追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう

文字の大きさ
42 / 109
第五章

アピアの話

 ルイさんの店は、いろんなものが置いてあった。
 武器防具、道具、日用品。服や靴。カウンターのケースには高級そうな宝石などもある。
 物が多い。だが、質もいいのが揃っている。
 俺とアピアは、宝石を眺めていた。

「すごいです。これ、エメラルドストーンですよ」
「エメラルドストーン。確か、エメラルドワイバーンの心臓から取れる鉱石だっけ」
「はい。エメラルドワイバーンは討伐が難しい魔獣の一種で、中には鉱石を持たない子もいるんです。これだけの大きさを持つエメラルドストーンはかなり貴重です」

 値段は大金貨800枚。かなりの値段だ。

「ん~……私の趣味には合いませんね」
「あはは。アピアは水色が好きだもんな」
「え!? なな、なぜそれを?? だ、誰にも言ってないのに……リュウキさん、すごいです!!」
「あ、ああ……」

 だって、髪の色と目の色は水色だし。着てる服や小物も水色で統一してるから。
 これで「ピンクが好きです!」とはならないだろ。
 
「お、それなら……これはどうだ?」
「え……? あ……」

 俺は、水色の宝石で作られたイヤリングを指さす。
 アピアは「わぁ……」と、魅入っていた。
 値段は、大金貨100枚か……なんか金銭感覚狂うな。

「ルイさん、これください」
「はい、ありがとうございます」
「りゅ、リュウキさん!?」
「アピアには迷惑かけたからな。お詫びの気持ちだ」
「迷惑……?」
「ダンジョンで、俺が暴走した時だ」
「そんな。私たちは何も」
「俺も、全く覚えていない。でも……みんなを怖がらせた責任はある」

 俺は、レイさんから包みを受取り、アピアへ渡す。
 アピアは嬉しそうに胸に抱き、笑顔で言った。

「ありがとうございます。嬉しいけど……お礼なら、レイちゃんにも渡すんですよね」
「ああ。レイの場合、焼肉でも奢れば喜びそうだけどね」
「ふふっ、それはダメですよ?」
「え、なんで?」
「……もう、鈍感さんですね」
 
 よくわからないけど、アピアは嬉しそうだった。

 ◇◇◇◇◇

 アピアと一緒に、近くのカフェでお茶をしたり、商店通りを歩いて面白そうな店を覗いたり、公園のベンチでアイスを食べたりして過ごした。
 お昼はアピアがおススメする喫茶店のサンドイッチ。貴族令嬢なのに、平民の飲食店にやたら詳しい。

「その、趣味なんです」
「趣味?」
「はい。貴族御用達のお店ももちろん知ってますけど、その……あまり趣味じゃないというか。それに、買い物しようとすると、お店の方から商品を持って屋敷のテーブルに並べたりするので……」

 確かに、貴族の買い物はそういうもんだ。
 店にはいかない。店を呼ぶ。店に行くのは従者。
 アピアは、そういうのが嫌らしい。

「私、平民の……ううん、町の人たちのお店、大好きです。あったかくて、みんな笑顔で……」
「わかる。俺も同じ気持ちだ」
「……えへへ」

 アピアは嬉しそうに笑った。
 サンドイッチを食べ終え、のんびり紅茶を飲む。
 カップ半分ほど飲み終え、俺はアピアに聞いた。

「な、俺に言いたいこと、あるんだろ?」
「……!」
「お前が急に俺を誘って出かけた理由、そろそろ話してほしい」
「……わかりました」

 アピアは、自分のカバンから一冊の本を出す。
 そこには、『真龍聖教の教え』と書かれていた。

「真龍聖教……?」
「はい。我が家は代々、真龍聖教の信者なのです。私も……幼いころから、この本を読んだり、真龍……エンシェントドラゴン様の昔話を聞いて育ちました」
「そうなのか……ん? エンシェントドラゴン?」
「はい! 枢機卿リンドブルム様がおっしゃるリュウキくん、あなたがエンシェントドラゴン様の『化身』であるなら、ぜひぜひ、父と母に会っていただきたいのです!!」
「え。ってか化身って……俺、べつに化身とかじゃ」
「真龍聖教を崇拝する貴族は多いです。私の実家マーキュリー侯爵家を含めて……」
「待った待った。貴族が、宗教に?」
「はい。ところでリュウキくん、クロスガルドの貴族はご存じですか?」
「……知らない」

 というか、興味ない。
 すると、アピアは指を鳴らす……セバスチャンさんが現れ、羊皮紙をバッと開いた。
 そこに書かれていたのは。

「クロスガルドには二つの公爵家、四つの侯爵家が大きな力を持ち、それ以外の貴族はこの六つの爵位を持つ貴族の下に付いています。サン公爵家、ムーン公爵家。マーズ侯爵家、サターン侯爵家、ジュピター侯爵家、そして我が家であるマーキュリー侯爵家。そのうち、ムーン、サターン、マーキュリー侯爵家が真龍聖教の信者です」

