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第四章
力の流れ
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俺は、何をしたんだ?
わけがわからない。床には砕け散ったミスリルソードの残骸があり、吹っ飛ばされたような気はしている。だが……そこからの記憶は曖昧で、気が付いたら無傷で立っていた。
そして気付く。
「……あれ」
体内で暴れ狂うような闘気が、穏やかになっている。
不思議な感覚だった。
身体の中に、一本の芯が通ったような、妙な感覚。
だが、今はそれどころじゃない。
俺はみんなの方へ振り返った。
「み、みんな……だ、大丈夫か?」
「「「「…………」」」」
みんなは、俺を見て硬直していた。
俺が何をしたのか? 全くわからない。
だが、この反応は……得体の知れない『何か』を見る目だ。
わからない。俺は、いったい何をしたんだ。
「レイ、俺は何をしたんだ……?」
「……わかんない。でも、腕が生えて、その……形が変わった。ツノも生えたし、金色の光が」
「金色……俺の、闘気」
「……うん」
「ドラゴン、です」
「え?」
「リュウキくんは、ドラゴンになりました」
アピアが言う。
きっぱりと、断言した。
「ど、ドラゴン?」
「はい。金色と真紅の瞳、龍麟、ツノ……あれは、ドラゴンです」
「あ、アピア? あんた、どうして」
「……俺が、ドラゴン」
エンシェントドラゴンの力、なのか?
闘気を高めると、腕に鱗が生えたり爪が伸びたりするけど……恐らく、死にかけたことで身体に眠っていた闘気が限界を超えて解放された、から?
わからない。でも、アピアは言う。
「リュウキくん。あなたはやっぱり、エンシェントドラゴンの……」
「え……?」
アピアは、俺をジッと見て両手を合わせていた。
すると、レノが言う。
「おいリュウキ、大丈夫……なんだよな?」
「あ、ああ。むしろ、前より調子いいくらいだ」
「……リュウキくん。きみ、一体何者なの?」
「…………」
サリオの疑問。
俺は、闘気を得た経緯を二人に話した。
「マジかよ……と、闘気? どうりで、あの馬鹿力」
「人間が、ドラゴンしか使えない闘気を……?」
「黙ってて悪かった。俺の中には、エンシェントドラゴンの力がある……覚えていないけど、俺がマルコシアスを倒した、んだよな……?」
「ああ、マジだぜ。すごかった」
「リュウキくんがいなかったら、ぼくら全員……」
サリオはゴクリと唾を飲む。
すると、大きく息を吐いたレイが言った。
「よし、とりあえず……リュウキ、あんたは戦える? まだ動ける?」
「あ、ああ。問題ない……なさすぎる。むしろ、調子がいい」
「わかった。じゃあ、このまま進むわよ。次のセーフルームに向かって、ダンジョンから帰還する。その後は……なぜ、禁止区域への道が解放されてたかを学園に報告しないとね」
レイは、怒っているようだ。
俺は砕けたミスリルソードを見る……ルイさんからもらった剣が。
「先に進むわ。リュウキ……マルコシアス級の魔獣は出てこないと思うけど、いざという時は頼りにさせてもらう。ここ、あたしらじゃ進むの難しいかも」
「わ、わかった……」
正直、どうすればいいかわからない。
でも……なぜか俺は、今まで以上に闘気を使えるような気がした。
───これは、きっかけだ。
そんな言葉が、頭をよぎった。
◇◇◇◇◇
先へ進む。
陣形は先ほどと同じ。レノは、緊張していた。
「クソが……く、来るなら気やがれ」
「レノ、落ち着けって」
「お、おう」
「次、マルコシアスのような奴が出てきたら、俺がやるから」
「……大丈夫なのか?」
「わからん。でも、俺がマルコシアスを倒したんだろ? だったら、次も」
「アホ。お前が死んだらどうすんだっつーの」
「……悪い」
次の階層への階段を上り、ドアを開けた。
そこは───またもや、何もない空間だった。
「……さっきと、同じ作りの部屋」
レイが警戒を強める。
ドアを閉めると……やはり、現れた。
現れたのは、全身傷だらけの、オーガという魔獣。
普通のオーガじゃない。歴戦の英雄みたいなオーガだった。
「レイ、こいつは?」
「お、オーガの一種だと思う……でも、さっきのマルコシアスよりは、弱いかも」
「だよな……よし」
俺は闘気を解放───……え?
