聖剣が最強の世界で、少年は弓に愛される~封印された魔王がくれた力で聖剣士たちを援護します~

さとう

文字の大きさ
165 / 227

すべきこと

しおりを挟む
 愛の魔王バビスチェ襲来から三週間。
 ようやく、学園が再開した。
 ロイは制服に着替え、専用のエサ入れにある肉をガフガフ食べるシェンフーを撫でる。

「じゃ、学園行ってくる。窓は開けとくけど、あまり遠くに行くなよ。一応お前、魔族なんだからな」
『ふん。お前がいないときは外に出ないから問題ない。それより、終わったらさっさと帰ってこいよ』

 そう言い、シェンフーはロイの脚に身体をこすりつけた。
 可愛い───……素直にそう思い、もう一度だけ撫でて部屋を出た。
 寮を出て、オルカとアオイの三人で校舎を目指す。

「ようやく再開かぁ……今まで通り、とはいかねぇよなあ」

 歩きだすなり、オルカが言う。
 アオイも、どこか寂し気に言う。

「全校生徒の一割が退学したそうだ……やはり、戦って身体が傷付くより、心に受けたダメージは大きい……」
「だよなぁ」

 望まぬ逢瀬を重ねた男女が、同じ教室で学ぶなど不可能だ。
 被害者と加害者……もちろん、望んで加害者となったわけじゃない。三週間経過し、体調に変化の出てきた女生徒が何人か現れたようだ。
 その後、その女生徒や、加害者の男子生徒がどうなったか……さすがにアオイもそこまでは聞いていないし、聞くつもりもない。
 ロイは、話題を変えた。

「な、そろそろ秋季休暇だけど……オルカ、どうする?」
「あー……でもよ、遊ぶ気になんて、なれねぇよなあ。なぁアオイ」
「ああ。そもそも七聖剣士は、『七天島』というところで強化合宿を行う予定だ」
「「え?」」
「七聖剣士は全員、『鎧身がいしん形態』を獲得した。あとは使用時間を伸ばし、練度を上げて慣れさせる訓練をする。そこで、ロセ会長殿たちがかつて訓練をした『七天島』で、二十日間の強化合宿を行うことになったのだ」
「マジか。大変だな……あー、ある意味、安心だぜ」

 と、オルカが言う。

「実は、一度実家に顔を出せって言われた。秋季休暇は帰省する。というか、そういうヤツけっこう多いって話だぜ。噂じゃ、トラビア王国の聖剣士部隊も再編制されるって話だ」
「そうなのか?」
「ロイ、知らねぇのか? 快楽の魔王を追い詰めて、嘆きの魔王、愛の魔王は討伐されたんだぞ? 残りは忘却の魔王と、深いダメージを受けた快楽の魔王だけ……今代の七聖剣士が、人間と魔王の戦いに終止符を打つって言われまくってるぜ。な、アオイ」
「う、うむ。努力はするが……」

 アオイは苦笑している。
 さらにオルカは続ける。

「それと、噂になってんのが、『八咫烏』だよなー」
「「!!」」
「な、ロイ。知ってるか? 八咫烏は七聖剣士の補佐役として、魔王討伐に貢献してるらしいぜ。漆黒のカラス、仮面の下の顔は、絶世の美少年って話だ」
「そ、そうなのかー、すごいなー」
「何だその棒読み? な、アオイ……八咫烏、どんな奴か知ってるか? 顔見たか?」
「さ、さぁな!! 拙者、自分の戦いで忙しかった故に」

 ウンウン頷くアオイ。どうやら大根役者のようだ。
 三人は、八咫烏の話をしながら学園へ向かった。

 ◇◇◇◇◇

 教室に入ると、クラスメイトは七割ほどしかいなかった。
 魔王を討伐したのに、ユノの周りには誰もいない。以前は、クラス全員がユノの机を包囲し、ひたすら質問攻めだったのだが。
 ユノはロイたちを見ると、嬉しそうに微笑んだ。

「おはよ、ロイ。アオイ、オルカ」
「おはよう。ユノ、久しぶりだな」
「うん、外出自粛だったから……ちょっぴりショッピングモールに出かけたりしたけど」

 オルカは荷物を置き、「ちょっと行ってくる」と別のクラスメイトの元へ。
 三人だけになると、アオイが言う。

「……八咫烏の件。オルカ殿の言う通り、学園中へ広がっているようなのだ」
「わたしも聞いた。正体不明の聖剣士が、魔王討伐に貢献したって」
「……マジか」
「アオイ。同じ男子同士、ロイのこと守ってね」
「あ、ああ」

 ちなみに、アオイが女子ということはまだ言っていない。
 ロイは別にバラしてもいいと思ったが、アオイが「全て終わったら言う」と決めたようだ。アオイの決心に口出しする気はなかったが、アオイが「今言ったら女子寮へ……」とボヤいていたことは知らない。
 しばらくすると、担任教師のアンネが入って来た。どこか疲れたような表情である。