 長い説明ありがとうございます。たぶん役に立たん知識だけど。

「もし、エンシェントドラゴン様の化身であるリュウキくんが真龍聖教に来てくれたら……」
「悪い。遠慮しておく」

 俺はアピアが言い切る前に言った。
 
「ごめん。俺……真龍聖教に興味はないんだ。エンシェントドラゴンを信奉するのはいいと思う。でも、俺にとってエンシェントドラゴンは信仰の対象じゃなくて、恩人みたいなモンなんだ。祈ることじゃなくて、あいつがくれた力に恥じないように鍛えることで恩を返したい」
「……」
「アピア。俺に期待してたなら謝る。でも……友人として、これからも仲良くして欲しい」
「……わかりました。ごめんなさい、私……自分のことばかりで、勝手でした」
「いいよ。それと、ありがとな」
「……え?」
「エンシェントドラゴン。あいつも、最後は寂しいとか言ってたけど……こんなにも想って、祈ってくれる人がいるってわかった。それだけでも、俺はうれしい」
「リュウキくん……」

 俺は、残った紅茶を飲み干した。
 そのまま立ち上がろうとすると。

「あ、あの……その、実はもう一つ、お願いが」
「ん?」
「その……一か月後に、真龍聖教のムーン公爵家が開催するパーティーがあるんですけど、その……私、パートナーがいないんです。リュウキくん……私のパートナーとして、夜会に参加してくれませんか?」
「え」
「その、真龍聖教とか、エンシェントドラゴン様とか関係なく、『私のパートナー』として参加して欲しいんです。一人だと……その、まだ婚約者のいない令嬢として見られて、その」
「……あー」

 アピアみたいな美少女が、婚約者なしでパーティーに参加したら……まぁ、婚約者に名乗り出る男はいっぱいいるだろうな。
 
「私、やっと冒険者になれたんです! その……婚約者なんてできたら、自由に冒険できなくなっちゃいます。それは……いやです」
「…………」
「お願いします。私の婚約者として、夜会に参加してくれませんか?」
「…………まぁ、仕方ない。わかった」
「ありがとうございます!!」

 アピアは一気に笑顔になり、残った紅茶を飲み干した。
感想 33

あなたにおすすめの小説

土属性を極めて辺境を開拓します~愛する嫁と超速スローライフ~

にゃーにゃ
ファンタジー
「土属性だから追放だ!」理不尽な理由で追放されるも「はいはい。おっけー」主人公は特にパーティーに恨みも、未練もなく、世界が危機的な状況、というわけでもなかったので、ササッと王都を去り、辺境の地にたどり着く。 「助けなきゃ!」そんな感じで、世界樹の少女を襲っていた四天王の一人を瞬殺。 少女にほれられて、即座に結婚する。「ここを開拓してスローライフでもしてみようか」 主人公は土属性パワーで一瞬で辺境を開拓。ついでに魔王を超える存在を土属性で作ったゴーレムの物量で圧殺。 主人公は、世界樹の少女が生成したタネを、育てたり、のんびりしながら辺境で平和にすごす。そんな主人公のもとに、ドワーフ、魚人、雪女、魔王四天王、魔王、といった亜人のなかでも一際キワモノの種族が次から次へと集まり、彼らがもたらす特産品によってドンドン村は発展し豊かに、にぎやかになっていく。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

辺境追放された「植物魔導師」の領地開拓 ~枯れ果てた死の大地は、俺の魔力で聖域(楽園)へと変貌する~

リーフレット
ファンタジー
​「植物魔法? ああ、農作業にしか使えないあの地味な魔法か」 ​帝国騎士団の専属魔導師だったアルトは、無能な二世皇太子レオンによって、一方的に追放を言い渡された。 アルトがどれほど魔導植物を駆使し、帝国の食糧難を裏から支えていたかを知らぬまま、彼は「戦闘に役立たない役立たず」という烙印を押されたのだ。 ​帝国を出て行き着いた先は、魔物が跋扈し、草一本生えないと言われる最果ての荒野。 死を待つだけの地。しかし、アルトは絶望するどころか、晴れやかな顔で笑っていた。 ​「やっと、気兼ねなく『植物』を愛でられる。……よし、ここを世界一の庭(楽園)にしよう」

パワハラ騎士団長に追放されたけど、君らが最強だったのは僕が全ステータスを10倍にしてたからだよ。外れスキル《バフ・マスター》で世界最強

こはるんるん
ファンタジー
「アベル、貴様のような軟弱者は、我が栄光の騎士団には不要。追放処分とする!」  騎士団長バランに呼び出された僕――アベルはクビを宣言された。  この世界では8歳になると、女神から特別な能力であるスキルを与えられる。  ボクのスキルは【バフ・マスター】という、他人のステータスを数%アップする力だった。  これを授かった時、外れスキルだと、みんなからバカにされた。  だけど、スキルは使い続けることで、スキルLvが上昇し、強力になっていく。  僕は自分を信じて、8年間、毎日スキルを使い続けた。 「……本当によろしいのですか? 僕のスキルは、バフ(強化)の対象人数3000人に増えただけでなく、効果も全ステータス10倍アップに進化しています。これが無くなってしまえば、大きな戦力ダウンに……」 「アッハッハッハッハッハッハ! 見苦しい言い訳だ! 全ステータス10倍アップだと? バカバカしい。そんな嘘八百を並べ立ててまで、この俺の最強騎士団に残りたいのか!?」  そうして追放された僕であったが――  自分にバフを重ねがけした場合、能力値が100倍にアップすることに気づいた。  その力で、敵国の刺客に襲われた王女様を助けて、新設された魔法騎士団の団長に任命される。    一方で、僕のバフを失ったバラン団長の最強騎士団には暗雲がたれこめていた。 「騎士団が最強だったのは、アベル様のお力があったればこそです!」  これは外れスキル持ちとバカにされ続けた少年が、その力で成り上がって王女に溺愛され、国の英雄となる物語。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。