追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう

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第五章

予感

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「酷い火傷だけど、大丈夫。傷も残らないようにするわ」

 保険医が自身満々に言う。
 俺とアピアは一安心。全身火傷のレイは意識がないが、痛そうに呻いていた。
 すると、にっこり笑う保険医のおばちゃんが言う。

「さ、男は出てった出てった。この子の服を脱がすからね。それとも恋人かい? 恋人なら脱がすの鉄だって「すみません、あとはお願いします!!」

 俺は慌てて医務室を出た。
 すると、アピアも付いてきた。

「あの、リュウキくん……」
「わかってる。これから決勝だ」
「お気を付けて」
「ああ」

 間もなく、新入生のトーナメントが終わる。その後は二年生、メインの三年生と試合が続く。新入生の試合なんて所詮は前座……キルトが卑怯な手を使おうが、関係ない。
 俺は拳を強く握り、決勝のリングへ向かって歩き出した。

 ◇◇◇◇◇◇

「よく来たな。逃げなかったことは褒めてやるよ」
「…………」

 キルト。
 予備の杖を俺に向けて、嬉しそうにニヤニヤしている。
 不思議だ。殺してやろうと思ったのに、妙に心が冷たい。

「キルト、イザベラは元気か?」
「ああ? おいお前、母上を呼び捨てすんじゃねぇよ。殺すぞ」
「一つ聞きたい。イザベラ……あいつ、何者だ?」
「話聞いてんのかお前……?」

 キルトがイライラしていた。
 やっぱりな。こいつ、未だにマザコンのままだ。
 杖を構え、身体強化を使うキルト。俺も少しだけ闘気を解放する。
 
『それでは、新入生最終試合───始め!!』

 審判による開始の合図とともに、俺は飛び出した。
 キルトの杖にも魔力が集まっていく。

「はっはっは!! 兄貴、ケリ付けようぜ!!」
「ああ、そうだ───

 ◇◇◇◇◇◇

 ◇◇◇◇◇◇

 ◇◇◇◇◇◇



 ───びきっ。



 ◇◇◇◇◇◇

 ◇◇◇◇◇◇

 ◇◇◇◇◇◇

「……え」

 俺のポケットに入っていた『リンドブルムの宝石』が、砕けた。
 俺は急停止し、ポケットの上から手で触れる。
 闘気を込めるとリンドブルムを呼べる宝石。
 それがいきなり、砕け散った。

「あん?」
「…………」

 なんだ、この予感は。
 胸が抉れるような、冷たい水で満たされるような。

「……っ」

 怖い。
 何かが、何かが失われてしまうような……そんな予感が、俺の胸をよぎる。

「へ、ビビりやがった。口だけ野郎が!!」
「……~~~っ!!」

 俺はその場から駆け出した。
 
『リュウキ選手、敵前逃亡!! まさかの敵前逃亡!! これにはガッカリだ、リュウキ選手!!』

 当然、キルトにビビったわけじゃない。
 俺は闘技場を出て、ひたすら走る。
 途中、闘気を全開にして跳躍し、民家の屋根を伝って走る。
 王国を抜け、とにかく走る。

 向かうのは───リンドブルムの小島。

 ◇◇◇◇◇◇

 遠目で見えたのは───おびただしい量の血。
 千切れた翼、腕、足……そして、エメラルドグリーンの髪。
 だが、綺麗なエメラルドグリーンの髪は、血で真っ赤に染まっていた。
 そして、赤い髪の男が、小さなリンドブルムの頭を踏みつけている。

「お、はははっ、向こうから気やがったぜ」
「───……あれが、お父様の力を? 人間じゃない」
「ぅ……リュウ、き、来ちゃ、ダメ」
「うるせーよ」

 男はリンドブルムの頭を蹴る。リンドブルムは地面をゴロゴロ転がり止まった。
 俺はリンドブルムの傍で立ち止まり、そっと身体を抱き上げる。

「リンドブルム……!!」
「ごめ、リュウキのこと……バレ、ちゃった」
「お前、一人で無茶して……」

 ボロボロだった。
 手足が無理やり引きちぎられたように消失し、全身火傷だった。
 弱々しい黄緑の闘気で、かろうじて止血している。

「おい、人間。クソ親父の力、よこせ」
「…………」

 誰だこいつは。
 強い。
 マルコシアスよりも、リンドブルムよりも、キルトよりも強い。
 後ろにいる女も強い。
 だが……それ以上に、俺の脳が沸騰しそうなくらい、熱かった。

「あー……やっぱなし。お前の肉抉りだして、親父の力奪えばいい。ったく、このクソガキ……弱っちいくせに抵抗しやがって。ま、その努力に免じて、お前の国は壊さないでやるよ」

 こいつは、ナニを言っている?
 初めてかも、しれない。
 こんなにも───目の前にいるコイツを、殺したい。

「……あ?」

 バキバキと、俺の身体が変わる。
 両腕が変わり、頭に角が生え、右目の色が変わり、髪の色も変わる。
 俺は上着を脱ぎ、リンドブルムの身体にそっとかけて立ち上がる。

「へぇ……マジで人間が闘気を纏ってやがる」
「黙れ、クズ野郎」
「あ?」
「お前は───この手でブチ殺してやる」

 こいつだけは、絶対に許さない……!!
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