学園に行かせようと思ってたのに」
「おいオルカ、ぶん殴るぞ」
「あっはっは。わりーわりー」

 男子三人は、楽しそうに朝食を食べて笑っていた。

 ◇◇◇◇◇◇

「おはよ、ロイ」
「おはっよー、男ども!」

 ユノ、エレノアが合流し、五人で学園へ向かう。
 すると、ユノがロイの隣に来て言う。

「ロイ。今日は訓練ないの。パンケーキ食べたい」
「おう、いいぞ」
「え、ちょ。あたしも行く!! むぅ~……ユノが素早いし」
「もちろん、エレノアもな」
「ぱんけーき。ふむ、ワ国にはない食べ物だ。拙者も付き合おう」
「よし、アオイも。オルカは?」
「オレはパス。用事あるんでね」

 放課後は、四人でパンケーキの店に行くことになった。
 ユノは嬉しそうにロイの腕を取る。

「えへへ」
「おいおい、猫みたいだな。よしよし」
「ん~……ロイ、撫でるの上手」
「む……ロイ、いつもは慌てるクセに、なんかユノに甘くなったし」

 ムスッとするエレノア。
 すると、ロイは手を伸ばしエレノアの頭を撫でた。

「んなぁ!? ななな……」
「あれ、嫌だったか? お前も撫でて欲しいのかと」
「ばばば、馬鹿!? この馬鹿!! こんなとこでやるなっ!! てかユノも離れなさいって!!」
「えー」
「離れなさいっ!!」
「あう」

 エレノアに引きはがされ、ユノは離れた。
 ロイは「あはは」と笑い、オルカも笑う。

「…………」

 アオイだけが、笑っていなかった。

 ◇◇◇◇◇

 ◇◇◇◇◇

 ◇◇◇◇◇

「…………あれ?」

 不思議だった。
 身体を起こすと、頭がふわふわした。
 
「い、てて……あれ? エレノア? ユノ? あれ?」

 誰もいない。
 自分の部屋で、エレノアとユノがいた。
 裸っで迫られ、何かしたような気がしたが……何もない。
 ロイは首をひねり、とりあえず起きた。
 ベッドから起き、ドアを開ける。

「ようやく起きたのか。このクズめ」
「えっ……え?」
「さっさと座れ!!」
「…………」

 ドアの先は、男子寮の廊下ではない。
 それほど日数が経過したわけでもないのに、随分と懐かしい感じがするロイ。
 ここは、ダイニングルーム。
 目の前にいるのは、父であり、騎士爵位を持つ歴戦の聖剣士、バラガン。
 そう、ここは……ティラユール家。
 ロイの生家であり、二度と帰ることはないと思っていた、実家だった。

「…………デスゲイズ」
『……』
「おい、デスゲイズ!! 敵だ。襲われている」

 と、腰に手を当てたが、そこに木刀はない。

「!?」

 着ている服も、ティラユール家で着ていた粗末な訓練服だった。

「な、何が」
「貴様……いい加減にしろ!!」
「っ、っぶぁ!?」

 バラガンが怒り、立ち上がり、ロイの元へ。
 そのままロイを殴る。
 ロイは吹き飛び、壁に叩きつけられた。
 壁際にいる使用人たちは、眉一つ動かさずいる。これも、見慣れた光景だ。

「?、?……」

 痛みがあり、血が出た。
 間違いなく、ティラユール家。
 そして、これが『夢』ではないことを、思わせた。

「悪夢でも見ていたのか? 全く、ろくに剣を振るえもしない無能め。さっさと座れ!!」
「…………」

 ロイは、ふらふらと立ち上がり、自分の席へ座った。
 父に食事が運ばれる。
 朝から肉を大量に食べる父。だが、ロイはパンとスープとわずかなサラダだけ。肉はない。
 これも、いつも通り。

「…………」

 まさか、夢?
 魔族。デスゲイズ。聖剣。魔王。魔界貴族。
 全てが、夢。
 今までが悪夢。何もかも、嘘だった?
 ロイは混乱しそうになる。

「間もなく、聖剣の選抜が始まる。いいか、少しでもまともな聖剣に選ばれろよ。もし、カスみたいな聖剣だったら……どうなるか、わかっているな?」
「は、はい……」
「全く。わが騎士の娘、エレノアとはずいぶんと違う。貴様のような無能と違い、あの子は特に……」

