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第一章
リュウキ
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僕の名前はリュウキ。
ハイゼン王国、ドラグレード公爵家の長男で次期当主だ。
ハイゼン王国は東方の小さな国。僕の家は王都の貴族街にある大きな屋敷だ。
でも……もう、僕の家じゃない。
僕は、自分の部屋で荷造りをしていた。
「……くそ、くそ、くそ」
カバンに着替えを詰める。
私物は殆どない。ほとんど、義弟のキルトに取られてしまった。
羽ペン、ボードゲーム、貴重なコインなどを集めていたのだが……キルトが欲しがり、イザベラがよこせと言い、駄目だと言うと父上が「渡せ」と言う。なぜ、僕のモノを渡さなくちゃいけないのか?
簡単だ。「お兄ちゃん」だから……ふざけるな。
「どうして、信じてくれないんだ……」
僕は、誰もいない部屋で呟いた。
僕が魔力を失った理由……それは、イザベラだ。
世界最高の魔法使いの称号である『大賢者』……大賢者は、魔法使い千人分の魔力を持っているらしい。
僕は、生まれながらに大賢者並みの魔力を持っていたそうだ。
将来を期待され、僕自身、魔法の勉強を頑張った。
だが───……母上が病死し、継母としてやってきたイザベラが現れてから、全てがおかしくなった。
ちょうど、一年前。
十四歳の誕生日を迎えた僕は、初めてワインを飲んだ。
貴重なワインだと、イザベラが持ってきたのだ。
それを飲んだ瞬間、身体が凍り付くように冷え、倒れてしまった。
酔ったのだろうとイザベラが笑っていた。
ベッドに運ばれ、僕は薄ぼんやりと聞いた。
「あなたの魔力、全ていただくわ……ふふ、キルトが欲しいっていうからねぇ? お兄ちゃん」
「…………ぇ」
「いい夢を……ふふふ」
そして、目が覚めると僕は魔力を失っていた。
代わりに───義弟のキルトが、大賢者に匹敵する魔力を得ていた。
僕は悟った……『移された』のだと。
「父上!! イザベラが、イザベラがやったに違いありません!!」
「何を言っているんだ……医者を呼ぶから、休んでいなさい」
僕は、ワインのことや、イザベラが言った話をした。
だが、父上は信じなかった。
僕が魔力を失ったということだけが事実だった。
一年間、僕の魔力を回復させようと手を尽くしてくれた。だが……無駄だった。
そして───キルトを次期当主とし、僕を追放することを決めた。
「…………」
「よぉ、兄貴」
「……キルト」
ぼんやりカバンを見つめていると、義弟のキルトが部屋に入ってきた。
ニヤニヤしながら僕を見ている。
「出ていくんだって? ははは、あばよ負け犬。あぁ~……この魔力、ありがたく使わせてもらうぜ」
「お前……ッ」
「あっはっは。兄貴の贈り物だろ? い~い魔力だぜ」
キルトは、右手に魔力を集める。視認できるほど濃厚な魔力が渦を巻いていた。
僕はキルトを睨む……するとキルトは。
「何? やんのか、兄貴?」
「……っ」
「あっはっは。あばよ、兄貴」
キルトは部屋を出ていった。
荷物を持って屋敷の玄関へ出ると、イザベラがいた。
「さっさと出ていきなさい。ここはもう、あなたの家じゃないのだから」
「……お前が盗んだんだ」
「はぁ?」
「お前が僕の魔力を盗んだんだ!!」
「何を言ってるのか……ああ、それは返してもらいますよ」
「あっ」
イザベラの魔法が発動し、僕のカバンに付いていたブローチが飛んだ。
ブローチは、イザベラの手に収まる。
「返せ!! それは母上の形見だ!!」
「これは妹の私が持つべきもの。もう貴族でないあなたには不釣り合い……さっさと出てきなさい」
「返せ!! イザベラ、返さないと───」
「何事だ!!」
父上が階段を下りてきた。
僕は叫ぶ。
「父上、母上の形見をイザベラが」
「私を父と呼ぶことは許さん……形見だと? そのブローチは、妹であるイザベラが持つのにふさわしい。お前はもう貴族ではない……出ていけ!!」
「っ……う、くそ」
僕は涙を堪え、屋敷を後にした。
ハイゼン王国、ドラグレード公爵家の長男で次期当主だ。
ハイゼン王国は東方の小さな国。僕の家は王都の貴族街にある大きな屋敷だ。
でも……もう、僕の家じゃない。
僕は、自分の部屋で荷造りをしていた。
「……くそ、くそ、くそ」
カバンに着替えを詰める。
私物は殆どない。ほとんど、義弟のキルトに取られてしまった。
羽ペン、ボードゲーム、貴重なコインなどを集めていたのだが……キルトが欲しがり、イザベラがよこせと言い、駄目だと言うと父上が「渡せ」と言う。なぜ、僕のモノを渡さなくちゃいけないのか?