「えー……皆さん、お久しぶりです」

 無難な挨拶から始まった。
 そして、なるべくなら触れたくない……そんな気持ちがあったのか、少し言い辛そうに言う。

「ようやく学園が再開しました。が……『愛の魔王』が残した傷は、この学園だけでなく、王国全体に深い傷となって残りました。学園が協議した結果……現時点で、生徒たちに満足な教育を施すことができないと判断。秋季休暇を早めることになりました」
 
 本来の秋季休暇は、あと二月ほど先だ。
 それほど、学園や王都も大変なのだろう。だが、休みを喜ぶ者はいない。
 そして、秋季休暇は二月半という長さで開始されることになった。

「秋季休暇中、学園は解放しますので、施設は自由に使用して構いません。当然ですが課題は出ます。申請すれば教師の指導を受けることもできますので……それと、開催予定だった『聖剣士武技大会』は延期となります」

 アンネの説明が続く。
 ぼんやり聞いていると、デスゲイズが言う。

『いい機会だ。ロイ、権能や戦術の練り直しをすると言ったな? ちょうどいい……うってつけの場所を教えてやる』
「……?」
『人間界と魔界の境界にある孤島、『グレシャ島』だ……そこは、大昔に我輩が作った島で、魔族も人間も立ち入ることができない魔境。そこでなら、腕を磨きつつ戦術を組み直せる』
(そんなところ、あったのか?)
『ああ。ササライに我輩の存在がバレた以上、できることはすべてやる。ロイ、お前が強くなれば……残りの権能、『嫉妬エンヴィー』と『怠惰スロウス』を渡せるかもしれん』
(なりふり構わないなら、すぐくれよ)
『馬鹿。そういうわけにはいかんのだ……ネタばらしするが、『七つの大罪』はそれぞれ意志を持つ。我輩がそう作ったからな……奴らがお前を認めて初めて、お前に渡せるんだ。何もせずそのまま渡したらどうなるか、お前は知っているだろう?』

 思い出すのは、シェンフーの姉タイガ。
 タイガは、身体の内側から内臓を食い千切られた。

『特に、『嫉妬』……こいつは、そう簡単に従わん』
「……?」
『とにかく、秋季休暇とやらが始まる前に、エレノアたちと話せ』
(……わかった)

 そう呟き、ロイはアンネの方を向いた。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです(完結)

わたなべ ゆたか
ファンタジー
タムール大陸の南よりにあるインムナーマ王国。王都タイミョンの軍事訓練場で、ランド・コールは軍に入るための最終試験に挑む。対戦相手は、《ダブルスキル》の異名を持つゴガルン。 対するランドの持つ《スキル》は、左手から棘が一本出るだけのもの。 剣技だけならゴガルン以上を自負するランドだったが、ゴガルンの《スキル》である〈筋力増強〉と〈遠当て〉に翻弄されてしまう。敗北する寸前にランドの《スキル》が真の力を発揮し、ゴガルンに勝つことができた。だが、それが原因で、ランドは王都を追い出されてしまった。移住した村で、〝手伝い屋〟として、のんびりとした生活を送っていた。だが、村に来た領地の騎士団に所属する騎馬が、ランドの生活が一変する切っ掛けとなる――。チート系スキル持ちの主人公のファンタジーです。楽しんで頂けたら、幸いです。 よろしくお願いします! (7/15追記  一晩でお気に入りが一気に増えておりました。24Hポイントが2683! ありがとうございます!  (9/9追記  三部の一章-6、ルビ修正しました。スイマセン (11/13追記 一章-7 神様の名前修正しました。 追記 異能(イレギュラー)タグを追加しました。これで検索しやすくなるかな……。

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

転生したらただの女の子、かと思ったら最強の魔物使いだったらしいです〜しゃべるうさぎと始める異世界魔物使いファンタジー〜

上村 俊貴
ファンタジー
【あらすじ】  普通に事務職で働いていた成人男性の如月真也(きさらぎしんや)は、ある朝目覚めたら異世界だった上に女になっていた。一緒に牢屋に閉じ込められていた謎のしゃべるうさぎと協力して脱出した真也改めマヤは、冒険者となって異世界を暮らしていくこととなる。帰る方法もわからないし特別帰りたいわけでもないマヤは、しゃべるうさぎ改めマッシュのさらわれた家族を救出すること当面の目標に、冒険を始めるのだった。 (しばらく本人も周りも気が付きませんが、実は最強の魔物使い(本人の戦闘力自体はほぼゼロ)だったことに気がついて、魔物たちと一緒に色々無双していきます) 【キャラクター】 マヤ ・主人公(元は如月真也という名前の男) ・銀髪翠眼の少女 ・魔物使い マッシュ ・しゃべるうさぎ ・もふもふ ・高位の魔物らしい オリガ ・ダークエルフ ・黒髪金眼で褐色肌 ・魔力と魔法がすごい 【作者から】 毎日投稿を目指してがんばります。 わかりやすく面白くを心がけるのでぼーっと読みたい人にはおすすめかも? それでは気が向いた時にでもお付き合いください〜。

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

処理中です...