 エレノア。
 ロイはハッとなり、エレノアのことを思い出した。
 食事を終え、ロイはエレノアを探す。
 朝食後、ティラユール家の騎士である父に剣の修業をしてもらうのが、日課のはず。
 すると、屋敷の裏にある騎士訓練場に、エレノアがいた。

「ずいぶんとよくなった。あとは、聖剣に選ばれるだけだな」
「はい。ありがとうございます」
「エレノア!!」

 ロイは、訓練場に飛び込んだ。
 そして、わき目も振らずにエレノアの元へ。

「エレノア、大変だ。敵の攻撃だ。デスゲイズがいない。何かがおかしいん───」

 すると、エレノアがロイの手を弾いた。

「な、なんですか急に……」
「え……」
「ロイ殿。申し訳ございませんが、娘に近づかないようお願いします」
「ど、どういう……」

 エレノアの父が、エレノアの盾になるように前に出た。

「お忘れですか? バラガン閣下のご命令です。エレノアには近づくな。と……あなたも、そう聞いているはずですが」
「なっ……」
「申し訳ございません。この件は、バラガン様に報告させていただきます」

 そう言い、エレノアは父親と去った。
 残されたロイは、茫然としながら呟いた。

「…………夢、だったのかよ」

 何が現実なのか、ロイにはわからなかった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る

ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。 異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。 一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。 娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。 そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。 異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。 娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。 そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。 3人と1匹の冒険が、今始まる。 ※小説家になろうでも投稿しています ※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!  よろしくお願いします!

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

異世界に転生したけどトラブル体質なので心配です

小鳥遊 ソラ(著者名:小鳥遊渉)
ファンタジー
 元々、トラブルに遭いやすい体質だった男の異世界転生記。  トラブルに巻き込まれたり、自分から飛び込んだり、たまに自分で作ったり、魔物と魔法や剣のある異世界での転生物語。余り期待せずに読んで頂ければありがたいです。    戦闘は少な目です。アルフレッドが強すぎて一方的な戦いが多くなっています。  身内には優しく頼れる存在ですが、家族の幸せの為なら、魔物と悪人限定で無慈悲で引くくらい冷酷になれます。  転生した村は辺境過ぎて、お店もありません。(隣町にはあります)魔法の練習をしたり、魔狼に襲われ討伐したり、日照り解消のために用水路を整備したり、井戸の改良をしたり、猪被害から村に柵を作ったり、盗賊・熊・ゴブリンに襲われたり、水車に風車に手押しポンプ、色々と前世の記憶で作ったりして、段々と発展させて行きます。一部の人達からは神の使いと思われ始めています。………etc そんな日々、アルフレッドの忙しい日常をお楽しみいただければ!  知識チート、魔法チート、剣術チート、アルは無自覚ですが、強制的に出世?させられ、婚約申込者も増えていきます。6歳である事や身分の違いなどもある為、なかなか正式に婚約者が決まりません。女難あり。(メダリオン王国は一夫一妻制)  戦闘は短めを心掛けていますが、時にシリアスパートがあります。ご都合主義です。  基本は、登場人物達のズレた思考により、このお話は成り立っております。コメディーの域にはまったく届いていませんが、偶に、クスッと笑ってもらえる作品になればと考えております。コメディー要素多めを目指しております。女神と神獣も出てきます。 ※舞台のイメージは中世ヨーロッパを少し過去に遡った感じにしています。魔法がある為に、産業、医療などは発展が遅れている感じだと思っていただければ。  中世ヨーロッパの史実に出来るだけ近い状態にしたいと考えていますが、婚姻、出産、平均寿命などは現代と余りにも違い過ぎて適用は困難と判断しました。ご理解くださいますようお願いします。    俺はアラサーのシステムエンジニアだったはずだが、取引先のシステムがウイルスに感染、復旧作業した後に睡魔に襲われ、自前のシュラフで仮眠したところまで覚えているが、どうも過労死して、辺境騎士の3男のアルフレッド6歳児に転生? 前世では早くに両親を亡くし、最愛の妹を残して過労死した社畜ブラックどっぷりの幸薄な人生だった男が、今度こそ家族と幸せに暮らしたいと願い、日々、努力する日常。 ※最後になりますが、作者のスキル不足により、不快な思いをなされる方がおられましたら、申し訳なく思っております。何卒、お許しくださいますようお願い申し上げます。   この作品は、空想の産物であり、現実世界とは一切無関係です。

追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。 全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。 ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。 これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

処理中です...