追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう

文字の大きさ
49 / 109
第五章

リュウキの闘技大会

しおりを挟む
「スキル『獣化』……すごいな、初めて見た」
『そりゃどうも』

 対戦相手のエドワードは、人型の狼に変身した。
 俺は『闘気開放エンシェント』で全身を強化する。同様に、エドワードも魔力で『身体強化』を使っているようだ……不思議だ。闘気開放すると、相手の魔力の流れもなんとなく見える。
 
『さぁ、遊ぼうぜ!!』
「ああ、楽しめそうだ」

 エドワードが───……一瞬で背後へ。
 俺はしゃがみ、横薙ぎを回避。

『!?』

 驚くエドワード。俺はしゃがんだままの体勢から足払いをする。闘気で強化された蹴りは効いたのか、エドワードの体勢が崩れた。
 そのまま、拳に闘気を込めてエドワードの横っ面を殴る。

『ゴバッ!?』

 エドワードがリングを転がる。だが、すぐに態勢を整える。
 口から「ペッ」と血を吐き顔をぬぐう。

『やるじゃねぇか』
「どうも。お前もな」
『へっ……キルトがギャーギャー騒ぐから、どんなクズ野郎だと思ってたけど……いいパンチだ。やっぱ、実際に戦わねぇとわかんねぇな』
「……お前、いいやつだな」
『はは、いい奴ね。そう思うんだったら、手加減するなよ?』
「ああ。少し本気で行く」

 込める闘気の量をあげる。あまり強すぎると殴り殺しかねない。
 エドワードの毛が逆立つ。

『ったく、どんなスキル宿してんだ……』
「あー……」

 スキルイーターは特に検証してない。だって、相手の一部を食うとか無理だし。
 エドワードの体勢が低くなる。
 俺も身体を低くして、エドワードとほぼ同時に飛び出した。

『ッシャァァァァ!!』
「『龍拳インパクト』!!」

 ズドン!! と、エドワードの腹に俺の拳が突き刺さる。
 今度は吹っ飛ばなかった。衝撃が綺麗に突き抜けた。
 エドワードは口から血を垂らし、ニヤリと笑い……獣化が解けた。
 倒れるエドワードを、俺は支える。

「お前の、勝ち、だ……」
「ああ、ありがとな」
『勝者!! Dクラス、リュウキ!!』

 割れんばかりの歓声に俺は応えた……うわぁ、これ気持ちいいかも。

 ◇◇◇◇◇

 それから、試合は順調に進み……俺は医務室にいた。

「い、痛いよぉ~……リュウキくぅん」
「マルセイ、お前……大丈夫か?」
「ぅぅぅ」

 ボロボロでベッドに横たわるマルセイ。
 マルセイは、魔法スキルで対戦相手と打ち合い、魔力が互いに尽きて、最後は殴り合いの泥仕合となった。互いの拳が同時に顔面にヒットし、ダブルノックダウンで引き分け。
 マルセイが勝てば俺との戦いになったのに。

「うぅ、リュウキくんは次……ぼくとの戦いだったのにぃ」
「悪いな、今度機会があればやろうぜ」
「ふ……いいよ、いたたたた……」

 マルセイは、パンパンに腫れた顔を痛そうに擦る。
 俺は聞いてみた。

「そういえば、次の試合は誰だっけ?」
「Aクラスのレイちゃんと、Dクラスのレノだよ。レノ、Dクラスとは思えない強さらしいよ」
「へぇ……レイとレノか」

 あの二人が当たるとは、なかなか面白そうだ。
 俺もマルセイに構っていないで、様子を見に───。

「ぐ、いでで……ちくしょう、あいつ」
「……レノ!? おま、もう終わったのか!?」

 医務室に担がれてきたのは、レノだった。
 待て待て。どうなってんだ?
 すると、付き添いのサリオが言う。

「瞬殺だよ。試合開始と同時に、レノが倒された」
「え……」
「レイさん、すごく気合入ってる。だって、次の試合は……」

 サリオが対戦表を渡してきた。
 確認すると、レイ対レノ、キルト対プリメラ、マルセイ対ポッケ、俺対バイク。
 俺とバイクの戦いは俺が勝ち、マルセイ対ポッケは引き分け。レイとレノはレイが勝ち……。