簡単だ。「お兄ちゃん」だから……ふざけるな。
「どうして、信じてくれないんだ……」
僕は、誰もいない部屋で呟いた。
僕が魔力を失った理由……それは、イザベラだ。
世界最高の魔法使いの称号である『大賢者』……大賢者は、魔法使い千人分の魔力を持っているらしい。
僕は、生まれながらに大賢者並みの魔力を持っていたそうだ。
将来を期待され、僕自身、魔法の勉強を頑張った。
だが───……母上が病死し、継母としてやってきたイザベラが現れてから、全てがおかしくなった。
ちょうど、一年前。
十四歳の誕生日を迎えた僕は、初めてワインを飲んだ。
貴重なワインだと、イザベラが持ってきたのだ。
それを飲んだ瞬間、身体が凍り付くように冷え、倒れてしまった。
酔ったのだろうとイザベラが笑っていた。
ベッドに運ばれ、僕は薄ぼんやりと聞いた。
「あなたの魔力、全ていただくわ……ふふ、キルトが欲しいっていうからねぇ? お兄ちゃん」
「…………ぇ」
「いい夢を……ふふふ」
そして、目が覚めると僕は魔力を失っていた。
代わりに───義弟のキルトが、大賢者に匹敵する魔力を得ていた。
僕は悟った……『移された』のだと。
「父上!! イザベラが、イザベラがやったに違いありません!!」
「何を言っているんだ……医者を呼ぶから、休んでいなさい」
僕は、ワインのことや、イザベラが言った話をした。
だが、父上は信じなかった。
僕が魔力を失ったということだけが事実だった。
一年間、僕の魔力を回復させようと手を尽くしてくれた。だが……無駄だった。
そして───キルトを次期当主とし、僕を追放することを決めた。
「…………」
「よぉ、兄貴」
「……キルト」
ぼんやりカバンを見つめていると、義弟のキルトが部屋に入ってきた。
ニヤニヤしながら僕を見ている。
「出ていくんだって? ははは、あばよ負け犬。あぁ~……この魔力、ありがたく使わせてもらうぜ」
「お前……ッ」
「あっはっは。兄貴の贈り物だろ? い~い魔力だぜ」
キルトは、右手に魔力を集める。視認できるほど濃厚な魔力が渦を巻いていた。
僕はキルトを睨む……するとキルトは。
「何? やんのか、兄貴?」
「……っ」
「あっはっは。あばよ、兄貴」
キルトは部屋を出ていった。
荷物を持って屋敷の玄関へ出ると、イザベラがいた。
「さっさと出ていきなさい。ここはもう、あなたの家じゃないのだから」
「……お前が盗んだんだ」
「はぁ?」
「お前が僕の魔力を盗んだんだ!!」
「何を言ってるのか……ああ、それは返してもらいますよ」
「あっ」
イザベラの魔法が発動し、僕のカバンに付いていたブローチが飛んだ。
ブローチは、イザベラの手に収まる。
「返せ!! それは母上の形見だ!!」
「これは妹の私が持つべきもの。もう貴族でないあなたには不釣り合い……さっさと出てきなさい」
「返せ!! イザベラ、返さないと───」
「何事だ!!」
父上が階段を下りてきた。
僕は叫ぶ。
「父上、母上の形見をイザベラが」
「私を父と呼ぶことは許さん……形見だと? そのブローチは、妹であるイザベラが持つのにふさわしい。お前はもう貴族ではない……出ていけ!!」
「っ……う、くそ」
僕は涙を堪え、屋敷を後にした。
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