追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう

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第四章

大罪魔獣『暴食の影狼』マルコシアス

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 もう、動くしかなかった。
 俺は闘気を解放し、マルコシアスに向かって走り出す。
 背後で、レイが叫んだような気がしたが無視。
 生きて帰るには、こいつを倒すしかない。

「剣技───『四閃刀』!!」

 縦と横に二回ずつ斬る技。俺の得意技だ。
 ミスリルソードに闘気を込めた斬撃、前の俺ならともかく、今の俺ならミスリルソードを闘気で守りながら斬撃力を上げることもできる。
 この状態なら、岩石だってバターのように。

「えっ」

 斬撃が当たった瞬間、ミスリルソードが砕け散った。
 何が起きた。
 マルコシアスの尻尾が、動いたような気がした。
 背筋に冷たい汗が流れ、全力でありったけの闘気を解放し両腕を交差した。
 次の瞬間、視界が歪んだ。

「───……~~? ───、……??」

 意味がわからない。
 世界がグニャグニャになっていた。俺の腕もグニャグニャだ。
 タコのような世界。おかしい、なんだこれ?
 誰だ? 眼の前にいる? 

「き、リュウ……キ!!」
「~~……?? ───」

 レイ、アピア?
 なんで、この二人が? 何が、おきた?

「リュウキ!! リュウキってば!!」
「い、いやぁぁぁ!!」
「キュア!! キュア!! キュア!!……う、うぅぅ」
「ち、ちくしょうが!! はぁ、はぁ、はぁ……」

 ああ、俺の腕……ない。
 千切れ飛んだのか。
 血がすごいな。はは、よく生きている。
 レイ、俺を抱きしめてる。アピア、泣くな。
 レノ、逃げろ。お前じゃ無理だ。サリオ、やめとけ。もう無理だ。

『ハルルル……』

 マルコシアスは、餌を見るような眼で俺たちを見ていた。
 こいつ、初めから戦う気なんてない。
 餌。
 餌なんだ。こいつにとって、俺たちは餌。
 現れたから、食うだけ。
 戦うとかじゃない。目の前に飛んでいる羽虫に、舌を伸ばすだけ。

「ど、どうしよう、どうしよう、どうしよう……に、兄さん、兄さん」
「はぁはぁはぁ、はぁはぁはぁ、はぁはぁはぁ!! し、死ぬ。死ぬ。死ぬ」
「ごめん、ごめんリュウキくん……ぼ、ぼく、もうむり」
「リュウキくん、リュウキくん、死なないで、死なないで」

 レイが動転し、レノは死を感じ、サリオは諦め、アピアは俺を抱きしめてくれた。
 温かい。ああ、死なせたくない。
 死なせたく、ない。

 ◇◇◇◇◇◇

 ◇◇◇◇◇◇

 ◇◇◇◇◇◇

 ───死なせたくない?

 ああ、死なせたくない。

 ───やれやれ、手間のかかる。

 え?

 ───まだ、この段階ではない。

 誰?
 
 ───これは、きっかけだ。

 ……きっかけ?

 ───お前は、最初で最後。ドラゴンの力を受け継いだ人間。

 この声、もしかして。

 ───ふふ、頑張れ、リュウキ。
 
 お前は───。

 ───さぁ、あんな狼……丸呑みしろ・・・・・

 エンシェント、ドラゴン……?

 ◇◇◇◇◇◇

 ◇◇◇◇◇◇

 ◇◇◇◇◇◇

「……え?」
「……え」
「……え」
「え……?」

 両腕を失ったリュウキが、ゆっくりと立ち上がった。
 フラフラとした動きで、肘から消失した腕の断面から血を流しながら。
 死にかけていたリュウキが立ち上がった。
 このことで、四人はわずかに理性を取り戻す。
 だが───リュウキは、逆だった。

「ウ……」

 ビクン、ビクンと身体が痙攣した。
 そして───リュウキの右目が、真紅と黄金が混じった色に変わる。
 同時に、失った両腕がズルズルと生えてきた。が……普通の腕ではなかった。
 左腕は、分厚い装甲版のような、黄金の表皮に赤いラインが入った腕。
 右腕は、通常の三倍はある肥大した装甲のような腕だった。
 さらに、髪が金色に染まり───絶叫した。

「ウ、オォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ───ッ!!!!!!」

 圧倒的な闘気があふれだす。
 可視化できるほどに濃密となった闘気。レイたちにも、黄金のモヤがリュウキを包んでいるのが見えた。
 リュウキの頭に、二本のツノが生える。
 この事態、マルコシアスも無視できなかった。

『───!?』
「ハァァァァ~~~っ!!」

 口を歪めたリュウキは、笑っていた。
 リュウキであり、リュウキでない……完全に、暴走していた。
 マルコシアスはようやく、リュウキを『餌』ではなく『異物』と認め、尾を逆立てる。
 だが、『闘気解放』によってリュウキの身体は極限まで強化されている。
 一瞬でマルコシアスの眼前まで現れ、巨大な右手でマルコシアスの顔面を掴み、そのまま部屋に壁に叩き付けた。

『ガッ……!?』
「ハァッハッハッハァ!! ハァァァァッ!! アハハハハッ!!」

 リュウキはゲラゲラ笑い、再びマルコシアスに向かって走り出した。
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