「キルト対プリメラ。プリメラ、試合開始と同時に棄権した。これで準決勝はレイとキルトだ」
「……マジか」

 嫌な予感がした。
 俺は不戦勝で決勝行き。もうすぐ試合が始まる。

「すぐに試合は始まる。おいリュウキ、あいつのところ行ってやれ」
「ああ」

 俺は医務室を出て、レイの元へ向かった。
 
「悪いけど、手は抜かないから」

 控室に入るなり、そう言われた。
 レイは、自前の槍を連結させてクルクル回転させたり、手に雷を集中させている。
 一緒にいたアピアも不安そうだ。

「レイちゃん、すごく気合入ってて」
「別に普通だし」
「ふふ、そうですね」

 レイは槍を二本にして背中に収納した。

「じゃ、行ってくる。リュウキ、あんたがやりたかっただろうけど、あたしがやっちゃうから」
「好きにしろよ。それと……気を付けろよ」

 レイは軽く手を振り、リングに向かった。

 ◇◇◇◇◇◇

 リングには、キルトが立っていた。
 手には杖を持ち、腰には剣を差している。
 レイを見てニヤリと笑い、杖を突き付けた。

「兄貴の女か。おもしれぇ」
「こっちは面白くない。あんたみたいなカス、さっさと始末する」

 レイは槍を抜き、双剣として構えた。
 そして───試合開始の合図。
 レイは双剣に『雷』を宿し、身体強化して走り出す。

「ッシ!!」
「っとぉ!!」

 キルトは双剣を回避し、杖を振るう。
 杖から風の刃が飛び出すが、レイは双剣を振って打ち消す。

「『ファイア』!!」

 杖から炎が───だが、レイは横っ飛びで回避。

「『ウォーター』!!」

 水の塊が飛んで来た。レイは身体を捻って回避。
 そして、合わせて風の刃も飛んでくる。レイは絶妙なタイミングで回避した。

「ちょこまかと……!!」
「…………」

 レイは双剣の一本を投げる。
 キルトが突風を生み出し、双剣は地面を転がる。だが、レイはキルトに接近。
 転がった剣に手を向けると、剣はまっすぐレイの手に収まった。スキル『磁界』により、金属ならどんなものでも引き寄せることができる。
 そしてキルト。突風を生み出したことで、次の魔法への行動が少し遅れた。
 レイは見逃さない。
 
「遅い」
「ぬがっ!?」

 キルトの杖が両断され、キルトも地面を転がった。
 経験の差だ。
 キルトには、実戦経験が足りてない。

「実戦経験の差ね。貴族のおぼっちゃん、ろくに戦場やダンジョンを知らないみたい。大事に大事に育てられてきた、箱入りのお坊ちゃまね」
「んだと……?」
「いくら強力なスキルを宿そうと、あんたがヘボなら意味がない、ってことよ」
「ヘボ、ね……それはどうかな?」
「あ?」

 ───俺は見た。
 リングの外から、小さな『虫』が飛んできて……レイの首に、何かを刺した。

「なっ」
「リュウキくん?」
「今の……」
「?」

 アピアには見えていない。
 刺されたレイも気付いていない。
 誰も、気付いていなかった。

「……ッ、?」
「どうした? 体調不良か?」
「……なっ、なに、これ」
「ふん。自己管理もできないお前に、箱入りとか言われたくねぇなぁ」

 キルトは剣を抜き、地水火風の力を集める。
 あれはやばい……!! 

「レイ!! 逃げろ!!」
「遅い。『エレメンタル・ブラスト』!!」
「───……ッ」

 四色の光に包まれ、レイは場外に吹き飛ばされた。
 戦闘不能により、キルトの勝利。
 観客に応えるキルトを無視し、俺とアピアはレイの元へ。

「レイ、レイ!!」
「ぅ……」
「酷い火傷……早く医務室に!!」
「ああ!!」
「おいおい兄貴、次はオレとの試合だぜ? へへへ、楽しくなってきたなぁ?」
「…………」
 
 俺は───キルトを殺すつもりで睨んだ。
 アピアがビクッと震えたのがわかったが、気にしない。

「逃げたら殺す」
「へ、こっちのセリフだぜ」

 俺はキルトを睨みつつ、アピアと一緒にレイを医務室に運んだ。
しおりを挟む
感想 32

あなたにおすすめの小説

土属性を極めて辺境を開拓します~愛する嫁と超速スローライフ~

にゃーにゃ
ファンタジー
「土属性だから追放だ!」理不尽な理由で追放されるも「はいはい。おっけー」主人公は特にパーティーに恨みも、未練もなく、世界が危機的な状況、というわけでもなかったので、ササッと王都を去り、辺境の地にたどり着く。 「助けなきゃ!」そんな感じで、世界樹の少女を襲っていた四天王の一人を瞬殺。 少女にほれられて、即座に結婚する。「ここを開拓してスローライフでもしてみようか」 主人公は土属性パワーで一瞬で辺境を開拓。ついでに魔王を超える存在を土属性で作ったゴーレムの物量で圧殺。 主人公は、世界樹の少女が生成したタネを、育てたり、のんびりしながら辺境で平和にすごす。そんな主人公のもとに、ドワーフ、魚人、雪女、魔王四天王、魔王、といった亜人のなかでも一際キワモノの種族が次から次へと集まり、彼らがもたらす特産品によってドンドン村は発展し豊かに、にぎやかになっていく。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです

竹桜
ファンタジー
 無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。  だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。  その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

処理中です...