追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう

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第四章

暴走

「ハァァァァ~~~……」

 リュウキは、獣のような呼吸をしていた。
 わけがわからない。だが、レイは呟いた。

「……リュウキ、ドラゴンに闘気をもらったって言ってた。でもこれ、どう見ても闘気じゃない」
「ど、どういう意味だよ?」
「ヒトの、身体じゃない。あれ……鱗、だよね? それに、ツノも生えてる」
「……ドラゴン」

 アピアがポツリと呟いた。

「あれは───ドラゴン、です」

 ◇◇◇◇◇

 リュウキの右腕が膨張し、さらに腕が伸びた。
 マルコシアスの顔面を鷲掴みにし、執拗に床に叩きつける。マルコシアスは動けなかった……ただの掴みなら、どんな魔獣相手でも逃れる自信はある。
 だが、リュウキの手は違った。びくともしないのである。
 叩きつけられても痛みはない。だが……このままではよろしくない。
 マルコシアスは、叩きつけられた瞬間に両足で着地し、踏ん張った。

「ハァァ……???」

 目の前の人間……果たして人間なのか?
 角が生え、牙も生え、口から金色の吐息が漏れている。
 マルコシアスは両足で踏ん張りつつ、顔を振る。すると、リュウキの拘束が解けた。
 反撃───マルコシアスは、『自身の影に潜った』
 マルコシアスが最強である理由。マルコシアスは『スキル』を使う魔獣。
 スキル『影牢』……影に潜むことができるスキルで。
 このままリュウキに接近し、足元から喉笛を食い千切ろうと接近する。
 だが───リュウキは、笑っていた。

「グゥゥ……ハハ、ッハッハ!!」

 左腕がバキバキと音を立て、装甲版のような鱗が割れていく。
 すると、割れた左腕から、濃密な黄金の闘気が立ち上る。まるで、闘気の噴出口のような左腕。
 リュウキの腕の周辺に闘気が噴出し……なんと、巨大な『槍』が何本も生み出された。
 『闘気精製ドラゴンスフィア』───普段のリュウキとは桁違いの練度。芸術品のような装飾の施された黄金の槍が、一気に三十本以上闘気から精製された。
 リュウキが左腕をあげると、槍が一斉に頭上へ飛ぶ。
 そして、一気に降り注いだ。

『!?』

 マルコシアスの潜む影に、黄金の槍が降り注ぐ。
 マルコシアスの身体に槍が突き刺さり、影に潜んでいたマルコシアスが飛び出した。
 その間も、リュウキの『闘気精製』は続いている。
 一本の巨大な『杭』を生み出し、恐るべき腕力で床に突き刺す。さらに、無数の『鎖』が左腕から伸び、槍が刺さったままのマルコシアスの身体を、がんじがらめにした。

『が、ガガガッ……!?』

 動けない。
 槍が刺さり、全身鎖でがんじがらめになり、鎖は床に突き刺さった杭に巻き付いている。
 さながら、家の庭で飼われている飼い犬のような、そんな有様。
 屈辱的だった。マルコシアスはブチ切れ、暴れまくる。
 だが───闘気で精製された黄金の鎖は、マルコシアスの強靭な顎と牙をもってしても、噛み千切れない、砕けない、引き千切れない。
 そして、リュウキの右腕が今までにないくらい巨大化し、装甲版のような鱗が割れ、闘気が噴出。
 黄金の装甲を纏った、巨大な右腕へと変わった。

『……ッ』

 マルコシアスの目が見開かれる───死ぬ。
 
「ギャァァッハッハッハッハッハァァァァァァァァァァ!!」

 リュウキの右腕が振り下ろされ、マルコシアスの身体がペチャンコに押しつぶされた。

 ◇◇◇◇◇

 ぐちゃ、ばきぼき、べきべき……と、肉と骨が砕け、咀嚼するような音が響く。
 レイたちが見たのは、リュウキの右手が巨大化し、マルコシアスの身体を押しつぶし……そのまま右手を静かに握り締めると聞こえる、咀嚼音のような何か。
 なぜ、マルコシアスの死骸がないのか。
 なぜ、リュウキの右手から咀嚼音が聞こえるのか。
 咀嚼音が消えると、リュウキの右腕が収縮していく。
 髪と目の色が戻り、ツノが消え、失った両腕は人間の腕に戻った。怪我も全て消え、不思議なことに着ている服の破れや汚れも消えていた。

「……えっ」

 リュウキは、自分の両手を見た。
 そして、振り返る。

「お、俺……何した?」
「「「「…………」」」」

 レイたちは答えられない。
 
「あの、バケモノ……マルコシアス、は?」
「……覚えて、ないの?」
「な……何を?」
「あんたが、やったのよ。あのバケモノを」
「お、俺が? え……う、嘘だろ?」
「…………」

 レイ自身もわけがわからず……これ以上、何も言えなかった。
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