「あ、あれ?」
「お、おいリュウキ、どうした?」
「いや、その」
闘気を解放した。
いつもは集中しないと解放しても持続できない。でも今は、呼吸をするように解放できた。
それだけじゃない。何も意識せず、闘気を全身に行き渡らせることができる。
蛇口をひねり、水が流れるように。
穏やかな闘気が、全身を流れて行く。蛇口をひねるように、闘気の強さをコントロールできた。
「レノ」
「あ?」
「俺……やれる」
「は? って、おい!?」
俺はオーガに向かって走り出す。
『闘気開放』───オーガが棍棒を振りかぶる。
だが俺は、オーガの手首めがけてジャンプし、キックを叩きこむ。
ベギャッ!! と、オーガの腕が折れた。
俺は左腕に闘気を込める。
「『闘気精製』……マジか」
闘気の流れがスムーズだ。
それに、何を作ればいいかわかる。頭に浮かぶ。
俺は、全てがカッチリハマるのを感じていた。
俺の手に、長い槍が一本精製される。俺はそれをオーガに向けて投げると、オーガの頭を綺麗に貫通……オーガは断末魔をあげることもできず、消滅した。
「……戦いやすい」
死を経験したせいか、俺は強くなっていた。
わけがわからない。床には砕け散ったミスリルソードの残骸があり、吹っ飛ばされたような気はしている。だが……そこからの記憶は曖昧で、気が付いたら無傷で立っていた。
そして気付く。
「……あれ」
体内で暴れ狂うような闘気が、穏やかになっている。
不思議な感覚だった。
身体の中に、一本の芯が通ったような、妙な感覚。
だが、今はそれどころじゃない。
俺はみんなの方へ振り返った。
「み、みんな……だ、大丈夫か?」
「「「「…………」」」」
みんなは、俺を見て硬直していた。
俺が何をしたのか? 全くわからない。
だが、この反応は……得体の知れない『何か』を見る目だ。
わからない。俺は、いったい何をしたんだ。
「レイ、俺は何をしたんだ……?」
「……わかんない。でも、腕が生えて、その……形が変わった。ツノも生えたし、金色の光が」
「金色……俺の、闘気」
「……うん」
「ドラゴン、です」
「え?」
「リュウキくんは、ドラゴンになりました」
アピアが言う。
きっぱりと、断言した。
「ど、ドラゴン?」
「はい。金色と真紅の瞳、龍麟、ツノ……あれは、ドラゴンです」
「あ、アピア? あんた、どうして」
「……俺が、ドラゴン」
エンシェントドラゴンの力、なのか?
闘気を高めると、腕に鱗が生えたり爪が伸びたりするけど……恐らく、死にかけたことで身体に眠っていた闘気が限界を超えて解放された、から?
わからない。でも、アピアは言う。
「リュウキくん。あなたはやっぱり、エンシェントドラゴンの……」
「え……?」
アピアは、俺をジッと見て両手を合わせていた。
すると、レノが言う。
「おいリュウキ、大丈夫……なんだよな?」
「あ、ああ。むしろ、前より調子いいくらいだ」
「……リュウキくん。きみ、一体何者なの?」
「…………」
サリオの疑問。
俺は、闘気を得た経緯を二人に話した。
「マジかよ……と、闘気? どうりで、あの馬鹿力」
「人間が、ドラゴンしか使えない闘気を……?」
「黙ってて悪かった。俺の中には、エンシェントドラゴンの力がある……覚えていないけど、俺がマルコシアスを倒した、んだよな……?」
「ああ、マジだぜ。すごかった」
「リュウキくんがいなかったら、ぼくら全員……」
サリオはゴクリと唾を飲む。
すると、大きく息を吐いたレイが言った。
「よし、とりあえず……リュウキ、あんたは戦える? まだ動ける?」
「あ、ああ。問題ない……なさすぎる。むしろ、調子がいい」
「わかった。じゃあ、このまま進むわよ。次のセーフルームに向かって、ダンジョンから帰還する。その後は……なぜ、禁止区域への道が解放されてたかを学園に報告しないとね」
レイは、怒っているようだ。
俺は砕けたミスリルソードを見る……ルイさんからもらった剣が。
「先に進むわ。リュウキ……マルコシアス級の魔獣は出てこないと思うけど、いざという時は頼りにさせてもらう。ここ、あたしらじゃ進むの難しいかも」
「わ、わかった……」
正直、どうすればいいかわからない。
でも……なぜか俺は、今まで以上に闘気を使えるような気がした。
───これは、きっかけだ。
そんな言葉が、頭をよぎった。
◇◇◇◇◇
先へ進む。
陣形は先ほどと同じ。レノは、緊張していた。
「クソが……く、来るなら気やがれ」
「レノ、落ち着けって」
「お、おう」
「次、マルコシアスのような奴が出てきたら、俺がやるから」
「……大丈夫なのか?」
「わからん。でも、俺がマルコシアスを倒したんだろ? だったら、次も」
「アホ。お前が死んだらどうすんだっつーの」
「……悪い」
次の階層への階段を上り、ドアを開けた。
そこは───またもや、何もない空間だった。
「……さっきと、同じ作りの部屋」
レイが警戒を強める。
ドアを閉めると……やはり、現れた。
現れたのは、全身傷だらけの、オーガという魔獣。
普通のオーガじゃない。歴戦の英雄みたいなオーガだった。
「レイ、こいつは?」
「お、オーガの一種だと思う……でも、さっきのマルコシアスよりは、弱いかも」
「だよな……よし」
俺は闘気を解放───……え?
「あ、あれ?」
「お、おいリュウキ、どうした?」
「いや、その」
闘気を解放した。
いつもは集中しないと解放しても持続できない。でも今は、呼吸をするように解放できた。
それだけじゃない。何も意識せず、闘気を全身に行き渡らせることができる。
蛇口をひねり、水が流れるように。
穏やかな闘気が、全身を流れて行く。蛇口をひねるように、闘気の強さをコントロールできた。
「レノ」
「あ?」
「俺……やれる」
「は? って、おい!?」
俺はオーガに向かって走り出す。
『闘気開放』───オーガが棍棒を振りかぶる。
だが俺は、オーガの手首めがけてジャンプし、キックを叩きこむ。
ベギャッ!! と、オーガの腕が折れた。
俺は左腕に闘気を込める。
「『闘気精製』……マジか」
闘気の流れがスムーズだ。
それに、何を作ればいいかわかる。頭に浮かぶ。
俺は、全てがカッチリハマるのを感じていた。
俺の手に、長い槍が一本精製される。俺はそれをオーガに向けて投げると、オーガの頭を綺麗に貫通……オーガは断末魔をあげることもできず、消滅した。
「……戦いやすい」
死を経験したせいか、俺は強くなっていた。
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